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大型タンク車による2人死亡多重追突事故の報告書で

事故調、先進運転支援「開発への積極的な支援を」

2021年2月1日 (月)

調査・データ国土交通省はこのほど、2018年2月13日に北海道当別町で2人が死亡した大型タンク車による多重追突事故について調査報告書を公表した。

(出所:事故調査報告書)

報告書を作成した事業用自動車事故調査委員会は、事故の背景にドライバーの「脇見運転」と事業者による「指導不十分」があったと推測し、再発防止策としてドライバーの意識改革と指導の強化を列挙。加えて、事業者が国の補助制度を使って安全運転支援装置を導入することや、行政が装置の開発を支援することを求めた。

この事故は、時速60キロで直線道路を走行していた大型タンク車が、ほとんど減速することなく信号待ちの軽自動車に追突し、押し出された軽自動車が前方の別の大型タンク車に追突したもの。軽自動車は大型タンク車2台に挟まれ押し潰される形で大破し、乗車していた2人が死亡。前方の大型タンク車の運転手1人も軽傷を負った。

▲位置関係図(出所:事故調査報告書)

追突した車両の運転手は、事故前の走行中の状態について「眠気はなかった。事故地点の手前上り傾斜から下り傾斜になったあたりから無意識に進行方向遠方の山並みを見ながら走ってしまい、以前住んでいて懐かしいなどと思っていた直後、前方で停止していた軽乗用車に気づいたが、ブレーキペダルを踏んだ感覚もなく追突してしまった」と述べており、また勤務状況や事業者の点呼にも問題がみられなかったことから、警察は居眠り運転ではなく前方不注意(脇見運転)で送致した。

(出所:事故調査報告書)

調査報告書では運転者について「通り慣れた、距離が長い直線道路のため、遠くの山並みに注意が移り、脇見運転などになった可能性」があると指摘。事業者に対しては「通り慣れた長い直線道路では単調な運転が続き、注意力が散漫になりがちになることを認識させる指導が不十分」だとして、適切な指導の必要性を強調。

また事故の背景として、適性診断の結果で「交通状況をよく見ようとする積極的な姿勢が不足している」ことなどを運転者が理解し、運転に反映されているか確認が不足していたとした。

再発防止策としては「運転者は貨物を安全、確実に輸送することが社会的使命であることを意識」すること、事業者には「注意力が欠如した状態での運転に重大な危険性があることを理解させ、長く単調な運転が続く場合には休憩を取るよう運転者に指導すること」「適性診断結果を伝達するだけでなく、運転の改善に取り組むよう継続的に指導すること」を求めた。

加えて、「これまでもこの種の事故が多発している」として、今後は「IT技術や先進運転支援技術を使用して、運行管理者や事業所から運転者に対して、道路状況、運転状況等に合わせた具体的な注意や指示のメッセージを自動的に配信するなどの装置の開発や実用化も望まれる」「行政からも開発への積極的な支援を期待したい」とコメントした。