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「物流の将来」議論熱く、D.N.A.主催イベントに250人

2024年10月7日 (月)

▲D.N.A.の江川哲生理事長

ロジスティクス10年前にトラックドライバーの地位向上と物流業界の発展を目指して設立された一般社団法人ドライバーニューディールアソシエーション(D.N.A.、江川哲生理事長)は7日、運送物流業界の未来を見据えたイベント「Tカンファレンス」を都内で開催、「5年後、10年後の物流の未来」などについて熱い議論が展開された。経営者やスタートアップ、現場のドライバー、学識者らが登壇し、多様な視点から物流の将来像を共有した。

江川理事長はTカンファレンスの開催意図について「D.N.A.の理念は国民生活を変えるライフラインとしての基礎を確立すること、トラックドライバーが夢と誇りを持って仕事ができる未来を実現すること。運送・物流に関わるすべてのステークホルダーが集まり、5年後、10年後の物流の未来について語り合うことを目的としている」と説明。プログラムは運送会社の経営者によるエグゼクティブセッション、若手スタートアップによるパネルディスカッション、サプライヤーによるプレゼンテーション、現場のドライバーによるプレーヤーセッション、大学生によるアイデアソンセッション、教授によるアカデミックセッションなどで構成した。経営者によるパネルディスカッションと、ネットワーキングの時間も設けた。

カンファレンスは、物流業界の抱えるさまざまな課題に対する解決策を模索し、若手スタートアップや現場のドライバーの意見をイベントのカラーとして強く反映。若手スタートアップによるパネルディスカッションでは、デジタル化の遅れや業務効率化の課題について革新的なソリューションが提案された。クラウド技術を活用した物流業務管理システムやAI(人工知能)による需要予測、運行最適化といった具体的な提案が相次ぎ、これにより物流企業がどのように変革を進めるべきかの道筋が示された。参加者からは「デジタルツールの導入は避けて通れない。私たちの会社でも、効率化のためにはクラウドシステムを検討中だ」とのコメントがあった。


▲大学生による研究発表の様子

一方、現場のドライバーたちはプレーヤーセッションで、日常の業務で直面する具体的な問題点について率直に語った。長時間労働や労働環境の改善、技術導入に対する現場の現実的なハードルが話題となり、ドライバーの目線から見た課題が浮き彫りになった。あるドライバーは「テクノロジーは便利かもしれないが、現場での導入には教育やサポートが欠かせない。特にベテランドライバーには新しいツールに慣れるのが難しい」と語った。ドライバーからの意見は、技術的な変革とともに、現場の労働環境や待遇改善が不可欠であることを再認識させた。

運送会社の経営者によるパネルディスカッションでは、経営者たちが物流業界が直面する現実的な課題、特に「2024年問題」として知られる労働時間規制強化にどう対応していくかについて議論した。長時間労働の規制が強化されるなかで、業界としての持続可能性を確保するためには、どのように働き方を変革し、効率的に運営を行うかが重要なテーマとなった。ある経営者は「一律の規制だけでは、業界全体が縮小してしまう可能性がある。我々は柔軟な対応策を模索し、現場の声を反映した改革を進めていく必要がある」と強調した。

また一律の規制ではなく、各社の実情に応じた柔軟な対応が必要であると強調し、人手不足の問題にも触れた。外国人労働者の受け入れ拡大や、女性ドライバーの活用などが提案され、「外国人労働者の受け入れは、現場での多様性を促進し、新しい視点をもたらす可能性がある」との意見も聞かれた。また、労働条件の改善や給与の見直しが若者の物流業界への参入を促す鍵になると指摘された。

さらに、経営者によるエグゼクティブセッションでは、業界全体での協力と革新が強調された。物流業界は競争が激しい市場でありながら、各社が協力し合うことで全体の効率化を図ることが可能であるとの認識が共有された。共同配送システムの導入や、物流拠点の共同利用、さらにはデータ共有による運行の最適化といった取り組みが提案され、業界全体の連携強化が不可欠であるとの結論に至った。ある参加者は「単独での効率化には限界がある。業界全体で手を取り合うことで、より大きな成果を得ることができる」と述べた。

サプライヤーによるプレゼンテーションも、物流業界の効率化と持続可能性の実現に向けた重要な提案を行った。自動運転技術の導入や、電動トラックの普及、物流センターでの自動化システムの実装など、最新技術を活用したソリューションが提示された。これにより、物流業務全体の効率化が進み、人手不足の解消やコスト削減に寄与することが期待される。あるサプライヤーは「自動運転技術はまだ試行段階だが、将来的にはドライバー不足の解消に大きく寄与する可能性がある」と述べた。

▲トラボックスの皆川拓也社長(左)

カンファレンスの最後には、ネットワーキングの時間が設けられ、参加者同士が直接意見交換を行う貴重な機会となった。このネットワーキングでは、経営者同士の協力や新たなビジネスチャンスの模索が行われ、物流業界全体の更なる成長に向けたつながりが生まれた。特に、技術提供者と物流企業との間で新たな提携が生まれる可能性が示され、今後の業界発展に向けた重要な一歩が踏み出された。ある参加者は「こうした機会がなければ、普段は交流できない人たちと話すことができた。非常に有意義だった」とコメントした。

D.N.A.は、今後もトラックドライバーの地位向上と物流業界の発展に向けた活動を継続していくと明言している。物流業界が抱える課題に対して具体的な解決策を提示し、ドライバーや経営者、学識者、技術提供者といった多様なステークホルダーとの連携を深めることで、業界全体の健全な発展を目指している。今回のGカンファレンスは、その目標に向けた重要な一歩であり、多くの参加者が次なる挑戦への意欲を示した。

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LOGISTICS TODAY編集部
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