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生活航路への影響を考慮した処分は再発を防げるか

2026年10月6日 (火)

行政・団体東海汽船は5日、山崎潤一社長が10月31日付で辞任すると発表した。関東運輸局が2日に出した処分は、違反点数が事業停止処分の対象となり得る16点を大きく上回りながら、5隻のうち3隻を20日間の使用停止とするにとどめた。競合のない独占航路で、島民の生活交通や物流を担っていることが、その前提にある。生活への影響を考慮したこの処分は、再発の防止につながるのか。(編集委員・刈屋大輔)

前回の処分から再発まで

運輸局は2025年4月、東海汽船に是正命令と輸送の安全確保命令を出した。労働時間の超過と、実施していない操練を実施したと記録していたことが理由で、経営トップ、安全統括管理者、運航管理者が職務を果たしていないと認定されている。当時の違反点数の累計は、東京-八丈島航路が16点、東京-大島-神津島航路が32点、熱海-大島航路が28点と、3航路とも事業停止処分の対象となり得る水準だったが、処分は命令にとどまった。

▲「さるびあ丸」(出所:東海汽船)

その半年後、再び事案が起きる。25年11月と12月に、さるびあ丸が舷門(船体側面に設けた乗降用の開口部)を閉めないまま航行した。運輸局への報告は、11月分が26年2月5日、12月分は未閉鎖で航行した事実が26年1月23日と、いずれも遅れた。26年の元日には大型船で乗組員が飲酒し、検査を受けずに当直に就く者が出た。4月にはジェットフォイル(水中翼で浮上し、時速80キロで走る超高速船)で、アルコール検査を別の乗組員が肩代わりしていた。

8月28日、運輸局は経営トップ、安全統括管理者、運航管理者の職務について、安全管理規程の前回と同じ条項への違反を改めて認定し、安全統括管理者と運航管理者には解任を命じた。山崎社長は9月17日付の改善計画書で、前回の施策は実施の有無を確かめるにとどまり、現場の意識や行動が変わったかまでは見ていなかったと認めた。特別調査委員会の報告書では、山崎社長を含む一部役員が正月期間中の船内飲酒を一定程度認識していたとも指摘された。命令と改善報告という手続きは踏まれたが、それが現場に届いたかを確かめる工程が欠けていた。

事業停止を見送った根拠

今回の処分は、なぜ事業停止にならなかったのか。違反点数は東京-八丈島航路が92点、東京-大島-神津島航路が96点、熱海-大島航路が38点で、いずれも16点を超えていた。運輸局は生活交通への影響を踏まえ、会社の出した改善計画に実効性が認められるとして、橘丸とセブンアイランド結・友の3隻を10月9日から28日まで使用停止とした。軽い処分ではない。解任に続き、3隻が20日間止まる。

この判断は、運輸局の独断でもない。旅客船の処分基準には、事業停止が住民の足を著しく損ねかねない場合、事業者が改善計画を文書で出し、それで安全と利便が保たれると認められれば、停止の代わりに船舶の使用停止などで済ませられる例外がある。乗合バスの基準にも同じ例外がある。トラック輸送の基準は、使用を認めた分を日車数として別に課す仕組みで、改善計画の実効性を条件に使用停止へ切り替える船舶やバスの例外とは設計が異なる。

制度が例外を許すことと、例外が再発を防ぐことは別の話である。独占航路では、事業者が安全を損なっても、利用者が競合他社へ移るという市場の圧力は働きにくい。実際、特別調査委員会の報告書は、競合がなく前例を踏襲しやすい経営環境を指摘した。国と東京都の離島航路運営費補助金は25年に7.9億円が交付され、22年12月期から25年12月期まで、各期の補助金の合計は単体の経常利益と純利益のいずれをも上回る。市場の圧力が弱く、事業停止も生活交通への影響から容易ではない事業者に残る歯止めは、平時の監視しかないのではないか。

再発防止は何で担保するか

処分の軽重と再発の因果は、今回の事例だけでは証明できない。重ければ防げるとも、軽いから防げないとも、断定する材料はない。問うべきは重さそのものより、例外を認める条件が満たされているかである。運輸局は改善計画の実効性を認めたが、前回の改善が定着しなかった会社の計画を、何をもって実効性ありと見たのかは、発表からは読み取れない。

陸の物流には比較の材料がある。国土交通省は25年6月、点呼の不実記載などを理由に、日本郵便の一般貨物自動車運送事業の許可を取り消した。規模も代替手段の有無も東海汽船とは違う。それでも、記録と実態が食い違った点は同じ種類の問題で、処分の重さの差は気になるところだ。

東海汽船は27年3月末までに安全報告書を公表する計画だが、これは会社自身の報告である。処分を軽くした根拠が改善の実効性にあるのなら、その実効性は行政の側でも検証され、外へ示されてよい。補助金の交付と安全の実績を結びつけることも、選択肢になりうる。生活航路を止めないための配慮は、改善が現場に根づいたかを確かめ続けて初めて、再発防止の名に値するのではないか。

東海汽船、行政処分受け山崎社長が辞任へ

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