行政・団体国土交通省トラック・物流荷主特別対策室が主催する「第32回トラック物流問題解決に向けたオンライン説明会」が19日、開催された。午後の部では事前アンケートに基づいた物流革新の現状が議論されるとともに、初荷主、着荷主、実運送、報道からの参加者による「WEB討論会」を実施。それぞれの領域から取り組みの現状が語られた。
WEB討論会の前半では、まず報道機関向けに行ったアンケート結果が共有され、中国運輸局自動車交通部の田中幸久貨物課長を進行役に、本誌LOGISTICS TODAY社長の赤澤裕介編集長が議論に参加した。アンケートでは「物流の現状・課題についてどのように感じているか」「誰が、何をすべきか」に対する回答が寄せられた。物流制度の整備が進む一方で、現場の実態変化が乏しいとの問題意識が、関係者による進ちょく共有セッションで改めて浮き彫りとなった。議論では、法令順守の形式対応にとどまらず、商慣行の見直しや荷主経営層の関与、着荷主を含めたサプライチェーン全体での責任分担の必要性が指摘された。
制度面では、標準的運賃制度や物流・トラックGメンの活動、物流統括管理者(CLO)の選任義務化など、改革に向けた環境整備は進んでいる。しかし、書類は整っているが現場は変わっていない企業が多いとの意見が寄せられた。「制度対応そのものが目的化し、本来の課題である運賃是正や労働環境改善への取り組みが後回しになっている」(赤澤編集長)との懸念が共有された。
依然として労働力確保の難しさも重要課題だ。業界内で課題認識は概ね共有されているものの、具体的な実行に移らない理由として、現場課題の可視化不足や役割分担の曖昧さが指摘された。課題設定が抽象的なままでは、改革の主体が定まらず、取り組みが進まない構図があるという。
制度と現場のギャップについては、「制度は企業変革の直接要因にはなりにくく、変革を促すのはコスト構造の変化か経営者の認識変化のいずれかだ」との見方が示された。CLO制度についても、届け出準備は進む一方で、物流構造改革が経営会議の主要議題として扱われている企業は限定的との指摘があった。既存の物流部長の肩書変更にとどまり、全社改革に結び付いていないケースもあるとみられる。

▲WEB討論会の進行役を務めた中国運輸局自動車交通部の田中幸久貨物課長(左)
また、物流課題の解決には荷主企業の「協力」ではなく「自分ごと化」が不可欠との認識で一致した。特に重要なのは経営トップの関与であり、担当部門の理解だけでは意思決定を変えられないという。現場が改革の必要性を訴えても、経営層からコスト削減の指示が下りれば値下げ圧力が優先される現実がある。物流を削れるコスト」と捉える経営感覚が変わらない限り、現場の努力は空回りしやすいとの意見もあった。制度整備の次の段階として、商慣行改革や経営意識の転換、サプライチェーン全体で「どう進めるか」こそが、物流改革の核心であることが示された形だ。
WEB討論会の後半は、発・着荷主と運送それぞれの領域から現状が報告され、物流効率化や荷待ち対策、CLO体制の構築を巡る議論を深めた。
実運送事業を知る立場からは、Univearth(ユニバース、大阪市福島区)が参加し、「各社は既存ルールの中で合理的に行動しているだけで、個社努力では構造を変えられない」との声が上がった。受発注の多くが人的ネットワークに依存しているため輸送力の可視化やシステム化が進まず、多重構造が維持されているという。保有台数や積載率、空き荷台といった情報を共有し、同等の輸送力を持つ事業者群をグループ化できれば、中抜きの少ない直接的な仕事配分が可能になるとの提案も示されたが、長年競争してきた業界特性や囲い込み意識が協調の障壁になっている現状もあり、大手事業者が輸送リソースを「共通資源」として共有する発想の重要性が訴えかけられた。
世界の有名ビールブランドを国内展開するAB InBev Japan(東京都渋谷区)は、発荷主としての観点で参加。日本の物流品質は破損率や定時性の面で高く評価される一方、その品質が個人技能に依存し、標準化・システム化が遅れている点が指摘された。ドライバー高齢化や免許取得者の減少を踏まえ、「人」を基軸にした物流運営の姿勢が強調された。人を大切にするという視点では「コミュニケーション」の重要性にも触れ、失敗を恐れず話せる場をつくること、声を上げても意味があると思えること、叱責より改善につながる対話があることが、実効的な改善の前提としてサプライチェーン改革につながると語った。
川崎重工業は工場搬入における納入予約システム導入による現場改革報告に加え、改正物流効率化法に伴うCLO体制について報告。副社長をCLOとし、さらに各事業部門に物流責任者を配置する全社横断型の体制を整備する方針を示した。事業部門単位で「ミニCLO」機能を担う構想で、月次会議を通じ中長期計画の策定と進捗管理を行う実効性のある組織となる。
今回の議論でもっとも注目されたのは、着荷主として参加した大黒天物産による報告だ。同社は昨年12月にGメンから「長時間の荷待ち」改善を求める勧告を受けており、公の場でその経緯を語る前例のない機会となった。
同社は「取り組み状況を積極的に開示、共有するのは責務」として、急ピッチで進む対応状況を解説。改革の柱としたのは「社内の意識改革と方針策定」「データに基づく分析と問題抽出」「現場運用で即実施できる改善」「組織改編や施設変更を伴う中長期改善」の4点。勧告後すぐに経営幹部を中心としたプロジェクト体制を立ち上げ、新CLO体制を構築。さらに、物流部門以外の知見も踏まえるため、バイヤー経験や店舗運営経験を持つ実務コントローラーと部門横断連携を強化した。また、改めて荷役現場の状況が分析され、予約システムが有効に機能していないケースを確認、具体的な改善に着手した。朝の入荷枠を拡大し予約取得しやすくする、予約順優先ではなく全体効率の最適化、日次で荷待ち時間実績を可視化し、現場掲示とプロジェクトメンバーへの共有するなどを実行に移し、すでにこの2-3月の現場運用では平均荷待ち時間の大幅改善、30分以上の待機割合も大幅に低下したという。
また、依然として長時間の待機が発生していること、バラ積み対応が荷役における最大のボトルネックとなっていることも可視化され、運用変更による効率化だけではなく、隣接地をバラ積みからパレットへの変換拠点とするとともに、センターの分散配置などの投資も計画する。これらの取り組みにより、7月末までには現在90分前後の最大荷待ち時間を60分以内に抑える方針を示す。同社が緊急の優先取り組み事項として、経営主導の改革に待ったなしで取り組んだ経緯が明らかになった。
同社は、勧告をきっかけにあらためて全社課題として受け止めるようになったと振り返る。物流コストを価格に転嫁しづらい業態だからこそ、ストック機能の強化、車両やコンテナ単位の大量物流など「物流を競争力」の源泉とする本来の取り組みに集中する決意が表明された。
大黒天物産の発表は、着荷主にとってのCLOのあり方、対応の難しさを示唆するものとなった。バラ積み荷物課題、予約システムの最適運用など、着荷主個社の対応を超えたサプライチェーン全域で意識しなくては改善できないものであることも共有された。また、現場の声を聞き改善に取り入れることで社内コミュニケーションが深まり、現場が明るくなったとも報告する。同社の経験と活動は、同じ悩みを持つ事業者にとってのベンチマークになるのではないか。
今後も共同配送、パレット規格、納品頻度、エリア分散を含む全体最適のあり方について継続協議が必要であることは間違いない。サプライチェーンそれぞれの領域から提示された課題に気づき、それぞれの立場で自分ごととして考える場が必要であることも再確認された。サプライチェーン連携のつなぎ目となるべきCLOの始動が、物流をどう変えていくのか、今後の議論でさらに検証していくことになる。
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