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自動化システムは「普及期」に、WESの将来性も語る

2023年7月28日 (金)

ロジスティクス物流業界の転換期とも言える「2024年」が目前に迫り、人口減少の加速度も増すなか、物流の自動化を促進するロボットやITシステムはすでに「普及期」に突入している。その一方で、次々と投入される横文字のITシステムや自動化機器に対してハードルの高さを感じ、目を背けている物流事業者も多いのも事実だ。

そのギャップ解消を図るイベントとして、LOGISTICS TODAYは28日、編集部特別セミナー「物流ロボット導入現場の真実」を開催。「ロボット」、それらを一括制御する「WES」(倉庫運用管理システム)といったテーマに焦点を当て、WESなどシステムベンダーのYEデジタル、ロボットソリューションプロバイダーのラピュタロボティクス、Mujinの3社とともに、実際の自動化事例を紹介しつつ、今後自動化を検討する企業が持っておくべき考え方を提示すべく議論を交わした。

プロバイダー2社からはラピュタロボティクスプロダクトマネージャーの小堀貴之氏、Mujin営業本部副本部長FA営業部長兼コンサルティング営業部長の嶋田岳史氏が登壇し、プロバイダー目線から現在の自動化の進ちょく状況を分析、今後の自動化機器の需要を予測した。WESベンダーとして参加したYEデジタル組込・制御システム本部物流DX事業推進部部長の浅成直也氏は、ともに上位システムであるWESとWMS(倉庫管理システム)の現在地を説き、一部では不要論も囁かれているWESの有用性を示した。


▲ラピュタロボティクスの小堀氏(左)はオンラインで参加した

現在のロボットの導入状況、つまりは自動化の進ちょくについて、プロバイダー2社が主張したのは、すでにロボットなどの自動化ソリューションは「普及期」にあるということだった。Mujinの嶋田氏はこれに付け加え、「すでに自動化ソリューションを導入している企業は横展開などで着々と波及しているが、未導入の企業は一向に実行できない『二極化』が進行している」とも指摘した。ラピュタの小堀氏は、「属人化による生産性のバラつきを課題としている現場が多い」ことを持ち出し、業務標準化のツールとしてロボットのニーズが高まっている傾向を示した。

自動化を促すロボットやシステムの導入が増えれば、上位システムの存在価値は高まる。YEデジタル浅成氏は、既存のWMSが新しいロボットやITシステムの導入で度重なるカスタマイズによる肥大複雑化を強いられていることから、自動化設備の横展開を推進するツールとしてWESがあると説明。将来的には完全自動化を目指すのが前提としつつ、現在はその「過渡期」であるとし、「ロボットでは及ばない、人が手を入れなければいけない領域をWESが吸収していく必要がある」と話した。

WESが「今、必要なのか?」という問いには、「(WESの導入に)疑問を持つことは必要」とした上で、「頭ごなしに否定するのではなく、自社の生産性やボトルネックの部分を認識し、どこを改善すればいいのかを見定めていくことが重要」と指摘した。WESが必要となるタイミングはユーザーの状況次第であり、WESを導入する段階であるかどうかの見極めがユーザーに求められているということだ。

WESの導入についてプロバイダーの見解はどうか。小堀氏は「自動化をしてみて初めて、現状を分析、改善するというサイクルが生まれる。まずは自動化機器の導入を始めてみるというのが、第1段階としてはいいのではないか」と、ひとまず実行することの意義を主張した。嶋田氏は「OSにあたるソフトウエアの機能が向上すれば、それにぶら下がるシステムが変わらなくても倉庫全体の生産量を上げることができる。WESでも同じことが言えるのではないか」と、WESの機能向上が物流改善につながることへの期待を述べた。

最後に浅成氏が、「ベンダーもメーカーも目指すゴールは一緒だと感じる。自動化設備をいかに使い勝手良くするかというのが我々の使命であり、それにはメーカーと協力していくことが必要だ」と締めくくった。

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