ロジスティクス公正取引委員会の「企業取引研究会」での議論などを経て、今後、物流領域に対する独占禁止法(優越的地位の濫用)や下請法の適用・監視が強化されることになった場合、荷主や物流事業者にはどのような影響を及ぼす可能性があるのか。現時点で想定されることをいくつか挙げておきたい。(編集委員・刈屋大輔)
求荷求車サービスには逆風?
トラック運送業界の多重下請け構造によって、実運送事業者が適正な対価(運賃)を収受できていない。こうした実態を是正する目的で、法規制だったり、業界全体としての自主的な行動目標(ガイドライン)などを通じて、将来は「下請けは2次まで、あるいは3次まで」といった具合に、運送業務の再委託行為が厳しく制限される可能性も否定できない。
それに伴い、大きな影響を受けそうなのが求荷求車サービスだ。求荷求車サービスは現在、実運送事業者だけでなく、「荷物情報を入手した後、実運送を担当してくれる他社を探す」仲介役のみを果たすトラック運送事業者にも利用されている。しかし、再委託が制限されれば、そうした「右から左に輸送案件を流すだけ」の目的で利用することは困難になるだろう。
いわゆる中抜きの排除は、実運送を担う事業者の適正運賃の収受に寄与するのは確かだ。ただし、その一方で、再委託の制限は「運び手」の選択肢が減ることも意味するため、求荷求車サービスのマッチング率は低下していく恐れがある。ユーザは突発的な輸送需要が生じた場合に運び手を見つけにくくなる。
マージン率の上限を規制?
多重下請け構造が、実運送事業者の適正運賃の収受や、実運送を担うトラックドライバーの賃金アップを阻害しているといった観点から、再委託に一定の制限を設けることに加え、元請け事業者に対し、再委託時のマージン率の公開(会社ホームページ上などでの)や監督官庁への報告を義務付けたり、マージン率の上限が設定される可能性がある。人材派遣ビジネスと同様のルールだ。
国土交通省の調査によれば、「25%以上の事業者が受託金額から10%以上の手数料を差し引いて下請けに業務を委託している」という。この実態を踏まえて、今後は不当に高いマージンにはメスが入ることになるかもしれない。
元請けに課せられる“下請け保護責任”
直接的な取引関係にないことを理由に、下請けトラック運送会社が発荷主から契約外の行為(積み込みなどの荷役、荷待ちなど)を強いられているケースが後を絶たない。この問題を解消するため、元請けと発荷主は「下請けの業務範囲」をあらかじめ明確にした上で契約を締結することがルール化されそうだ。その効力としては、発荷主から下請けが不当な行為を要求された場合には下請法が適用されることなどが挙げられる。
「2024年問題」などを背景に、本格的な議論が始まったものの、最終的に規制の強度がどの程度になるのかは未知数だ。既存の商慣行やマーケット構造が大きく変わる可能性があるため、議論の過程では関係各方面から一定数の反発の声が上がることも予想される。とはいえ、荷主企業、物流事業者ともに、近い将来に実施されるであろう法改正などに向けて、様々なケースを想定し、いまから心構えや準備をしておく必要がある。
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