イベント日本越境EC協会(JACCA)とLOGISTICS TODAYが5日に開催した「越境EC EXPO 2026」に、ICHIGO(東京都港区)CEOの近本あゆみ氏と、ビィ・フォアード(同)社長の山川博功氏が登壇、「トップセラー成功の軌跡」をテーマに講演した。
扱う商品も顧客も異なる2社だが、それぞれが海外市場で事業を拡大してきた歩みからは、越境ECを一過性の販売ではなく、継続的な事業へ育てるための共通点も浮かび上がった。

▲ICHIGO 近本あゆみ氏
ICHIGOは、日本のお菓子などを詰め合わせたサブスクリプションボックスを海外消費者に販売する。現在までの配送・販売実績は187の国と地域、累計出荷数は400万個。顧客の7割を米国が占める。
近本氏が事業準備を始めたのは2014年ごろ。当時はまだ「越境EC」という言葉も一般的ではなかったが、勤務先だった銀座で外国人旅行者が増えていく光景を見て、日本の商品を海外へ直接販売することに可能性を感じたという。
同時期の米国ではサブスクリプションボックス市場が拡大し始めていた。競合を調べると、日本のお菓子を扱うサービスにも商品品質や配送速度で改善余地があり、そこに参入機会を見いだした。
特長は、ECサイト開発、デザイン、マーケティング、商品企画・仕入れ、梱包・配送準備まで、越境ECに関わる業務の大半を内製化してきたことだ。コストを抑え、その分を商品原価に振り向け、商品品質を高めるモデルを構築した。
コロナ禍では注文が増える一方、国際航空便が止まり「売れているのに届けられない」状況にも直面した。運航を継続できる物流会社へ切り替え、送料上昇に伴い値上げしたが、配送速度の改善が顧客満足度向上につながり、受注も伸びたという。
現在は越境ECに加えてインバウンド事業にも展開。ECで日本文化を海外へ届ける「守り」と、訪日客に国内で体験してもらう「攻め」の両輪で成長を目指す考えを示した。

▲ビィ・フォアード 山川博功氏
一方、ビィ・フォアードは中古車を「世界から世界へ」流通させるプラットフォームを展開し、25年12月期売上高は1609億円に上る。取引先は214の国と地域に及び、売上の半分をアフリカ向けが占める。
山川氏が強調したのは「オンラインだけに頼らない」という考え方だ。購入された車両に大きなステッカーを貼り、顧客にはTシャツを送るなど、現地でブランドを目にする機会を増やしてきた。タンザニアではローカルエージェント、ザンビアでは国営郵便局の拠点を活用し、ネット販売とリアルな顧客接点を組み合わせた。
さらに競争力を支えるのが、長年蓄積した販売データだ。車種、年式、走行距離、仕入れ価格、サイト閲覧状況などを分析し、どの車をどの国で、いくらで販売するかを判断する。山川氏は、サイト自体は競合もまねできるが、蓄積したデータとその使い方は容易に追いつけないとの認識を示した。
物流面では、顧客に確実に車を届けるため船腹枠の確保を重視。受注が足りない時期でも赤字を覚悟して出荷し、船会社との約束を守ることで輸送枠を維持して独自の物流網を構築してきた。目指すのは日本発による中古車販売プラットフォームの標準化だという。
ICHIGOは市場を見極め、内製化で商品の価値を高めた。ビィ・フォアードは現地接点、データ、物流を積み重ねて参入障壁を築いた。方法は異なるが、共通するのはECサイトでの販売をゴールにせず、顧客との接点から販売、物流までを一つの事業として成長への道筋を設計してきたことだ。
越境EC取り組みで問われるのは「海外で売れるか」だけではなく、「海外で売り続け、届け続けられるか」。2社の軌跡は、そのために必要な実践知を示すものとなった。
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