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福井県、AI用い路面の積雪状態判別する技術実証

2020年11月26日 (木)

調査・データSpectee(スペクティ、東京都千代田区)は24日、日本気象協会(豊島区)、福井県と共同で路面状態をリアルタイムに判別する実証実験を行う、と発表した。12月から来年8月にかけ、道路に設置されたカメラより得られた画像から、AIにがリアルタイムに路面の凍結、積雪状態を判別し、通行の安全や除雪作業、凍結防止剤散布作業の実施判断を提供できる仕組みを構築し、作業効率の向上を目指す。

近年では、普段は雪の降らない地域でも豪雪災害に見舞われるなどの雪害が発生しており、特に降雪や気温低下に伴う積雪路面や凍結路面の発生は、車両の事故やスタックを引き起こす誘因となることから、道路管理上の大きな課題となっている。

福井県では2018年2月の豪雪で立ち往生車が発生し、国道8号に1500台もの車両が長時間にわたって滞留する事態となったが、冬季の防災情報に対する計測機器は高額だったり、技術的に開発途上であったりという理由で、人の目に頼らざることを得ないのが実情だった。

日本気象協会とスペクティは19年からカメラ映像に着目。AIを使って冬季の防災情報を取得し、路面状態を判別する技術を福井県内の路面状況確認カメラに応用。精度検証を目的とした実証実験を行う。

出所:スペクティ

これまでは計測機器が設置されている箇所の情報しか得られなかったが、広範囲に設置されたカメラ画像を用いてAIで判定することで、路面状態の面的な分布が得られることから「より網羅的な実況把握が可能になる」という。

スペクティでは「実証実験により詳細な路面状態をAIでリアルタイムに把握することを可能にし、福井県だけでなく全国に展開して道路管理者や自治体など、道路管理や防災事業に関わる事業体での適切な道路管理や通行や自動運転の推進に役立ててもらえることを目指す」としている。

地道な実証実験こそが基本

物流業界と新たに関係が生まれている業界は増え続けている。新しい友とも呼べる各社からもたらされる知恵や利器は有効性やコスト効果だけなく、今までの思い込みや諦めを払拭してもくれる。

路面状態の正確な把握は、距離や車両の種別を問わず、走行における基本中の基本だ。地面に不安がないからこその陸運業務であることなど誰もが承知しているが、「支障なく走行できること」があまりに日常化しているため、ひとたび降雪や暴風雨や土砂災害などに見舞われると、対処までの混乱収拾で時間や労力を激しく消耗してしまう。この数年だけを切り取っても、立ち往生や対応までの所在なき停滞などは数多い。

見えない状況や状態を聴き取りで想像して判断する不安やもどかしさは、経験者なら誰もが繰りかえしたくない記憶だろう。可視化とデータ集積による進化を低コストで実現できるというこの方式への期待は大きい。(企画編集委員・永田利紀)