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東南アジア各国が燃料消費の抑制に動く

2026年3月21日 (土)

国際ホルムズ海峡の封鎖が3週間を超え、東南アジア各国はエネルギー確保と国内消費の抑制を同時に進めている。官公庁の週4日勤務、交互通行日制度、ディーゼル価格の上限設定、石油製品の輸出禁止と、措置は多岐にわたる。燃料価格の上昇に目が行きがちだが、日本の物流事業者が警戒すべきは石化原料の供給停止だ。プラスチックや包装フィルムの原料となるナフサが届かなくなり、ASEAN域内の石化メーカーが相次いでフォースマジュール(不可抗力)を宣言した。製品は完成しているのに包装材がない、部品はそろっているのに樹脂部品だけが来ない、という形で影響が日本に届く局面に入った。(編集長・赤澤裕介)

石化メーカー3社が不可抗力を宣言

今回の危機で先に動いたのは石化メーカーだった。ナフサクラッカーとは、原油から取り出したナフサ(粗製ガソリン)を高温で分解し、プラスチックや合成ゴムの原料を作る装置だ。ここから出るポリエチレンやポリプロピレンは食品の包装フィルムやペットボトルに、ブタジエンはタイヤや靴底に、スチレンは発泡トレーや家電の外装に使われる。そのナフサがホルムズ経由で届かなくなり、ASEAN域内の石化メーカーが相次いで不可抗力を宣言した。

▲ナフサ供給途絶に伴い操業制約を受けた主要石化メーカーの動き(クリックで拡大)

ラヨーン・オレフィンズ(ROC)の下流にあるポリエチレン、ポリプロピレン工場にも連鎖が及んでいる。タイの塗料大手TOAペイントは、上流の石化メーカーの操業停止により2026年第1四半期の業績に影響が出ると明らかにした。

この連鎖の先に日本がいる。タイからの自動車部品、インドネシアからの食品包装材、ベトナムからの電子部品用梱包材は、いずれも止まったクラッカーの下流にある製品だ。遅延の問題ではない。出荷されるべき製品がそもそも作れなくなっている。

東南アジアの石化産業がこれほど脆いのは、中東産原油への依存度が高く、備蓄が薄いためだ。ASEAN・東アジア経済研究センター(ERIA)のエコノミスト、アロイシウス・ジョコ・プルワント氏のデータをもとに整理する。

▲東南アジア各国の中東依存度と備蓄の脆弱性比較(クリックで拡大)

ベトナムのギソン製油所はクウェート産原油の硫黄含有率2.52%を前提に設計されており、別の産地の原油に簡単には切り替えられない。ベトナムが調達を発表した非中東産原油400万バレルは消費量の6日分にすぎず、これだけでは1週間持たない。米エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)のサム・レイノルズ氏は、追加調達がなければ燃料不足のリスクが高いと指摘している。

各国が講じた燃料消費の抑制措置を整理する。

▲東南アジア各国が導入した燃料消費抑制と需給対応策の一覧(クリックで拡大)

燃料制限に加えて、タイと中国が石油製品の輸出を止めたことが、域内の物流を一段追い詰めている。ラオス、カンボジア、ミャンマーは自国に製油所がないか、あってもきわめて小さく、これまでタイ、ベトナム、シンガポールから燃料を買ってきた。中国は5日に国有大手製油所にディーゼルとガソリンの輸出停止を命じ、タイもカンボジア・ラオス向けを除いて石油製品の輸出を禁止した。燃料の供給元が絞られた今、メコン地域の陸上物流は停止を前提に計画を組むべき段階にある。

インドネシアは別の問題を抱えている。26年度の補助金燃料予算は原油70ドル/バレルを前提に25兆1000億ルピアを計上した。足元の原油価格は100ドルを超えており、エネルギー補助金全体(電力、ガスを含む)は381兆ルピア(対GDP比1.5%)に膨らむ。プラボウォ・スビアント大統領の無料栄養食(MBG)プログラム(予算335兆ルピア、国家予算の11%)との併存が財政を圧迫し、フィッチは3月にインドネシアの格付け見通しをネガティブに変更した。プルバヤ・ユディ・サデワ財務相は20日時点で補助金燃料の値上げを否定したが、原油が120ドルを長期間超えれば維持は困難になるとプラボウォ大統領自身が認めている。値上げに踏み切れば物流コストが上がり、据え置きが続けば財政悪化がルピア安を通じて輸入コストを押し上げる。どちらに転んでもインドネシア発着の輸送コストは上昇方向にある。

日本の物流事業者がいま判断すべきことは3つある。ASEAN発の石化依存製品(包装材、プラスチック部品、塗料、接着剤など)は、納期通りに届く前提を外すべきだ。チャンドラアスリとROCの操業再開の見通しが立たない以上、代替調達の検討は今始めなければ間に合わない。メコン地域(ラオス、カンボジア、ミャンマー)向けの陸上輸送は、通常のリードタイムが意味をなさなくなっている。タイと中国の輸出禁止が続く限り、停止を前提にした輸送計画への切り替えが必要だ。インドネシア発着の輸送は、コスト上昇を前提にした契約条件の確認に入るべき局面にある。値上げでもルピア安でも結果は同じで、現行条件のままでは採算が合わなくなる。

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