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100度以下の廃熱トレーラー輸送、蓄熱実証始まる

2019年7月29日 (月)

環境・CSR新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と東京電力エナジーパートナー、日野自動車、産業技術総合研究所(産総研)、羽村市など官民8者は29日、自治体の汚泥・ごみ焼却場廃熱、工場廃熱などの広域熱利用システムをオフライン熱輸送システムとして市場展開を目指す蓄熱システムの実証実験を開始する、と発表した。

工場やコージェネレーションなどで発生する低温未利用廃熱を、除湿・暖房・乾燥工程などへ適用する定置型システムとしての展開も視野に入れ、高砂熱学工業、石原産業、東京電力エナジーパートナー、森松工業、日野自動車、産総研は2020年2月までに熱利用先の経済性、運用性などを含めたシステム評価を行った後に、除湿・暖房・乾燥工程などへ適用する熱利用システムとして市場展開を目指す。

実証実験は、摂氏100度以下の低温廃熱が利用可能な蓄熱材を12トン利用。蓄熱材は産総研が開発した「ハスクレイ」をベースに高性能化・高耐久化を図ったもので、従来から使用されている潜熱蓄熱材よりも体積当たりで2倍以上の蓄熱が可能だという。

実証では、オフライン熱輸送型と定置型の2通りの蓄熱システムを通年で検証する。オフライン熱輸送型では、日野自動車羽村工場のコージェネレーションシステム(CGS)設備で発生した廃熱を蓄熱材に蓄熱し、工場内の産業空調設備で利用するほか、2キロ離れた羽村市スイミングセンターへ大型トレーラーで輸送し、温水プールの熱源としても利用する。

定置型では、石原産業四日市工場の酸化チタンを乾燥させる工程で、上流側の高温の酸化チタンから発生する熱を蓄熱材に蓄熱し、下流側の比較的低温の酸化チタンへ放熱し乾燥に用いることで、既存の加熱用蒸気の消費量を削減する。

日野自動車羽村工場の天然ガスCGS設備を蓄熱サイトとして、100度以上の排ガスと88度のジャケット温水から熱回収し、蓄熱材に蓄熱する。一方、羽村市スイミングセンターと、日野自動車羽村工場内の産業空調設備の2か所を放熱サイトとして活用。羽村市スイミングセンターでは、プールを温めるための熱源として放熱し、ボイラー燃料の消費量を削減する。日野自動車羽村工場内の産業空調設備では、蓄熱材から高温低湿空気を製造し、空調機の冷水と蒸気の消費量を削減する。

蓄熱材の輸送は、日野自動車羽村工場のCGS設備から2キロ離れた羽村市スイミングセンターへは大型トレーラーで、羽村工場内の産業空調設備へは小型運搬車輸送システムを活用する。

オフライン熱輸送システムの通年(夏期-中間期-冬期)の実証データを取得し、熱効率や省エネ量の評価、天然ガスCGSの100度以上の排ガスと88度のジャケット温水での蓄熱性能の実証、空調設備の熱利用効率を確かめる。

これらの実証試験を季節ごとの実証データを取得しながら20年2月まで実施し、コージェネレーションシステムの廃熱や工場廃熱を除湿・暖房・乾燥工程などへ適用する熱利用システムの技術を確立した上で、市場展開を目指す。