調査・データスポーツ選手のコンディション管理ソリューションを提供するユーフォリア(東京都千代田区)は、運送事業において「シフトワークのドライバーの65%が勤務中に強い眠気を感じている」とのデータを公表した。シフトワークとは、夜勤を伴う交代勤務のこと。同社はこうした実態をもとに自社のアスリート向けの体調管理システム「ONE TAP SPORTS(ワン・タップ・スポーツ)」を、新たに運送事業者向けにカスタマイズし、実証実験を開始している。今回はシステム開発の狙いや運送業にフォーカスした理由などについて、同社担当者に話を聞いた。
ドライバーの体調不良は自身だけでなく第三者を巻き込む危険を孕んでいる
事業者向けの「ONE TAP SPORTS for Biz」はすでに製造業、建設業では多くの企業で導入が進んでいる。こうした現場での作業は体にかかる負担が大きく、製造業では腰痛、建設業では熱中症にかかる人が多いなど、身体的なストレスが大きい。同社は同じく体に負担をかけることが多いアスリート向けの事業で培ったノウハウを、こういった現場作業員の体調管理に生かしている。
同社担当者は、運送業に目を向けたのは「運送業では高齢化が進み、転倒や腰痛など、身体機能に起因する労災が増加しているため」だという。また長距離ドライバーの多くがシフトワークという点にも着目した。同社によると、シフトワーカーは睡眠の質が低いことが多く、体調を崩しやすい傾向にあるのだという。さらに「ドライバーの場合、体調の悪化が事故につながり、自身だけでなく第三者に被害が及ぶ危険も高い」とし、体調管理の必要性を切実に感じたという。
ユーフォリアは日勤・シフトワーカー、およびドライバーの睡眠の質を把握するため、運送事業者向けのWEB調査を実施、99人から回答を得た。その結果、シフトワーカーの方が日勤ワーカーよりも日中に眠気を感じることが多いことが分かった。さらに結果をシフトワーカーのドライバーに絞った場合、実に65%が勤務中に強い眠気を感じていることが明らかになった。
ドライバーの適性や体調に合ったシフト管理が可能に
データを元にこうした状況を把握した同社は、運送会社に対して、ドライバーに、点呼時に疲労感や主観的な睡眠の質などをツールに入力してもらうことを提案。そうすることで運送事業者がその日のドライバーの体調を客観的に把握できるようになる。また日々入力を続け、データが蓄積していけば、ちょっとした変化にも気がつきやすくなる。体調悪化が懸念されるドライバーがいる場合、運送事業者にアラートが届くようカスタマイズを行った。
こうしたツールの常として、事業者がデータを活用できず、根本的な解決につながらない場合がある。そのため同社は事業者に全てを任せてしまうのではな、ドライバー自身にも体調管理を行ってもらえるよう、システムの機能を改善する予定だ。
将来的には、ツールを用いてドライバーが朝型か夜型かを把握。さらに直近で睡眠の質が低いと思われるドライバーをピックアップすることで、個々の適性や体調に合わせてシフトを組むことを提案したいと話す。
シフトワーカーは体内時計が狂いやすく、それが体調の乱れに直結することが多い。そのため同社は、擬似太陽光を浴びることができるメガネ型デバイスの提供も検討。既に、他業界のシフトワーカー向けに試験運用をはじめている。始業前に着用してもらうことで、ドライバーの体内時計調整に役立てられるかどうか検証中だ。一般的には光を浴びると体内時計がリセットされ、活動に向けて体の状態が整う。そのため、この施策は夜勤のドライバーはもちろん、日勤ドライバーにも効果が期待される。
運送業界は慢性的に人手不足の状態にあり、労働者人口の減少に伴い、その傾向はますます顕著になっている。近年は過酷なまでの猛暑の夏が訪れることもあり、ワーカーの体調管理ツールは多く登場しているが、事業者がドライバーの体調管理を徹底する取り組みはまだまだ足りないといえる。
ドライバーの体調管理は既存の労働力を守るだけでなく、対外的な安心材料として新規の雇用にもつながる可能性を秘めている。今後とも、ドライバーに注がれるユーフォリアの眼差しに注目したい。
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