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官民の物流改革キーパーソンが集結、変わる物流の姿示す

物流の未来へ、YEデジタルが今やるべきことを明示

2023年12月19日 (火)

話題物流の未来像と聞いてどのようなイメージを浮かべるだろうか。「無人倉庫」はその代表的なものの一つだろう。少子高齢化による人手不足や効率化に対応したいと考えれば、目指すべきゴールとして間違いではないが、ヒトの代わりに最新ロボットを導入するだけでは持続可能なサプライチェーンの拠点となる「未来の物流施設」に到達しない。

11月にYEデジタルが開いたオンラインイベント「物流の未来予想図」は、物流業界の現在地からDX(デジタルトランスフォーメーション)による未来への道すじを多様な視点で解き明かした。官民や多様な企業間の連携を深めることで、新しい改革の仕組みを共創する場となったほか、国土交通省や物流改革を先導する企業が集結し、今後の物流政策や先端技術の活用事例を持ち寄り「今やるべきこと」「これからの指針」を検証する機会ともなった。

▲登壇したYEデジタル組込・制御システム本部物流DX事業推進部部長の浅成直也氏

本稿ではこのウェビナーの内容を紹介するとともに、各講演の中でもDXの重要要素とされた、YEデジタルのソリューションについてリポートしたい。

効率化の小さなDXから、本来のDXへと、今こそ歩き出す時

基調講演で壇上に上がった物流ジャーナリストの菊田一郎氏は、物流改革のキーワードとなるDXだけではなく、EX(従業員体験改革)、GX(グリーントランスフォーメーション)が持続可能な物流業界においての重要な要素であり、生産性向上のための物流改革だけではなく、働く人々のためのホワイト物流、環境保全のためグリーン物流への取り組みの最終目標として、改めてSDGsを見据えた取り組みこそが大切だとする。

▲物流ジャーナリストの菊田一郎氏

自動化倉庫などの先進的なシステムを紹介しながら、それはあくまでもスタート。より大きなDXへ向けて、目的としてのDXではなく、それを手段として物流業界に「人間らしい・尊厳のある・やりがいのある仕事」をもたらし、EXを向上させるもの。また、DXによるCO2削減などを通して未来の地球への責任を果たすGXを進める覚悟、決意を固める取り組みこそ必要なのだとする。物流危機だけではなく、環境問題においても差し迫った課題があることを示しながら、できることからの改善、されど揺るぎない信念で改革をまっとうすることが本来のDXであると解説した。

来年に迫る、行政による物流革新への財政的・規制的措置の具体化

特別講演では、国土交通省物流・自動車局物流政策課から物流効率化調査官の笹口朋亮氏が登壇し、「物流革新に向けた政策パッケージ」に焦点を当てて解説。施策の具体化が迫り、新たに「緊急パッケージ」で具体化された事項など、政府の物流戦略を掘り下げた。

▲国土交通省物流・自動車局物流政策課の笹口朋亮氏

講演では物流革新に向けた政策パッケージ、緊急パッケージにおける、「荷主・物流事業者の商慣行の見直し」「物流の標準化やDX・GXによる効率化の推進」「荷主企業や消費者の行動変容を促す仕組みの導入」の3つの柱について改めて解説。今後、法制化も含めた規制的措置については次期通常国会への提出で具体化するとともに、物流効率化に向けた先進的な取り組みに対しての財政的な後押しもより明らかになる。物流革新へ向けた取り組みへの財政的措置と規制的措置の両軸により、24年問題への対応を進めていくという。

アビームコンサルティング、持続可能な物流構築で不可欠なこととは

▲アビームコンサルティングの桒迫勇次氏

アビームコンサルティング(東京都中央区)でサプライチェーンを専門領域とする桒迫勇次氏の特別講演では、「持続可能なサプライチェーン構築のための物流戦略」を解説。24年問題で起きるサプライチェーン(SC)の分断という事態への解決策として「SCネットワークの再構築」「物流センター運営最適化」の2軸でアプローチする必要性を説く。

SCネットワークにおいては物流部門だけではなく調達、生産、販売など各領域のデータを相互活用した、デジタルツインの最適化エンジンを用いたシナリオ検証の有効性を提言する。また、物流センター最適化ではデジタル化・省人化・自動化は必須としながら、環境変化に柔軟に対応できるモノ・リソース・プロセスを統合する管理システム基盤として拡張性のあるWES(倉庫運用管理システム)の導入が重要であることを説明する。

カインズ、攻めの自動化倉庫で実現する次世代物流

▲カインズの石那田篤氏

また、カインズのロジスティクス事業部物流インフラ開発部の石那田篤氏は、同社の桑名流通センターでの、積極的な自動化機器の導入事例を紹介。5社10工程におよぶ多様なメーカー・用途のマテハンを効率的に、安定的に、拡張性を持って運用するために、WESを基盤としたシステムが必須であったことが語られた。ESG、従業員の就労環境を重視した庫内効率化を、今後も進めていくのにあたって、さらに新しいマテハンの導入が検討されるかも知れないが、WESでのマテハン一元管理で運用することで、柔軟で効率的な設備増加も実現するという。

YEデジタルが見据える未来の物流倉庫、MMLogiStation WESの活用

さて、このカインズの最新物流センターでのWES採用事例として挙げられ、アビームコンサルティングの講演の中での「拡張性のあるWES」として想起されるのが、YEデジタルのWES、MMLogiStation(MMロジステーション)である。

YEデジタルが想定する物流の未来像は、庫内作業の計画立案、作業指示の制御まで自律化した全自動倉庫である。その実現には、多様な自動化機器との接続、加えて新しいサービスへの連携力が必要だ。メーカーに縛られないマテハン機器の導入や、自動運転やドローン、新しい輸送モードなど来るべき変化にも柔軟に対応できる外部連携機能を持ち、さらに、複数の機器と人間の協働作業を統合制御する機能と、そのデータ活用性能も問われる。

▲倉庫内の全オペレーションを制御・管理。自動化設備の導入や作業手順の変更などにも即座に対応できる(クリックで拡大)

では、物流現場が今、未来の自動倉庫構築に向けてやるべきことは何か。同社は既存の硬直化したシステム構造、レガシーシステムの見直しと、データドリブンな倉庫運用の実現こそが、その最初の取り組みだとする。

新しいシステムの導入を避け、既存のWMS(倉庫管理システム)のカスタマイズで変化に対応するのは、レガシーシステムの典型だと言える。新規マテハン導入ごとに、あるいは新規拠点ごとの業務要件に対応するのでは、その都度カスタマイズが必要となり、導入コストもWMSシステム自体も肥大化、属人化して自律的な機能を発揮することはできず、自動化への足かせとなってしまう。

WESの導入こそが、レガシーシステムからの脱却となり、データ基盤の倉庫運用、自由度の高い機能拡張に導く。マテハンとの連携部分はWESに任せ、WMSはWESとの連携部分のみカスタマイズすれば良い。複数拠点ごとの制御・管理部分をWESに、WMSは全社横断的な機能の管理だけに切り分ければ、拠点ごとの業務案件ごとにWMSを改修する必要もない。WESを活用することで、既存WMSを肥大化させることなく、自動化設備の導入や複数拠点展開を効率的に進めることが可能となる。

MMロジステーションは、主要なマテハン機器をメーカーに関わらず連携できるプラグイン機能を備え、効果的なツールを自由に選択することができるので、WES連携での制約に縛られることなく、必要とする機器を自由に導入できる。自動設備連携と作業管理を強化し、倉庫自動化の促進に特化したWESだと言えよう。

▲マテハン機器をメーカーに関わらず選択可能。プラグインで接続できるため、WESやWCS(倉庫制御システム)のカスタマイズは不要(クリックで拡大)

YEデジタルとアビームコンサルティング共同開発「意思決定支援ダッシュボード」

さらに、YEデジタルが2024年春にリリースするのが、アビームコンサルティングのデータ活用ノウハウを分析ロジックとして注入した、データ基盤で庫内運用の改善判断を後押しする意思決定支援ダッシュボード「Analyst-DWC」(アナリストDWC)である。WMSなど既存の庫内管理システムと連携して、リアルタイムでの情報反映とデータ収集を行い、稼働状況の可視化による現状把握、作業の見直し、シミュレーションをダッシュボード上に反映し、倉庫管理者がとるべき対応策をデータに基づいたスピーディーな意思決定として支援する。

▲意思決定支援ダッシュボード「Analyst-DWC」の機能イメージ(クリックで拡大)

もちろん、MMロジステーションとの連携では、設備の稼働データも含めた領域での分析、改善へと機能を最大化させることも可能だ。属人化した人員シフトや作業フローの設定に要する工数を削減し、管理制度の向上で業務時間削減にも貢献、複雑なDX推進の道のりにおける指針としての活用が期待される。

さらに重要な一年へ。未来へ向けたWESの啓蒙は続く

▲WESとは何か、物流業界での認知拡大の必要性を語る浅成氏

この一年ほどで、WESという概念自体もようやく物流業界に浸透し始めた手応えを感じながらも、まだまだWESとは何か、WES導入の意義とは何かについてのアピールを強化していく必要性があると、今回のウェビナーで講演を務めた組込・制御システム本部物流DX事業推進部部長の浅成直也氏は語る。カインズなどの具体的運用事例が増えることで、WESの持つポテンシャルが実証され、「あるべき物流未来像」作りに向けてどんな役割を果たすのか改めて検討される機運も高まっている。

YEデジタルは、24年1月24日から26日まで、東京ビッグサイトで開催される展示会「第3回 スマート物流EXPO」への出展が決まっている。まだWESの全体像や、新しいソリューション、アナリストDWCの詳細が掴めないという方にとって、より具体的な運用イメージを共有できる機会である。「物流の未来」を真剣に考えているならば、ぜひ足を運んでもらいたい。

YEデジタルの物流システム
第3回 スマート物流EXPO

日程:2024年1月24日(水)〜26日(金)
ブース番号:W73-42
テーマ:「未来の物流を実現するトータルソリューション」
https://www.smart-logistic.jp/tokyo/ja-jp.html