ロジスティクス東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催中の「物流DX EXPO 2026 夏 東京」は会期3日目を迎え、特別企画「物流DX未来会議2026 AFTER ACTION IN TOKYO」が行われた。そのなかで、Nexgen Japan(ネクスジェン・ジャパン、横浜市西区)CEO・物流AIアーキテクトの大野有生氏が登壇し、LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長がモデレーターを務めるセッション「エージェントは対立に値段をつける。物流AI実装の現在地。」が開催された。
同セッションでは、サプライチェーン領域におけるAI(人工知能)人材の需要急増や、生成AIおよびAIエージェントの物流分野への実装事例、そして人とロボットの協働について活発な議論が交わされた。
大野氏はまず、アメリカの調査会社ガートナーの調査を引用し、SC領域におけるAI人材の求人が過去3年間で387%増加している現状を報告した。新卒採用だけでは到底追いつかないため、現場経験を持つ既存人材のリスキリングが不可欠であると強調した。

また、大野氏は「物流分野は社内で完結しやすい領域とは異なり、荷主や物流事業者など複数の主体が関与し情報が分散するため、他産業に比べてAI実装の難易度が一段と高くなる」と述べ、物流特有の壁を指摘した。同氏によれば、「真のAI人材とは単なるエンジニアではなく、自社業務を深く理解し、社内外に信頼ネットワークを持つ人材を指す」という。
セッションの目玉として、営業部門と物流部門の利害対立をAIエージェントが調整するデモが公開された。特売時の追加補充を例に、欠品回避と受注拡大を優先する営業側と、物流費や積載率を重視する物流側の条件をAIが整理し、欠品率と配送費のバランスを取った中間案など24通りの選択肢を提示する仕組みである。
大野氏はこのデモを踏まえ、「AIエージェントが最適案を自律的に決定するわけではない。提示された複数案をもとに、営業と物流の担当者が事業上の文脈や取引先との関係を踏まえて最終判断を下すという、人間が判断する余地を業務設計に残すことが重要」と語り、完全自動化を前提としたAI導入への警鐘を鳴らした。

▲Nexgen Japan CEO・物流AIアーキテクトの大野有生氏
続いて赤澤氏が、「物流業界では共同化が進む一方で、用語やデータ形式の標準化が長年の障壁となっている。とりわけ荷主と運送会社の取引におけるファクス利用率は97%にも上り、依然として大きな課題だ」と問題提起。
これに対し大野氏は、「ファクスをなくすこと自体を目的にするのではなく、受信したファクスをAIで読み取り、データ化して出荷指示へ変換する仕組みを業界全体で進めるべきだ」と述べ、無理に完全な標準化を目指すのではなく、手書き文字などの非構造化データを生成AIで吸収する現実的な解決策を提示。さらに、長年の課題であるパレット化やユニットロードシステムについても、AIやロボットの活用が進むことで標準化への突破口となり得るとの見解を示した。

▲LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長
最後に、今後の展望として「フィジカルAI」がトピックに上がった。大野氏は「フィジカルAIには大きな期待を寄せている。ロボットが現場で滞った際に人間が支援するといった、人とロボットの協働を前提とした運用をマニュアルに組み込むことが、現場への定着と持続可能な倉庫運営につながるはず」との展望を語った。
お盆や正月などに発生する人員不足のような物流現場のリアルな課題に対し、AMR(自律走行搬送ロボット)やAGV(無人搬送車)、ヒューマノイドロボットを活用するフィジカルAIはまだ黎明期にあり、いち早く取り組む企業にこそ大きな機会があるとして、セッションは締めくくられた。
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