国際英国で23日(現地時間)に行われたEUからの離脱を問う国民投票の結果、離脱派が僅差ながら勝利したことを受け、物流業界でも輸出入手続きの煩雑化や現地に進出する荷主企業の競争力低下など、悪影響を懸念する声が上がっている。
英国のEU離脱は向こう数年間かけて行われることになるため、物流への影響は不透明な部分が多い。直接的な影響としてはっきりしているのは英国がEUの域外となること、つまり企業が英国で生産した製品をEU加盟国で販売する際、税負担が上乗せされる可能性が高い点や、こうした影響を嫌って同国から生産拠点を撤退させるといったことが挙げられる。
また、EU域内でも市場規模の縮小に伴う貨物量の減少で物流コストが上昇する点も懸念される。域内で中枢を占めるドイツ・フランスの負担が高まり、相対的にEUの競争力が低下しはじめると、英国に続いて離脱を模索する動きが顕在化しかねず、域内であっても「移動の自由」に実質的な制限が生じる可能性もあろう。
一方、日本国内では日欧間貿易に影響を及ぼす可能性が高くなったほか、下期業績予想の下方修正が増えるリスクが考えられる。短期的な物流への直接の影響は限定的なものとなりそうだが、株価や為替レートが激しく動くことで、企業が資金調達しにくくなる局面も予想される。そうなれば、物流拠点の整備計画を見直す動きにつながる可能性がある。
当面は国内の拠点集約需要やEC(電子商取引)市場の成長が物流需要をけん引する流れは継続するとみられるが、中長期的には中国経済が英国のEU離脱の影響を受けて不安定化したり、円高の急速な進行によって訪日外国人旅行者の増加にブレーキがかかり、政府が主導する手ぶら観光の成果を得にくくなったりといった、物流需要を押し下げる要因が考えられる。
再び原油価格が不安定になれば、人手不足に起因する収益悪化要因を燃料安で相殺している物流企業の経営にも影響が及びかねないが、こういうタイミングでこそリスクを過大評価して拙速に動くより、国内外の動向を冷静に見つめつつ、需要・供給・仕入れのバランスに気を配って自社の足もとを固める舵取りが求められよう。