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「勉強不足だった」と本社

身代わり出頭でシモハナ物流の3人逮捕、 業務優先か

2018年2月27日 (火)

事件・事故配送業務中に駐車違反となった運転手の「身代わり」として別の社員がおよそ20回にわたり、警察に出頭していたとして、シモハナ物流浦和営業所(さいたま市緑区)の管理職員ら3人が26日、犯人隠避の疑いで逮捕された。

これを受け、同社は下花実社長の名前で「一部報道で指摘されるような身代わり出頭者への利益供与」とほかの事業所における身代わり出頭事案を否定するコメントを出した。

逮捕されたのは同営業所の営業統括や副所長ら管理職員3人。2015年から17年にかけ、管理職などの運転業務に従事していない社員が運転手の駐車違反を自分が運転していたように偽り、違反処分を受けることで「犯人を隠した」疑いで、埼玉県警に逮捕された。

道路交通法では半年以内に3回の駐車違反があった場合、車両の使用を制限する規定があり、同営業所はこうした車両の使用制限を回避するために別の社員が身代わり出頭していたとみられる。

同社は「浦和営業所での“独自の違法行為”を未然に防ぐような管理ができていなかった」「ほかのエリアでは同様の事実はないことが確認できている」というが、なぜほかの拠点では「ない」と断言できるのか。

取材に対し、同社管理本部は「本社からメールで支店長・営業所長に今回と同様の事案の有無を確認するための連絡を行い『なかったこと』を確認した」と説明、電子メールで調査したことを明かした。

では、同営業所で身代わり出頭が起こった理由は何か。会社として、営業所が「独自」に不正行為に手を染めることを避ける方法はなかったのか。

1度や2度ではなく、15年から17年まで足かけ3年にわたりおよそ20回にわたる不正行為であり、偶発的な事案ではない。しかも、同営業所は14年に開設されてから2年も経たずして、発覚するまでの長い期間、営業所ぐるみで身代わり出頭が行われていたという。不正が常態化していたといえるのではないか。

これらの問いに対し、同社は「いま考えれば、ほかにも会社として取り得る対策はあったかもしれない。勉強不足といわれれば、その通りだ」と、本社が現場を統制しきれていなかったことに無念さをにじませる。

広島に本社を構える同社が関東に進出したのは、11年に神奈川県厚木市へ拠点を設けたのが最初であり、その3年後の14年に浦和営業所がオープンした。同社によると、厚木営業所も浦和営業所と同じ店舗配送業務を手がけているということだが、浦和営業所だけで身代わり出頭が行われたのはなぜか。同社の言い分はこうだ。

「浦和営業所は厚木と同様、首都圏で店舗配送を担っていたが、14年に拠点を新設して業務を立ち上げたばかりだったため、円滑に立ち上げることを優先してしまった」

つまり、関東2拠点目の浦和営業所では「円滑な立ち上げ」を優先し、車両を使用制限されて荷主や会社に迷惑をかけたくないがために身代わり出頭が常態化した、と本社ではみているようだ。

事件が発覚した後のことし1月以降、同社では営業所が駐車違反などの反則金を納付する行為を禁じ、標章を本社に送らせて一括して納付する体制に改めた。また従来からある内部通報制度の周知を徹底し、身代わり出頭があれば積極的に制度を活用して本社に通報するよう呼びかけている。

このほか、再発防止策として駐車禁止違反があった拠点を中心に、ツーマン運行が可能な運行体制を徹底しているという。犯人隠避は犯罪であり、いかなる理由があっても容認されるべきではない。一方で、物流が社会的に重要なインフラとして機能し続けるためには、こうした不正行為が起こりにくい制度を整えることも重要だ。

政府では昨年、「自動車運送事業の働き方改革で直ちに取り組む施策」の一つとして、横持ち・縦持ち時間を削減するために貨物集配中の車両を対象とした駐車規制の見直しに着手することを表明した。

これを受けて警察庁は2月20日、交通局長名で「個々の交通実態等に応じて、安全かつ円滑に駐車できる場所における」という前置きはありながらも、駐車規制の見直しを20年度末までに完了するよう、都道府県警へ通達を出している。