ロジスティクスホルムズ海峡の封鎖に伴う燃料市場の混乱が、コンテナ船だけでなく航空貨物と陸上輸送にも同時にサーチャージとして波及している。APモラー・マースクは25日から全世界の海上輸送に緊急バンカーサーチャージ(EBS)を適用する。20フィートコンテナで200ドル、40フィートで400ドル。CMA CGMも23日から同様の緊急燃料サーチャージを導入済みで、こちらは陸上輸送にも課金する。マースクは航空貨物でも燃料サーチャージの引き上げと輸送混乱サーチャージ(TDS)の新設を発表した。海・空・陸の3モードで燃料コストの転嫁が同時に始まった形だ。(編集長・赤澤裕介)
3モード同時の転嫁が始まった背景
海上輸送の燃料サーチャージ自体は珍しくない。だが今回は3つの点で従来と異なる。第一に海・空・陸の全モードで同時に発生した。第二に陸上輸送まで課金対象に含まれた。第三に料金改定の周期が14日や毎週という短期に変わった。従来のバンカーサーチャージは月次や四半期での改定が一般的で、対象も海上に限られていた。今回の動きはこの枠を超えている。
マースクが10日に発表したEBSの適用対象と料金は以下の通りだ。長距離の往航(ヘッドホール)と短距離の域内航路で金額が異なる。
マースクはEBSの理由として「中東地域の製油所の多くがオフラインか稼働率を落としており、輸出能力が大幅に制限されている」と説明している。通常の燃料費調整料(FFF、フォッシル・フュエル・フィー)ではカバーできない燃料の調達コストと再配置コストを補うためとしており、14日ごとに見直す。
CMA CGMは2日早い23日から緊急燃料サーチャージを適用した。ドライ貨物で長距離往航1TEUあたり150ドル、リーファーで180ドル、域内・復航で75ドルだ。CMA CGMのサーチャージで注目すべきは海上だけでなく陸上輸送にも課金する点で、同社はアドバイザリー第7号で「燃料市場に前例のないボラティリティー(変動)が生じている」として内陸・インターモーダル輸送にも適用すると明記した。
マースクは航空貨物でも動いた。中東地域の航空燃料市場が不安定化していることを受け、燃料サーチャージ(FSC)を市場指標に連動させて毎週見直す方式に切り替えた。FSC条項のない契約については運賃の15%を燃料分として充当する。さらに、空域制限やリルーティング(迂回運航)に伴う追加コストをカバーするTDS(輸送混乱サーチャージ)も新設した。
海上貨物分析のシーインテリジェンスは、現在の燃料価格水準が1年間続いた場合、コンテナ船業界全体で年間295億-345億ドルの追加燃料費が発生すると試算した。直近12か月の世界のコンテナ取扱量1億9360万TEU(コンテナ・トレード・スタティスティクスのデータ)で割ると、1TEUあたり153-178ドルの上乗せになる計算だ。同社はこの試算の前提として、燃料価格が2025年水準から65-76%上昇した状態が続くことを挙げている。
ただし、同社の創業者であるラース・ジェンセン氏は「燃料費の上昇そのものがコンテナ輸送の供給網を破壊するわけではない」とも指摘している。燃料費はコストの問題だが、ルート遮断や船腹不足は輸送そのものを止める。今回の3モード同時サーチャージは、燃料コストの高騰と供給制約の2つが重なっていることを映している。船社にとっては燃料を調達できたとしても、それを必要な場所に運ぶルートが限られ、再配置のコストが膨らんでいる。
日本の荷主や物流事業者にとって、今回の動きで確認すべきは価格の水準だけではない。第1に、自社の契約にFFFやFSCの条項がどう組み込まれているか。マースクのEBSは既存のFFF枠外の追加料金であり、FFF条項で吸収できるものではない。第2に、陸上輸送にもサーチャージが広がった点。CMA CGMの陸上適用は、港湾から最終届け先までの一貫輸送コストが上がることを意味する。第3に、14日から毎週という短い改定サイクルだ。この頻度では、荷主が見積もり時点で確定した輸送コストが請求時には変わっている。契約上どの費用が固定で、どこからが変動扱いになるのかを、今の段階で洗い出しておく必要がある。
マースクのEBSは発効5日前の段階にある。25日以降、ハパックロイドなど他の船社が同様の一律サーチャージに動くかどうかで、業界全体のコスト水準が決まる。ハパックロイドは現時点で一律サーチャージは発表しておらず、契約ごとの調整で対応するとしている。
■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。
※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。
LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com
LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。
ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。





















