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大型車の高速法定速度90キロに、安全に「影響なし」

2023年12月22日 (金)

行政・団体警察庁は22日、ことし6月に政府が打ち出した物流革新に向けた政策パッケージの施策として高速道路のトラック速度規制の引き上げが盛り込まれたことを受け、速度規制の引き上げを検討する有識者検討会での提言を取りまとめた。それによると、高速道路における大型トラックの法定速度を時速80キロから90キロに引き上げたとしても「交通の安全に大きな影響をもたらすとは考えられない」とし、最高速度の引き上げを容認する姿勢を示した。

大型トラックの法定速度の引き上げに対し、安全性に問題ないとの見識を示した一方で、これより高速度への引き上げは、現行の速度抑制装置などの性能上担保されておらず、現時点では不適切であるとした。また、トレーラーは車両構造上の特性、交通事故発生件数などを考慮し、現時点では最高速度引き上げの結論には至らなかった。

具体的な調査では、現行の速度抑制装置が時速90キロを上限としているほか、衝突被害軽減ブレーキなどの安全装置の性能が向上し、普及が進んでいることに加え、欧州での速度抑制装置の上限設定速度も90キロ以上であることなど、機能面の安全性が引き上げの判断を後押しする要素となった。交通事故件数は、ここ20年間で大型トラックが50%以上、トレーラーが30%減となっており、現状での実勢速度は大型トラックが87キロ、トレーラーが84キロと、すでに法定速度を上回っている結果も出た。

トラックメーカーにヒアリング調査では、90キロまでは車両の安全性能を保証できる一方で、それより高速度に対応した車両は既存車の改良では不可能であり、新たに開発する必要があるとし、トレーラーに関しては80キロ以上の速度で走行した場合の、被けん引部の安全性は確認されていないという。

運送事業者への聞き取り調査では、「目的地までの到着時間の短縮による輸送品質の向上、労働生産性の向上などのメリットがある」とする者もいれば、「最高速度の引き上げよりも、荷待ち時間の短縮など、物流負荷の軽減が図られることが必要」と回答した者もいた。

高速道路の速度制限緩和は、ドライバーの働きやすさにつながるか注視を

政策パッケージで問題提起され、議論が続けられてきた高速道路における大型トラックの速度制限緩和。生産性向上のメリットと安全性のリスクとの兼ね合いも課題となっていたが、当初案とされていた100キロではなく90キロ、トレーラーは見送りでトラックのみが対象と、現実的な落とし所を見据えた「一歩前進」を目指すところから、ドライバー乗務の変化を促し、社会的な理解も得ていく方針か。現場の実勢速度から考えると大きな改革とはなり得ないが、まずはドライバーの地位向上の観点からの改革であることを再確認し、新制限速度での実績を積み上げていくことから、ドライバーにかかる負荷がどう変化するのかを検証していくことが重要だ。

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LOGISTICS TODAY編集部
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