調査・データSpectee(スペクティ、東京都千代田区)は14日、日本気象協会(東京都豊島区)と福井県の2者と共同で、2020年から実施している路面状況確認カメラ画像の解析と気象条件を組み合わせたAI(人工知能)解析による「路面状態のリアルタイム判定」の精度向上を図る実証実験を実施すると発表した。
積雪や凍結などの路面状態を正確に把握することで、物流トラックなど車両の安全な走行を支援するとともに事故発生の防止につなげる。雪のシーズンを迎えて、福井県民向けサービス運用を目指すため、さらなる精度向上と路面状態予測技術を組み合わせた実証実験を行う。さらに、カメラの地点数を大幅に増やして判定精度を高める。
今回の実証実験では、従来の画像判定に加えて、日本気象協会が所有する気温や降水量などの気象データを組み合わせることで、カメラだけでは判別が難しい状況での精度向上を図る。また実証実験で使用するカメラの台数をこれまでの3台から20台へ増やす。
福井県では近年、冬期の豪雪による雪害や大規模な車両のスタックが発生。18年2月の豪雪では、立ち往生した車両が多く発生したことにより、主要道路である国道8号で1500台の車両が長時間にわたって滞留したほか、県管理道路でも複数の車両でスタックが発生するなど、県内の道路交通に大きな障害が生じた。道路上の積雪や凍結路面の発生は、交通事故や車両のスタックを引き起こす誘因であり、道路管理の大きな課題となっている。
道路管理者は、主にカメラを見ることで路面状態を確認しており、福井県では200台のカメラを設置しているものの、広い範囲に設置されたカメラを常時確認することは困難だ。この課題を解決するために、Specteeと日本気象協会が共同開発したAIによる路面状態判別技術について、福井県内にあるカメラ3台を用いて実証実験を行い、その精度を検証。大雪時でも、AIが路面状態を24時間絶え間なくリアルタイムで解析した結果、特に日中では人の目による判別結果と遜色のない路面状態判別が実施できた。一方で、夜間やカメラのレンズに雪が付着した場合のように、人の目でも路面状態の判別が難しいような状況では、路面状態判別の精度が低下するという課題も明らかになていた。
今回の実証実験では、カメラだけでは判別が難しい状況での精度向上を図るため、日本気象協会が所有する気温や降水量などさまざまな気象データを組み合わせることにより、より精度の高い路面状態判別を行う。カメラ画像と気象データの「ハイブリッド解析」により、これまでAIの画像解析だけでは判別が困難であった「凍結」と「湿潤」を正確に判別できるようになると期待する。この実証実験を通じて、ハイブリッド解析による日中・夜間を問わず路面状態のリアルタイムで正確な把握を目指す。