調査・データ日本が原油輸入の指標とするドバイ原油の現物価格が19日、1バレル166ドルを突破して過去最高値を更新した。価格情報会社プラッツ(S&Pグローバル傘下)のデータによる。国際的な指標であるブレント原油は同日108ドル台で引けており、両者の差は57ドルに達した。日本の軽油・ガソリン価格はドバイ基準で決まる。国内メディアが報じる「原油100ドル突破」はブレント基準の数字で、日本が実際に調達する原油はそれより5割以上高い。ドバイ基準で軽油の小売価格をシミュレーションすると、補助金なしで1リットル395円前後に達する計算だ。(編集長・赤澤裕介)
57ドルの差が意味すること
原油市場では現在、指標間で異例の価格差が生じている。
ドバイの上昇がブレントやWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)と比べて突出して大きい。この差の背景は明確だ。ドバイ原油はペルシャ湾で産出され、ホルムズ海峡を通じてアジアに輸出される。封鎖によってこのルートが事実上止まり、ドバイ原油の現物は需要があるのに物理的に届かない状態になった。供給が極端に細り、現物価格だけが急騰している。
一方、ブレントは北海産でホルムズ海峡とは直接関係がない。WTIも米国内の指標だ。両者は封鎖の間接的な影響(世界全体の需給引き締まり)を受けて上昇しているが、物理的な供給途絶には直面していない。
JPモルガンの商品調査部門責任者ナターシャ・カネヴァ氏は「海峡が再開されなければ、この価格差は持続しない。大西洋側の在庫が取り崩される過程で、ブレントとWTIもいずれ上方に再評価される」との見方を示している。ドバイの急騰はアジア市場が先に供給不足に陥っている結果だが、封鎖が長引けば欧米の指標もドバイの水準に近づいていく。
日本の物流事業者にとって、この価格差は直接的な問題だ。日本の原油輸入価格はドバイ原油をベースに決まる。国内メディアが報じる「原油100ドル突破」はブレント基準の数字であり、日本が実際に調達する原油の価格はその1.5倍以上になっている。
本誌のシミュレーション計算式(起点:原油65ドル、為替149円、軽油本体価格115円)にドバイ現物166ドル、為替158円を当てはめると、軽油の小売価格は以下のようになる。
ブレント基準でも小売266円と危機前の1.8倍だが、ドバイ基準では395円と2.7倍に達する。
政府は19日出荷分から「緊急的激変緩和措置」として燃料補助金を再開した。全国平均の小売価格を170円程度に抑える方針で、170円を超える部分を全額補助する。19日時点の支給単価は軽油が1リットルあたり47.3円、ガソリンが30.2円だ。
ただし、補助金には制約がある。店頭反映には1-2週間のタイムラグがあり、一部で値下げが始まったものの全国的な浸透はこれからだ。原油がさらに上昇すれば補助後の価格も再び上がる。財源にも上限があり、基金残高は2800億-4000億円とされ、民間試算では原油高が続いた場合に2か月強で枯渇する可能性が指摘されている。
ドバイ基準で補助を計算すると、1リットルあたり225円を政府が負担する計算になる。現在の支給単価47.3円との差は大きく、ドバイ基準の原油価格がそのまま仕入れに反映されれば、170円目標の維持は財政的に困難になる。実際の仕入れ価格がブレント寄りなのかドバイ寄りなのかによって、補助の実効性は変わる。
本誌は3月3日以降、5本の軽油価格記事を掲載してきた。これまではブレントやWTIの動きを中心に報じてきたが、ドバイ現物がここまで開いた以上、日本の実態に近いのはドバイ基準のシミュレーションだ。
ライスタットのスーザン・ベル氏は、ドバイのシンガポール市場での価格について「ほぼ架空の価格だ」と指摘している。物理的に届かない原油の価格が高騰しているため、通常の市場分析が当てはまらないという趣旨だ。ウッドマッケンジーのアンディ・ハーバーン氏も「すべてはホルムズ封鎖の期間で決まる」と述べ、封鎖の長期化に伴ってブレントやWTIもドバイに収れんする可能性を指摘している。
物流事業者が確認すべきは、自社の燃料調達がどの指標に連動しているかだ。元売りとの契約がブレント連動なのかドバイ連動なのかで、同じ「原油100ドル」でも実際の仕入れ値は大きく異なる。また、荷主との燃油サーチャージ交渉でも、ブレント基準で説明するのとドバイ基準で説明するのでは、提示する金額の根拠が変わる。ドバイ現物が166ドルを超えた今、ブレント基準の数字だけでコスト転嫁を議論するのは実態と合わない。
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