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“三方良し”の人材哲学で企業価値を高める

2025年11月6日 (木)

話題物流に携わる各社の命運は、「人」という資源の質と配置が左右する。いかに優れた仕組みや設備があっても、適材適所を無視して組織の真価は引き出せない。企業が求める人物がその力を余すところなく事業に注ぎ込み、成長の原動力となってはじめて、企業価値は真に高まるはずだ。

そうした、企業の“最適配置”への欲求が日増しに強まるなか、物流の現場を支える新たな人材ソリューションを掲げて2020年に登場したのが、総合人材サービス企業の「ロジネス」だ。同社は物流業界の人材動向を敏感に捉え、各企業が求める人材の確保を支援する。加速する人手不足、複雑化する就労環境、デジタル化の波など、業界特有の深層課題にも切り込む。現場の最前線で組織と人の可能性を引き出し、ミドルからエグゼクティブまで人材流動の架け橋を担う。その存在感はますます際立っている。

果たして、現代企業が求める人材の理想像とは、どのような姿なのか。多様化する人材要請に応じて、現場では実際にどんな策を打とうとしているのか。絶えず変化の波が押し寄せる物流業界にあって、企業は今、どのような課題と向き合い、突破口を見出そうとしているのか。同社取締役・金子雅俊氏に話を聞いた。

▲ロジネスの金子雅俊取締役

人材サービスのほか、多角的かつ柔軟に事業領域を拡大中

同社の事業領域は、人材サービスという言葉に収まらないほど、奥行きがある。時代の要請や社会の変化を敏感に捉え、多角的かつ柔軟に事業領域を拡張し続けている。慢性的な人員不足や管理部門のリソース不足など、物流独自の組織課題に対して、採用代行や職務記述書の作成、採用基準の明確化、業務プロセスの標準化といった採用支援コンサルティングも提供する。福利厚生や社宅制度といった付加価値の定着やキャリア開発に関する支援にも注力。働き方改革や多様性のある人材活用を推進している。

▲物流業界での人材の充足・定着・最大化を支援する(クリックで拡大、出所:ロジネス)

業界内外のサービスを集めて荷主や物流企業の課題にワンストップで応えるコンソーシアム事業にも取り組む。物流業界全体を底上げする構想を持つ。経営層への採用や部門設計、評価制度の見直しといった人事・採用戦略に関するコンサルティングと現場実動に直結する人員確保・運用支援を組み合わせたサービスを展開する。フットワークの軽さや現場密着の支援体制も強みだ。役員や外部ブレーンとも連携し、クライアントごとに柔軟に対応する。物流企業の基盤強化と成長を目指し、持続可能な物流インフラの実現を理念に掲げる。

「人と組織の力で現場改革を実現する」を標榜して創業

こうして今、事業は順調に拡大の一途をたどっている。しかし、時計の針を2020年に戻せば、同社が産声を上げたその当時、物流業界はまさに激動の渦中にいた。EC(電子商取引)市場の爆発的な成長が新たな物流ニーズを呼び込み、需要曲線はかつてない勢いで右肩上がりを示した。だが、業界では“ある難題”が浮き彫りとなり、打開策を模索しきれない企業が目立った。その荒波の只中に立たされた当時を、金子氏は今も鮮明に覚えている。

「物流の重要性が一気に高まったが、日々増え続ける需要に人手が追いつかなかった。そう、人手不足。ドライバーや倉庫作業員の不足がニュースでも取り上げられるほどだった。働き方の多様化も進んだ。フリーランスや主婦層の社会進出が増す一方で、業界の構造的な変革は未だ過渡期にあった」

こうした時代の転換点において、ロジネスは「人と組織の力で現場改革を実現する」という志を掲げ、人材紹介を中心に新たな一歩を踏み出した。創業メンバーの一人である金子氏は自身の20年に及ぶ人材業界での経験を生かし、物流業界の閉鎖的な採用慣行に風穴を開けることを目指した。「物流は医療と同じで、社会にとってなくてはならないインフラ。絶対に必要な産業だ。その分、人への投資は必然と確信していた」と金子氏は語る。

「採用は就職サイトで十分」という閉鎖性をチャンスに変える

ところが、まるで時が凍りついたかのような静寂の日々が続いた。営業活動を始めたものの反応は皆無。2020年4月から11月にかけての長い期間、コロナ禍も手伝って、売上の見通しが立たず、ただ時間だけが過ぎ去っていく状況を、金子氏はわずかに温かさと懐かしさを含んだ表情で振り返る。

「コロナ禍で中途採用の動きが止まっていたし、投資家や近しい仲間からは『よくこのチームでやってるね』と苦笑いを浮かべる人もいた」

しかしながら、金子氏の物流の未来を切り拓こうとする熱意と、当時副社長であり、現社長の成田芳政氏の卓越した財務戦略・組織構築の手腕が交錯し、ロジネスは静かだが、着実に、礎を築いていく。現在、売上は年200%以上のペースで成長し、大手から中堅企業まで顧客層を広げ始めた。

「当初は人材紹介という選択肢は見向きもされず、高額な手数料を支払う発想すら存在しなかった。しかし、コロナ禍が収束するや否や、需要の波が押し寄せた。物流業界においては、“人が動かなければ、モノも動かない”という厳然たる現実が浮き彫りになった」と金子氏は語る。

物流業界の採用は、いまだに「新卒かコネ採用」が幅を利かせている。この現状について金子氏は閉鎖的と評し、構造的な問題が業界を深く包み込んでいると指摘する。「大手や外資系の企業をターゲットにしたが、人材紹介の価値が浸透していなかった。派遣は使うものの、正社員採用は求人サイトで十分、みたいな空気が強かった」と肩をすくめる。しかし、この閉鎖性がチャンスだった。「競合が少なかった。大手の人材紹介会社様が関わってはいたが、物流に特化していなかった。私たちのような専門性の高いプレイヤーが入る余地があった」と分析する。

管理部門のリソース不足、採用広報の弱さに警鐘を鳴らす

ロジネスは人手不足、管理部門のリソース不足、採用広報の弱さといった物流企業特有の課題に焦点を当て、採用代行や職務記述書の作成、採用基準の明確化といった支援を展開した。特に、採用広報の弱さは深刻だった。

「物流企業の新卒・中途採用業務は1-2人程度で回しているケースが多い。他業種なら数人で分担する重責を、ごく少数で担っている。これでは人材獲得に向けた呼び込みも、企業の魅力発信も手が回らず、悪循環から抜け出せない」と金子氏は警鐘を鳴らし続けた。同社は採用代行により、この負担を軽減し、広報戦略やペルソナ設定の導入を提案。実際に採用担当を1人増やしただけでエージェント依存度が70%から30%に下がり、コストを2000万円削減できた事例もあるという。

ロジネスのもう一つの核となるのが、コンソーシアム事業だ。これは業界の枠を超えた幅広いサービスを束ね、荷主から物流企業まで一気通貫で最適解を提供しようという壮大な試みだ。「物流の未来を根本から変革したい。その根底には人材不足など個別の難題だけでなく、業界全体の構造的な課題にも果敢に挑む覚悟がある」と金子氏は言う。この構想は「社宅制度」の気づきから始まった。

「採用力の高い企業は社宅制度が整っている。仮に年収500万円でも、家賃8万円の補助があれば実質600万円の価値になる。社宅制度のない会社に転職したら、実質、100万円のダウンだ。そのため、社宅導入の推進を、弊社のクライアントへ勧めていけば、母集団形成に貢献でき、採用力も上がり、結果的に働く方々にも喜ばれると考えた。このアイデアが奏功し、複数の業界で社宅や福利厚生の仕組みを共同利用するコンソーシアム事業へとつながった」

提案した転職がこの方にとって本当に適職なのか、と自問自答

ロジネスの行動規範としては「三方良し」という、かつての近江商人が信条とした商道徳に由来する価値観を根幹に据える。求職者、企業、ロジネスを含む三者がともに歩み、互いの価値を高め合う好循環の創出を目指し、創業時から「無駄な転職をひとつでもなくす」を理念に掲げている。

「ほかの人材紹介会社だと、売り上げを追い求めるあまり、『どんな企業でもいいから転職させちゃえ』みたいな空気がある。でも、私たちは違う。求職者の人生を背負っていると自覚している。『本当にこの方にとって転職は必要なのか?転職はあくまでも手段に過ぎないので、無理やりは勧めたくない』と絶えず自問自答する日々だ」と金子氏は強調する。

同社が求める人材も明確だ。「三方良し、利他の精神の価値観に合う人、共に物流業界で働く方々と企業を『ヒト』の側面から豊かにしていきたいと思っている人。この3つが基準」と金子氏は言う。現在のロジネスのメンバーは「業界経験10年、20年の者」「中小企業経営者向け営業経験者」「人材業界での様々なプロジェクト推進者」など多彩ななか、みな一様に三方良し、利他のメンバーがそろっている」と話す。

ロジネスの挑戦は単なる人材紹介にとどまらない。業界全体の課題に切り込み、人と組織の力を最大化することで、物流の未来を切り開こうとしている。

「ロジネス」ホームページ

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