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東北運輸局、運送事業者に事故調の報告活用呼びかけ

2015年8月25日 (火)

ロジスティクス東北運輸局は、事業用自動車事故調査委員会(自動車事故調)がまとめた報告書に掲載されている再発防止策を活用し、同種の事故の予防に取り組むよう運送事業者に呼び掛けた。

昨年6月に発足した自動車事故調は、2014年に発生した重大事故2件を対象に事業用自動車事故報告書をまとめ、原因の調査・分析に基づいて再発防止策を提言。

これまでに公表されているのは、トラクタ・コンテナセミトレーラの横転事故と大型トラックの積載物(劇物)落下漏洩事故の2件で、東北運輸局では、2件の事故の概要と原因、再発防止策のポイントをまとめ、事業者に活用を促している。

■詳細

トラクタ・コンテナセミトレーラの横転事故
≪事故の概要≫
2014年7月15日2時45分頃、コンテナセミトレーラをけん引したトラクタが新潟県小千谷市の国道17号線を走行中、高架橋上で、道路左側の縁石を乗り越えた後、ハンドルが右に切られて再び走行路に戻ったものの、バランスを崩し左側へ横転しながら道路右側に向かって進行した。横転の際、トラクタ前部が道路右側のガードパイプや構造物を突き破り、この運転者は車外へ放出され7メートル下の国道に転落し死亡した。
≪原因≫
事故は、この運転者が、休息期間を十分にとらずに運転するなどにより、疲労が蓄積した状況になったことで前方不注意の状況に陥り、事故に至った可能性が考えられる。

この運転者が車外に放出されていることから、この運転者はシートベルトを装着していなかったことが推定され、そのことが影響して7メートル下の道路に転落して死亡に至ったものと推定される。

また、事業者での運行管理が不十分であったことにより、この運転者の疲労が蓄積されたほか、この運転者での安全運転の意識徹底が図られず、事故につながった可能性があると考えられる。
≪再発防止策≫
1 事業者の運行管理関連の対策
1.1 運行管理関連の法令順守の徹底
・事業者は、運転者の運行実態を把握し、改善基準告示の順守を徹底する必要がある。
・運行管理者は、点呼で、業務に必要な指示伝達事項だけでなく、運転者の休憩地点、休憩時間に関し適切に指示するなど安全な運行に必要な運行指示をして、指示事項を運転者に順守させる必要がある。
・事業者は、運転者に対し適性診断を受診させるだけでなく、診断結果を確認し、問題点がみられる運転者に対しては個別に指導を行う必要がある。

1.2運転者教育の充実
・事業者は、運転者に対して改善基準告示の順守、シートベルト装着の徹底、危険予知訓練やヒヤリハット体験を活用した実践的教育に積極的に取り組む必要がある。
大型トラックの積載物(劇物)落下漏洩事故
≪事故の概要≫
2014年8月7日5時29分頃、この運転者は、過酸化水素水入りポリタンク(400個、1個あたり20l)を積載した大型トラックで大分県臼杵市の国道10号線を走行中、荷台左後方から積荷が落下する音に気づき、後写鏡を見たところ、荷崩れを起こしポリタンクが落下しているのを確認した。この地点は右カーブで急激に減速すると落下が拡大する恐れがあるため、ゆっくりと減速し路肩が広い場所に停止した。
また、後続車が、落下したポリタンク3個を車両下部に巻き込み、この車両の前方で停止した。

この事故でポリタンク400個中20個が路上に落下し、そのうち17個は少量の液漏れを起こし、後続車下部に巻き込んだ3個(60l)は過酸化水素水全量が路面に漏洩した。
≪原因≫
事故は、荷崩れを起こしやすく、荷崩れしたときに荷台から落下しやすい積み付け状態で運行したため、発生したものと考えられる。また、曲線区間を速度超過で運行したことも、荷崩れの一因になった可能性が考えられる。

この運転者は、過去にも同様の状態で走行していることを理由に問題ないと考えており、積み付け方法や速度超過による影響関連の正しい知識を保有していないことが今回の事故の原因につながったものと推定される。
≪再発防止策≫
事業者の運行管理関連の対策
1 運転者教育の充実
事故には事業者による運転者に対する指導・監督が大きく関与しているものと考えられることから、事業者は日頃から運転者に対して「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導、監督の指針」(告示)に基づく指導を行うとともに、通常と異なる事態に直面したときの対応など、参加型の教育などによって運転者などが主体的に議論するような場を設けるなど、運転者の安全に対する意識の向上と、知識の取得を進める必要がある。

1.1 安全な速度の維持
事故は曲線区間を、制限速度を超える60キロ/hから70キロ/hの速度で運行していた時に発生したことから、不適切な速度がその要因になったと考えられる。速度超過は、遠心力が大きくなる、停止距離が長くなる、衝突時の衝撃力が大きくなるなど、運転にさまざまな悪影響を与え事故の大きな原因となることから、運転者教育で速度超過の危険性や、安全運行のための交通ルールを理解させるととともに、速度超過に起因する事故事例を説明するなどにより、転者に理解させることが必要である。

1.2 積み付け、固縛
事故は、通常と異なる積み付けでの運行時に、この運転者が何らの疑いも持たずに、過去の経験から、荷崩れを起こしやすく、荷崩れしたときに荷台から落下しやすい積み付け状態で運行していたことから起きたものと考えられる。
事業者は、積載する貨物の品目、荷姿を考慮して、車両を選択する必要がある。
また、運転者に対しても、取り扱う貨物の種類や形態に関して積み付けに関する知識を日頃から教育する必要がある。

1.3 毒劇物貨物の適切な取り扱い
毒物、劇物取締法施行令で、毒劇物を車両により運搬する場合には、容器又は被包が落下し、転倒し、又は破損することのないよう積載されていることが基準とされている。よって、毒物、劇物を取り扱う事業者は、その運搬を行うに当たって、運転者に対してこの基準など、関係法令の順守はもちろんのこと、積載する毒劇物の特性や、これを積載する容器の取扱いに対しても留意点をまとめ、適切な取り扱いを行うよう、周知徹底を図ることが必要である。

1.4 運行管理者のスキルアップ
運転者に対して安全な運行をさせるためには、運行管理者自身が、毒劇物などの輸送に関して専門の知識を有している必要がある。
取り扱う貨物、それぞれに合った指導・監督ができるよう、その特徴や運搬方法の知識を身につけるとともに、速度超過の危険性や、遠心力などの影響も、もう一度基本に立ち返り再確認することが本事故の防止には重要であると考えられる。

2 点呼時の注意喚起
本件は、運行管理者がこの運転者に対して積載物品のみ指示し、劇物であること、積み付けなどに関することも含め何らの指示もしていなかったため、この運転者は、過去の経験から独自の判断で積み付けを行い、その結果、事故に至ったものと考えられる。
同種事故の再発防止するため、事業者は運行管理者に対して、通常と異なる車両を使用して運行する際の注意を、点呼時などに実施するよう指示するとともに、運転者の独自判断を排除するための具体的な取り組み、組織的な取り組みを進めることが必要である。
また、運行管理者は点呼時に劇物など輸送時の注意点、非常時の対処方法、運搬中に荷崩れが生じないような貨物の固縛方法を意識的に指導するとともに、運搬関連の主な道路、交通状況や注意するか所をあらかじめ把握させるよう指導する必要がある。