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〜日本の物流サービスを世界へ、「物流先進国」目指して今やるべきこと〜

JPRが見据える、標準化・共通化の先に広がる未来

2024年5月8日 (水)

産業・一般前章に続き、レンタルパレット活用による物流の標準化・共同化をコンセプトに掲げる日本パレットレンタル(JPR)の取り組みを、社長である二村篤志氏に聞く。

24年問題という言葉が登場するはるか前から物流の効率化を訴え、業界の革新に向けて一貫パレチゼーションの活用を提言してきたJPRの社史は、そのまま日本でのパレット標準化の歴史と重なる。パレットの標準規格としてT11型が定められてから50年以上が経つが、海外のようには標準パレットを軸にした経済の構築が成り立っていない現状も明らかになった。

▲日本パレットレンタル代表取締役社長の二村篤志氏

二村氏は、国内には5億枚のパレットが存在すると言われているが、まだT11型はその30%程度ではないかとして、まずはその普及率を高めていくことが重要と語る。二村氏は、30年度には加工食品、日用品、農業分野などのトータルで、T11型標準パレットの利用を現状の2倍、60%にまで上昇させることが必要とし、レンタルパレットのさらなる普及を目論む。

そのために「やるべきことはたくさんありすぎる」と二村氏は語る。JPRとしては、一貫パレチゼーションの意義を広めるための取り組みを「今後も愚直に継続」するとし、利用者や消費者など物流に関わる人々の広い理解を得るために、発言、発信力を高めることにも力を注ぐ。管理責任やパレット費用など、パレットの共同利用におけるコストも、誰がどれだけ負担すべきかの議論は続くが、24年問題を契機として、標準化の意義を共有、理解が進むことで、そうした長年の課題についても解決する環境となることにも期待をよせる。

また、「共同回収もまだ道半ば」(二村氏)として、回収場所も現在の2800か所から拡充する必要性や、納品伝票の電子化にパレット伝票の電子化、さらにはASN(事前出荷情報)との連携によって「ノー検品」へと効率化、ペーパーレス化も推進する。一貫パレチゼーションでは、荷役に要する時間を4分の1にすることも可能となり、トラックドライバーの働き方改革の強力な後押しとなるはず。パレットに荷物だけではなく情報も載せて運ぶことで、SC効率化に大きく貢献できる。

二村氏へのインタビューは、パレット標準化拡大を目指す分野の1つ「農産物」領域での話題にも話は及んだ。農産物流通は、そのほとんどをトラックによる輸送に頼みながら、手積み、手下ろしの多さ、季節波動の大きさや、商品単価の安さなど数々の要因から、物流危機の影響が先行して顕在化している領域である。JPRも農産物のパレット物流については「いっときは、パレットの回収が難しく撤退も考えた」と、物流と商流が複雑に絡み合った市場の特異性に悩まされたというエピソードを語る。

それが、ここ数年で主要産地や市場が連携し、率先して改革を進めてパレット活用による効率化に取り組んだ結果、パレット回収率も加工食品や日用品業界と変わらない数字にまで改善され、パレチゼーションの効果が顕著に現れ始めていると言う。物流効率化が進まなかった領域だけに、そこでのパレチゼーションを進めることは、日本の物流全般に与えるインパクトも大きい。同社が農産物物流の効率化を積極的に後押しすることが、24年問題で想定される課題解決にもつながり、さらには全国の主要都市に多数存在する公設市場を物流ハブとした、新しいSC構築へとつながる可能性さえあるのではと未来像は広がる。

きめ細かく、丁寧さ、緻密さを追求するサービス品質の高さは、日本の物流の誇るべき部分。物流危機という負の側面ばかりが注目される日本の物流だが、二村氏はむしろこうした日本の物流の良さを生かして「物流先進国」(二村氏)としてのポテンシャルを海外に売り込むべきでは、とも語る。「海外では性別、年齢を問わず、多様な人々が同じ仕事ができることの必要性から、機械化、平準化が進んだ」(二村氏)とも言える。日本特有の物流も、進められている標準化や共同化を付加価値として生産性を上げることで、同じ少子高齢化の悩みを抱えるアジアの国々などへも、日本の物流システムを輸出できるチャンスは十分あるとする。

▲持参したT11型パレットの模型

24年問題を「パレットを、物流を、より知ってもらうチャンス。また、パレットを活用して効率化したいという担当者が声を上げやすい状況になった」と考える二村氏は、日本においてロジスティクスの思想が定着する環境を後押ししていく。「パレット自体は1枚のプラスチックですが、そこにさまざまな情報を載せることで、大きな負荷価値も生まれます。パレットを中心に、デジタルと組み合わせた活用で、日本の物流が世界を席巻することもできるはず」と、物流先進国としての日本の未来像を描く。その時、日本の物流サービスの中心には、同社の取り組み、牽引力が、なくてはならないはずなのだ。

二村氏は「パレットの普及は、皆さんの理解、そして1社ではできない取り組みである」と訴え、日本の「物流先進国」としての未来を見据えた協力を呼びかける。新たな局面に入ったパレットの標準化・共同化で、その舵を握るのはやはりJPRであり、今後もその動向と提言に注目していかなければなるまい。

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