ロジスティクストラックドライバーが倉庫や物流拠点で直面する課題を解決すべく、Hacobu(ハコブ、東京都港区)は「MOVO Driver」アプリ上で物流施設の「軒先情報」の公開を開始した。荷主企業6社と連携して進めるこの取り組みは、2024年問題を受けて高まるドライバー負担軽減のニーズに応えるものだ。
軒先情報とは、物流拠点の出入口や受付場所、構内の待機可否、接車場所、夜間受付の有無など、車両を現地で安全かつ効率的に動かすために必要な詳細情報を指す。これまでは、こうした情報がドライバー同士の口コミや勘に頼られることが多く、初めて訪れる現場では混乱が生じやすかった。

▲Hacobuプロダクト企画本部プロダクトマネジメント部プロダクトマネージャー、小谷方人氏▲
「特に初めて行く現場では『どこに停めたらよいか』『受付はどこか』といった情報が得られず、電話で問い合わせたり、現場で関係者に聞き回るしかない状況だった」と、プロジェクトを主導するプロダクトマネージャーの小谷方人氏は語る。
取り組みの出発点は、現場のドライバー自身の声だった。ハコブが実施した100人以上のドライバーへのインタビューやアンケート調査では、「荷待ち時間の長さ」や「待機場所の不足」への不満が特に目立った。長時間の運転よりも、目的地に到着してから積み下ろしを行うまでのプロセスに対する不満が多かったという。こうした背景から、同社は積み下ろし前の段階での課題解消に注力することとした。
「口コミ情報はあいまいで、『間違っていたらどうしよう』と不安を抱えるドライバーも少なくなかった。中には『毎回電話で確認している』という声もあった」と小谷氏は振り返る。情報が乏しい状態での運行はドライバーのストレスを増幅させるだけでなく、拠点側にとっても電話対応などの工数が増え、双方にとって非効率な状況を生んでいた。
こうした課題に対処すべく、ハコブはアスクル、いなげや、シモハナ物流、大和物流、日水物流、ヤマエ久野の6社と連携し、それぞれの物流拠点に関する正式な軒先情報を「MOVO Driver」アプリ上で公開する体制を構築。将来的には全国2000拠点への拡大を目指す。
「現場に必要な情報を事前にスマートフォンで確認できるだけで、ドライバーの心理的負担は大きく軽減される。到着後に迷う時間がなくなる効果は大きい」と小谷氏は述べる。現在は、口コミ情報との統合管理や、ポイント付与による利用促進、さらに休憩場所の可視化といった機能の拡充も進めている。
この連携を始めるにあたっては、上記6社以外の企業にも提案を行ったという。中には、すでに軒先情報の非公開がドライバーへの負担を増していると認識し、情報公開の準備を進めていた企業もあった。一方で、ドライバーが情報不足により大きなストレスを感じている実態が共有されておらず、現場の倉庫スタッフ以外にはその認識が届いていなかったケースもあったという。
「物流DXといっても、現場で何が起きているのかを知らなければ意味がない。ドライバーの体験や声を起点に設計することで、本当に役立つ仕組みがつくれる」と小谷氏は語る。

▲MOVO Driverの軒先情報(イメージ)。基本情報のほか、マップ上に出入り口や待機場所、積み下ろし場所などを表示できる(出所:Hacobu)
同社によれば、この取り組みは単なる情報提供にとどまらず、「ドライバー・エンパワーメント」の一環として位置付けられている。ドライバーが現場でより快適かつ効率的に働ける環境を、情報技術の力で実現しようという構想だ。
「最終的には、どのドライバーでも迷うことなく、安全に作業できる社会基盤をつくっていきたい。そのために、現場と向き合い続ける」と、小谷氏は力強く語った。
MOVO Driver「物流マップ」公式軒先情報掲載申し込みフォーム
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSf1Pbyk-ni_Mx2BRgPpndYc76-WTjWCoUoNUlK7ngl13hMHwg/viewform
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