ロジスティクス7日に行われた公正取引委員会の企業取引研究会で、物流の根本的な取引である荷主から元請け事業者への業務委託について、大きくメスを入れる方針が示された。この見直しは、多重下請け構造の是正に一定の効果を発揮すると見られる一方で、荷主にとっては、荷待ちの解消やトラックドライバーの長時間労働の是正に関してより直接的な責任を負うことになる。これにより、これまでの物流の仕組みが大きく転換される可能性があり、業界内では注目が集まっている。(編集長・赤澤裕介)
現在、物流業界では多重下請け構造による問題が深刻化している。荷主から発注される運送業務において、下請け事業者が長時間にわたる荷待ちや契約外の荷役作業を無償で強要されるケースが後を絶たない。これにより、実際に荷物を運ぶ実運送事業者にわたる運賃が低価格に抑えられ、ドライバーの労働環境も悪化の一途をたどっている。このような状況が、2024年に施行された働き方改革関連法による労働時間の制約と相まって、深刻な労働力不足を引き起こすことが懸念されている。
これまでの規制枠組みでは、発荷主と元請け事業者間の契約は下請法の適用対象とされていたが、発荷主と下請事業者間には直接的な契約がないため、規制の対象外とされてきた。こうした規制の不備により、多重下請け構造の中で下請け事業者が不利な立場に置かれ続ける状況が温存されていた。しかし、国土交通省や中小企業庁、公正取引委員会などが連携し、物流業界の持続可能性を確保するために、優越的地位の濫用規制の強化や新たな法整備の必要性についての議論がスタートした。
7日の研究会では物流における是正すべき商慣行として、(1)短い納品リードタイム(2)高騰による運送契約(3)多重下請け構造(4)契約に規定されていない荷役業務(5)手作業による荷役(6)運賃の不当な据え置き(7)長時間の荷待ち(8)入出庫に係るシステム導入の遅れ(9)待機料金の不当な据え置き(10)契約に規定されていない付帯業務(11)手作業による検品・仕分け作業などの付帯業務(12)付帯業務量の不当な据え置き──を列挙。これらへの対策として議論されたのが、物流特殊指定と下請法の連携強化だった。
物流業界特有の取引慣行に対して、下請法と独占禁止法(優越的地位の濫用規制)を有機的に結びつけ、荷主が実運送事業者に対して過剰な荷役作業や長時間の荷待ちを強要する行為に対する規制を強化する動きを加速させる考えで、これにより発荷主から下請け事業者に対する一方的な不利益を抑止し、業界全体の公正な取引環境の整備につなげる狙いだ。
これまでの独占禁止法・下請法の仕組みでは、取引関係がある当事者間を対象としており、荷主から見て二次受け以下の下請け運送事業者は直接的な取引関係がなく、モノの流れに着目すると当事者の問題を独占禁止法・下請法によって解決することが困難だった。そこで、荷主企業を所管する省庁がこうした契約にない荷役や荷待ちなどについても「荷主・元請け間」「元請け・下請け間」の契約事項として含まれるよう業界に対し働きかけることにより、「下請法によって対応が可能となる」との考え方に至ったものとみられる。
この規制強化が実現すれば、物流業界にとって単なるルールの見直しにとどまらず、既存の求荷求車サービスが仕組みの根本的な修正を求められたり、トラック運送業界の大規模な再編につながったりといった可能性も出てくるだろう。
■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。
※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com