話題せっかくの倉庫が泣いている――現場からそんな声が漏れる。自動化だDXだと掛け声ばかりが先行し、肝心の担当者は右往左往。設備メーカーの言いなりで高額システムを導入したが、「本当にウチに合っているのか」と疑問すら浮かばぬまま、袋小路に迷い込む企業は後を絶たない。
この業界の閉塞感に切り込むのが、独立系物流インテグレーターAPTだ。特定メーカーに偏らない中立の立場から最適解を導く物流の一元化ソリューション「Σ(シグマ)」が、既存勢力と一線を画すると評判を呼んでいる。同社社長の井上良太氏の言葉を追えば、物流の新しい地平が見えてくる。
業界の「空白地帯」を埋める中立性
倉庫の自動化を巡る構図は、いささか歪んでいる。不動産会社は床を貸したい、マテハンメーカーは自社機器を売りたい等々、各者の思惑が先に立ち、肝心の「顧客にとって最善は何か」という視点が置き去りにされがちだ。APTが着目したのは、この業界に欠けていた「中立の相談相手」という存在だ。

▲「顧客が求めるのはメーカーの機械ではなく、課題を解決する機能」と語る、APT社長の井上良太氏
「倉庫に光を」をスローガンに掲げる同社は、特定メーカーのしがらみを断った独立系として、構想から保守まで一貫して引き受ける。顧客に寄り添う伴走者的な存在だ。同社社長の井上氏は、この業界特有の閉鎖性に以前から違和感を抱いていたという。
「他業界から来て驚いたのは、メーカーの壁の厚さだ。エレベーター業界には独立系メンテナンス会社が存在するが、マテハン業界にはほとんどない。顧客が求めるのは特定メーカーの機械ではなく、課題を解決する機能のはずだ。私たちは中立の立場でそこに切り込んでいる」
4PLの敷居を下げる「壁打ち」というアプローチ
近年注目される「4PL(フォース・パーティー・ロジスティクス)」とは、荷主企業が自ら物流を設計・統括し、最適なパートナーや仕組みを選びながら全体最適を図る考え方だ。だが現場では定義が曖昧で、荷主企業にとっては「丸投げ」への不安やハードルの高さを感じさせる言葉でもある。
APTは4PLを掲げつつ、顧客との接点を「壁打ち」と言い換えた。大仰な改革論ではなく、まず悩みを受け止める相談相手に徹する。「Σ」は、その思想を実行可能な形に落とし込んだサービスだ。「預ける物流」から「設計する物流」へ。この転換を体現した次世代型ソリューションとして、2025年11月4日に正式リリースした。

▲建築部は無駄をそぎ落としシンプルに。内部に自動化を投入
「4PLという言葉は堅苦しく映るらしい。だから私たちは『壁打ち相手』として、まずヒアリングから始める。その愚痴こそが要望の塊であり、現場の真の課題だ。例えば『自動化したい』という相談でも、よく聞けば、社長は『機械トラブルで現場が止まるのが嫌だから、人海戦術でいきたい』と考えているケースもある。企業の性格や事情を無視して最新設備を導入しても、現場に根付かない。私たちはまず話を徹底的に聞く。潜在的なニーズを掘り起こすことを最優先にしている」
繋がらない技術を繋ぐ「Σ」の真価
APTが提供する「Σ」は、この中立的な課題解決を具現化したサービスだ。戦略立案から倉庫設計、マテハン機器・ロボット導入、庫内オペレーションの請負、導入後の保守・改善まで、APTがワンストップで支援する。従来のような「設計と実行の分断」を防ぎ、計画通りに動く物流を実現する。

▲部分的な効率化ではなく、現場全体の最適化を目指し、伴奏するパートナー的存在
最大の武器は、異なるメーカーの機器を自在に繋ぐ「統合力」だ。昨今は海外製の安価で高性能なロボットが台頭しているが、国内メーカーの既存設備との連携は一筋縄ではいかない。各社が自社規格に固執するあまり、顧客が個別に優れた機器を選んでも、全体として動かない事態が続出する。「Σ」はこうしたバラバラの技術の間に立ち、全体を束ねる司令塔となる。
井上氏が挙げた事例が象徴的だ。かつて、「オートストアとコンベアを繋ぎたい」という要望があった。しかし、メーカー同士が協力を渋り、話が宙に浮いた。APTが間に入って制御システムを組み、異種設備の橋渡しをした。「顧客は自由に機器を選べるが、肝心の繋ぎ役がいない。我々がその役を担うことで、ベンダーの壁を越えた柔軟なラインが初めて動き出す」(井上氏)
APTはメーカーの縄張りに囚われない。自社製も他社製も、顧客の事情に合う道具なら何でも組み合わせる。荷主が望む機能だけを選び取り、事業の成長に合わせて拡張も変更も自在だ。
過剰投資を防ぎ、自動化を「民主化」する
「Σ」の核心は、コストの適正化と柔軟性にある。大手メーカーの提案は得てしてオーバースペックに陥る。将来の拡張性を謳うも、身の丈に合わぬ巨大システムを勧めたり、数十億円の投資を迫る例も珍しくない。
APTは必要な機能だけを選ぶ。中古機器やサブスク契約を組み合わせ、中小企業にも手の届く提案をする。物流自動化を一部の大企業だけのものにしない。省人化、垂直統合、立地の見直し。あらゆる角度から無駄を省き、現場の生産性を引き上げる。システムの継ぎ目をなくす。運用と保守を一本化して、総所有コストを劇的に下げる。

▲顧客のニーズに応じて、契約形態や提供メニューを可変できる
ある地方の老舗企業が、大手から300億円の完全自動化倉庫を提案され、途方に暮れていた。APTが入って要件を洗い直すと、実際には5億円で十分だと判明した。「ステーキ一切れで満足な客に、ステーキ店の経営権を買わせるような話だ。予算次第では、設備をAPTが保有してサブスク提供する手もある。企業の成長段階に応じた過不足ない解を出す。長く使える設備こそ、本当の投資だ」と井上氏は言う。
戦略から導入、保守まで一気通貫。無駄を削ぎ落とし、業者間の調整も不要。効率と品質を同時に引き上げる、これが真の一元化だ。
異業種の発想が変える倉庫の未来
APTの強みは、物流の常識に縛られぬ「よそ者」の目にある。井上氏自身が異業種出身だ。開発パートナーには将棋ソフトの会社を起用した。駒の動きとロボットの制御に共通項を見出し、AIで最適動線を割り出す。既存の物流システム会社では思いつかぬ発想で技術を磨く。この柔軟さが、硬直した業界に新風を吹き込んでいる。

▲「『Σ』は物流を『預ける』から『設計し動かす』へ変える思想を具現化したもの」と話すAPT執行役員の栗原勇人氏
APT執行役員の栗原勇人氏は「4PLとは、物流を『預ける』から『設計し動かす』へ変える思想だ。「Σ」はその具現化に他ならない。荷主が自ら物流を掌握し、社会全体の生産性を押し上げる。APTは、そのパートナーであり続ける」と語る。
井上氏が描く青写真は明快だ。それは「物流版『保険の窓口』を作る」。メーカーの壁を越え、フラットに相談できる場所。それがこの業界にはなかった。選択肢を並べ、最適な組み合わせを示す。将来は標準化されたパッケージも用意し、拠点構築のハードルを下げる。古い体質が残る分野だからこそ、しがらみのない新参者が入り込む隙が、まだ十分にあったのだ。

▲APTが物流を持続可能なインフラへと磨き上げ、業界全体を底上げしていく
APTは「Σ」を軸に、3PLからマテハンメーカー、システムベンダーまで幅広いパートナーと手を組み、荷主企業の物流最適化を支える。中立の立場を崩さず、業界横断で連携を深める。物流を持続可能なインフラへと磨き上げ、業界全体を底上げしていく構えだ。
人手不足と2024年問題が重なり、日本の物流倉庫は岐路に立つ。ハードを売りつけるのではなく、課題に寄り添い異種技術を束ねるAPTの「Σ」。その中立と柔軟さは、自動化に踏み出す企業の頼もしい道標となるはずだ。

















