話題ソフトバンクロボティクス(東京都港区)が物流課題解決のテーマに掲げるのは、個別工程の部分最適ではなく庫内全体のプロセスを最適化することだ。
「そのために、国内外の優れたソリューションを日本の物流現場に適切に組み込むことを提案していく。各物流の工程の効率化の為のプロダクトを集めるだけでなく前後工程を含めた運用およびつなぎ方まで含めた提案で、人手不足をはじめとした物流現場の危機を中長期的に解決したい」。そう語るのは、ロジスティクス事業本部事業企画課課長の矢野覚士氏である。
日本の物流現場のために厳選した先進技術、Berkshire GreyとBalyo
同社は、世界中から厳選した自動化ソリューション、ロボットとの連携を拡大することで、物流センター全体の最適化を後押しする。数ある連携ソリューションの中でも、今回、ロボットアームピッキング技術における先進企業、Berkshire Grey(米、バークシャーグレイ)とAGF(無人搬送フォークリフト)で世界の物流現場の自動化に貢献しているBalyo(仏、バリオ)といった先進的な企業2社を紹介してくれた。
バークシャーグレイの副社長CEO、クリス・ガイヤー氏は、同社のロボット・ピッキングシステムの特長として、「高い生産性と正確性はもちろん、様々な形状や材質をした、幅広い品目の商材を丁寧に取り扱えることが強み」と語る。高度なAIにより、多様なSKUを正確に認識、処理する機能を実現し、世界有数のグローバルブランドからも高い信頼を得て導入いただいている。「日本の消費者は他の国に比べ、品質に対しての期待値が高い。そのため、へこみや傷、破損を防ぐ丁寧な荷扱いは、日本のお客さまに満足していただける価値を提供できると考えている」(クリス氏)。こうした機能は、日本市場のニーズにマッチするよう、ソフトバンクロボティクスとバークシャーグレイが協働でさまざまな検証を積み重ね、その精度を高めてきた。
一方、バリオが開発するAGFは、LiDAR(ライダー・レーザー光を用いたセンサー技術)とSLAM(スラム・環境地図作成と自己位置推定技術)といった、2つのナビゲーションシステムを併用することで、「施設内にガイドマークの設置などを必要とせず、マップ情報とLiDARセンサーを組み合わせたリアルタイム・ナビゲーションで、精度の高い自律走行によるオペレーションを、導入時からシンプルかつスピーディーに実現することができる」とバリオの営業部長、マーク・スティーブンソン氏は語る。また、17メートル高のラックにも対応し、狭い通路を安全に走行する性能は、既存のフォークリフトからの置き換えだけではなく、据付型の自動倉庫からの転換タイミングにおいても、新しい運用の選択肢となり得るスペックだと言えるだろう。また、倉庫内の搬送のみならず、トラックへの自動荷積み・荷下ろしの機能も25年度後半には実装することを計画しており、活動領域をトラックバースにまで広げた自動化を目指す。
日本の物流市場の特性について、クリス氏は商品の丁寧な取り扱いなど、物流品質への強いこだわりに加え、「日本には他の国では見かけない商品がたくさんあるので、他の海外市場同様、その国や地域のニーズに応える適応性が重要」と、「納豆」の荷扱いに挑戦したことを例に挙げて同社のソリューションのSKUカバー率の高さと市場のニーズを重視した開発姿勢を紹介。また、マーク氏も「さまざまなパレットの規格に対応することが課題であった」と言及。両社とも、日本という市場を理解し、アジャストしていくことで、その高度な機能が日本の物流課題解決に役立つことを目指している。
両社は、ソフトバンクロボティクスとの連携に大きな期待を寄せる。「共に技術を洗練させ、日本市場を任せられる存在」とクリス氏、「ロボットだけではなく多様なソリューションの連携など学ぶところが多い」とマーク氏は語る。ソフトバンクロボティクスは、「世界の技術で物流を最適に」というテーマのもと、世界中のパートナーと共に日本の物流現場の変革を目指す。
AutoStoreを中心に、現場最適化へ適材適所の自動化とロボット提案
ソフトバンクロボティクスは、人型ロボット「Pepper」や、ファミリーレストランなどで活躍する配膳・運搬ロボットなど、ロボットと共存する社会を身近な存在にした。同社は、業務用屋内サービスロボットの売上世界No.1(※)を誇り、現在、世界10カ国に21の拠点を構え、グローバルにビジネスを展開している。※業務用屋内サービスロボット売上世界第1位に認定。2022年4月現在。(Grand View Research社調べ)
「物流システムにおいても、物流市場にとって身近な存在となり得るポテンシャルを持つソリューションを厳選して連携していく」(矢野氏)。同社の持つ世界中の企業とのネットワークで、世界から有用な先端技術を選びぬき、物流現場の各工程それぞれに、最新技術、適材適所の運用アイデアでend to endでのスムーズな自動化オペレーションの構築、物流の最適化を提案する。ただ、商品を売り込むだけではなく、豊富なパートナーとの連携から生まれる「物流提案」および、その全体を見た最適解提案こそが、ソフトバンクロボティクスの強みである。
同社が、こうした各ソリューションの機能を検証し、新たな連携を実証するために千葉県市川市に開設した「SoftBank Robotics Logistics Innovation Lab(ソフトバンクロボティクス・ロジスティクス・イノベーション・ラボ)」は、自動化ソリューションを検証するR&D施設、ショールームとなっており、そのなかでもひときわ目を引くのが、「AutoStore(オートストア)」だ。格子状に組み上げた高密度の立体保管グリッドと、その上部を高速移動するロボットで知られるオートストアは、ノルウェー発の保管効率を最大化する自動倉庫システムの先駆者とも言え、世界54カ国で1,450を超えるシステムが稼働している。
▲SoftBank Robotics Logistics Innovation Labの様子(クリックして拡大)
同社は日本初のグローバル代理店として、国内のみならず世界をターゲットに普及を進める。「高密度の保管効率とスループット能力は、類似の自動倉庫と比較しても間違いなく世界最高レベルであり、自動倉庫と言えばまずオートストアを思い浮かべてもらえるのも、それほど実績と信頼性が定着したソリューションであることの証明」(矢野氏)。
さらに同社のラボは、日本初のオートストアの最新モジュールも導入・検証できる場となっている。「最新の作業ポート、FusionPort(フュージョンポート)が導入されているのも、現在日本ではここにしかない。オペレーターの作業ステーションとなるフュージョンポートでは人間工学に基づいた形状の開口部を2つ設け、作業者にとっての快適な作業環境とともに、作業性能も向上させている」(矢野氏)など、常に新たな機能開発が続いていることが確認できる。
多彩なソリューションの中でも、入荷・検品から棚入れ・保管、ピッキングという比較的負荷の高い作業領域を担うオートストアを、物流最適化における核心となるシステムに位置付け、「圧倒的な保管性能で空間を最大限有効利用できる機能は、さまざまな規模の物流現場、特に中規模企業や成長企業でこそ能力を発揮する」(矢野氏)として、大規模企業のみの選択肢ではないことを訴える。そのために、中小企業向けの自動化設備補助金の申請支援など専門家による無償サポートや、リースやサブスクによる導入提案も準備し、未来へ向けた事業の成長をバックアップする。
成長を考える企業には、必ずそれぞれにふさわしい提案、最適なシステムがある。多様なソリューションと提案を取りそろえたソフトバンクロボティクスのラボを訪ねれば、きっとそのヒントを手に入れることができるはずだ。
ソフトバンクロボティクスは、「国際物流総合展2024」(2024年9月10~13日、東京ビッグサイト)に出展する。 「国際物流総合展では、密度自動倉庫システム『AutoStore』をはじめ、物流倉庫・物流センターの自動化・全体最適化を実現するさまざまなソリューションを紹介するほか、ブースでのセミナーや、11日にはプレゼンテーションセミナーに登壇します。ぜひお気軽にブースにお立ち寄りください」(矢野氏)
詳しくはこちら