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鈴仙運輸、機材運搬後のトラックが休憩所に

2025年7月8日 (火)

ロジスティクステレビ局や映像制作会社の機材輸送を専門とする鈴仙運輸(東京都港区)は、収録現場でのスタッフの作業環境改善を目的に、発電機とエアコンを備えた特殊車両を開発した。映像収録機材を運搬後、荷台スペースを編集作業や休憩に活用できる仕様としたもので、屋外イベントでの作業効率と安全性を大きく高める。

▲鈴仙運輸のいすゞ「エルフ」。荷台下に発電機が設置され、トラックのエンジン、バッテリーとは独立した電力を供給することができる

鈴仙運輸は、NHKをはじめとするテレビ局の仕事を長年手がけてきた運送会社。従来、屋外収録時の映像編集やスタッフの休憩は簡易テントで行われていたが、近年の猛暑や突風、落雷などの天候リスクにより、安全面で課題が浮上していた。「トラックの荷台が空くなら使わせてもらえないか」との顧客の声をきっかけに、同社では荷台の有効活用を模索。そのなかで誕生したのが、荷台にエアコンを備えたトラックだった。しかし同社社長の鈴木宏和によると「それだけでは荷室の天井や壁を通して夏の熱気や冬の冷気が室内に入ってしまった」のだという。「万全を期すために、断熱材を使い、照明やコンセントも完備した“動く作業空間”を作った」という。同社はNHKの本局と地方局の間での機材のやり取りを受け持つなど、物流企業としての機能も持つが、トラック運送業としてはかなり特殊な業務を行っていると言える。

▲いすゞ「エルフ」と同社の鈴木宏和社長

今回新たに導入された車両は、電源車のない山間部や地方でも単独で稼働できるよう、軽油の発電機を搭載。発電機は100リットルの大型燃料タンクで長時間稼働が可能であり、実証実験では72時間連続稼働しても燃料は8分の1程度しか減らなかったという。災害の際にも使用できる仕様だ。

車両の製作は、トラック架装に定評のある北村製作所(新潟市江南区)が担当。設計から完成までは約2年を要し、2023年11月にようやく完成に至った。車両は、最大積載量2950キロを確保しつつ、8トン未満の車両総重量に抑えたエルフ4トン仕様である。過積載を避けるとともに、機動性も確保した。室内はカーペット張りで防音効果を高め、床も木材ではなくクロス張りとすることで反響を抑えた。運転席の後部にはエアコンの室外機と並んでスペアタイヤを設置。乗降性を高めるため簡易階段も備えた。

▲テレビ機材はかご台車でまとめて積み込み。4トン車で8台のかご台車が積載できる

▲機材を降ろした後のレイアウト例。映像編集などの作業のほか、演者の休憩所や更衣室としても活用できる

▲荷台は断熱が施され、外気の影響を受けず、快適な作業空間となる

▲中で歩いても荷台が揺れないよう、アウトリガーを増設

同社によれば、これまでこうした用途に対応した車両は中継車などを除いてほとんど存在しておらず、機材輸送と作業空間を一体化させた構成は業界でも希少な存在であるという。現在は既存顧客へのお披露目を進めており、テレビ収録以外にも着ぐるみイベントや災害現場での利用といった広がりも見込んでいる。

今後も需要拡大を見込み、追加導入を進める方針であり、すでに同様の6トン車が新たに1台納車される予定だ。

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