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〜日本パレットレンタル・二村篤志社長インタビュー〜

JPRが舵をとる、物流の標準化・共同化の現在地

2024年4月25日 (木)

話題日本パレットレンタル(JPR)は、レンタルパレット活用による物流の標準化・共同化をコンセプトに掲げ、「一貫パレチゼーション」の普及によって日本の物流課題の解決を目指してきた。その取り組みは「2024年問題」が顕在化するはるか前、1971年の創業時にまでさかのぼる。政府が指し示した物流革新における課題解決では、政府からもパレットの物流活用が呼びかけられ、同社の取り組みに改めてスポットライトが当てられており、標準化・共同化の意義や、その難しさについても、改めて議論される契機ともなっている。

23年9月、同社の社長に就任した二村篤志氏は、まさにこの物流の大変革期に、その命運を左右する「舵取り」を担うこととなった。

▲日本パレットレンタル代表取締役社長の二村篤志氏

「物流の現場で働く人々を重労働から解放したい、それが私たちの目指すところ」と、二村氏は語る。自身、学生時代に物流現場のアルバイトとして、トレーラーからの手積み、手下ろしを体験して体を痛めた経験も、そんな理念につながっているのだろう。これからは必ずパレットの時代がやってくる、そんな確信を抱いたことがきっかけとなり、93年の入社以来同社一筋で、パレット標準化に取り組んできた。

二村氏は営業の立場からレンタルパレットの普及に取り組み、入社当初は「そもそもレンタルパレットとは何か」の説明から始まる飛び込み営業も経験した。それまであまり浸透しなかったパレット利用への理解が、急速に進むきっかけとなったのは、93年の冷夏による米不足とそれに伴うタイ米の輸入拡大で、大量のパレットが必要とされたことにあったという。

日本の非常事態における対応としてパレット活用が見直されることとなった状況は、「24年問題」で改めてパレットに注目が集まる現状とも重なる。会社設立以来、一貫してパレット活用による物流の生産性向上を訴えてきた同社だが、「これまでは地味な」(二村氏)取り組みに過ぎなかったパレチゼーションが脚光を浴びるきっかけには、いつもこうした物流のピンチにおける対応があり、それこそまさにパレット活用の有用性の証明でもある。

二村氏は、サプライチェーン(SC)各領域におけるパレットの利用企業を担当するなかで、特にパレットを受け取る側でのパレット管理の難しさ、「パレットを循環させる、回収する難しさ」(二村氏)という課題を体感してきた。ただ標準型パレットを提供するだけではなく、パレットを共同で回収できる仕組み、管理できる仕組みを構築しながら、物流インフラを担う会社としての立ち位置を確立してきたことに意義があると言えるだろう。「日本では製造商品の仕様に合わせた個別最適化したパレットが普及したことで、物流の過程で、棚に入らない、トラックに積み込めない、積み替えが必要といった状況」(二村氏)が先行して、標準化の妨げとなった。

▲LOGISTICS TODAY本誌編集長の赤澤裕介

「お隣の韓国やヨーロッパでは、それぞれの規格ながら標準パレットが普及しており、パレットサイズから商品規格を決めるに日本とは逆の発想」(二村氏)なのに対して、日本にはまだT11型以外の多種多様のパレットがあり、個別最適化された既製パレットが数多くあることで、サプライチェーン(SC)全域での全体最適に進まない環境にあった。商品に合わせたパレットではなく、標準パレットに合わせた物流に転換することでいかに物流を効率化させ、事業メリットにつながるかを丁寧に説得することから、同社の一貫パレチゼーションの営業活動は始まる。

70年にJIS規格で標準パレットの規格がT11型に定められ、その普及を目指してJPRが創立されたのが高度経済成長期の71年。以来50年以上にわたり、いまだに「標準化」が話題になること自体が、一貫パレチゼーションの難しさを物語る。二村氏自身が「30年経っても、やってることはあまり変わっていません」と語るが、22年には4710万枚以上のパレットが共同回収店向けの輸送に利用され、その回収率は99.4%に達するなど、着実にその仕組み作りは結果を残している。共同回収システムサービスやパレット管理を効率化するデジタルサービスの提供などで、安全・安心・安価なパレット輸送の体制を今後も整え、その意義を広めていくことが、物流効率化に向けた創業当時からの「変わらない」会社の姿勢なのだ。

標準化に合わせた設備投資、荷姿の変更など、一貫パレチゼーションでの課題は多いが、物流革新において荷主企業の果たすべき役割が認識され、SCの川上からの変革も積極的に進められる土壌も整いつつある。そこにはJPRが繰り返し標準化に向けて「提言」してきたことが果たした役割も、きわめて大きいのである。

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LOGISTICS TODAY編集部
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