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輸送能力の総量が縮小し始めた

2026年3月18日 (水)

国際海が詰まり、空は増えず、燃料コストが運行を間引く。3つの制約が重なり、世界の輸送能力の総量が縮小し始めている。需要が消えたわけではない。海から空へ、長距離から近距離へ、需要は移動している。だが受け皿がない。能力が足りない局面で次に起きるのは、荷物の選別だ。(編集長・赤澤裕介)

▲輸送能力縮小の構造(3つの制約)(クリックで拡大)

▲物流を取り巻く主要動向(3月17-18日)(クリックで拡大)

海が詰まり、空が受けられない

(クリックで拡大)

ホルムズ封鎖でペルシャ湾の海上輸送がほぼ止まった。コンテナ大手4社は湾岸向けの全便を停止したままだ。紅海ではフーシ派が攻撃を再開し、スエズ運河経由の迂回も使えない。残る選択肢は喜望峰回りだが、輸送日数が10-14日延びる。船の数が減ったわけではない。使える航路が減ったことで、海の輸送能力が実質的に縮小した。

海が詰まれば、急ぎの荷物は空に逃げる。だが空には受け皿がない。中東の空域閉鎖でアジア-欧州の航空貨物ルートはすでに容量がひっ迫している。ドバイ国際空港は17日にドローン攻撃で一時閉鎖され、カタール航空カーゴは運航を停止した。中東経由のシーアンドエアー(海空複合一貫輸送)は完全に機能を失っている。

この状況で新造機の供給も遅れる。ボーイングは17日、商業機部門の黒字化目標を27年に先送りした。737MAXの配線不具合で10機程度の納入が第2四半期にずれ込む。航空機の納入が遅れれば、貨物スペースの拡大は後ろ倒しになる。空域制約で既存機はフル稼働しており、余力がない。

燃料コストの上昇は、残った能力をさらに削る。原油100ドル超が続くなかで、採算の合わない運行は間引かれる。

▲輸送能力を圧迫する4つの制約(クリックで拡大)

4つの制約はばらばらに起きているのではない。海が詰まる、需要が空に移る、空は増えない、燃料が全体のコストを押し上げる。この連鎖の結果、輸送能力の総量が縮小している。船やトラックや飛行機が減ったわけではない。使えない能力が増えている。

コンテナ運賃の反転はこの構造を映している。ドリューリーの世界コンテナ指数は3月5日の週に1958ドル/FEUと前週比3%上昇し、7週連続の下落から反転した。

▲主要コンテナ航路の運賃動向(ドリューリー指数)(クリックで拡大)

運賃が上がったのは、需要が戻ったからではない。使える能力が減ったからだ。ハパックロイドは3月2日以降の全予約に1TEUあたり1500ドルの戦争リスクサーチャージを課した。

能力が足りない局面では、荷物が選別される。船社や航空会社はスペースが限られるなかで、高運賃を受け入れる荷主の貨物を優先する。

▲輸送能力不足で影響を受けやすい企業(クリックで拡大)

運賃を払えるかどうかより、スペースを確保できるかどうかが先に来る局面に入りつつある。

物流事業者にとって最も危険なのは、契約運賃が現実に追いつかない状態だ。燃料サーチャージの計算基準が週次や月次で更新される仕組みでは、日単位で動く原油価格との乖離が拡大する。転嫁が遅れた分は、そのまま持ち出しになる。

日本国内のガソリン小売価格は第11週(3月9日週)で161.80円と前週から3.30円上がった。この数値は開戦直後の原油急騰をまだ十分に反映していない。在日米軍基地の軽油は1ガロン4.919ドルと前週から24%上昇しており、民間市場への波及はこれからだ。軽油の実勢価格と国内物流への詳しい影響は本誌が別稿で報じている。

ホルムズの通航再開には保険・機雷・護衛の3条件が必要で、いずれも満たされていない(本誌既報※)。ボーイングの供給正常化は27年以降だ。喜望峰迂回が常態化すれば、コンテナ船腹の実質稼働率は下がったまま戻らない。能力縮小がいつ解消するか、現時点で見通しは立っていない。

※…海峡再開遠く、物流を止める3つの壁(3月15日)

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