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論説/東ト協が男性限定助成、業界が誤解されかねぬ

2021年4月1日 (木)

話題東京都トラック協会が1日、事業開始を発表した「男性ドライバー免許取得助成事業」。男性ドライバー限定で、トラックの運転に必要な免許取得費用を1人につき5万円を助成する制度で、2020年度からスタートし、21年度で2期目になるという。

(イメージ図)

東ト協ではこの事業と別に「女性ドライバー免許取得助成事業」という女性限定の制度も設けている。こちらは助成額が「取得価格の3分の2」と男性限定の制度に比べて助成額が大きいものの、恒久的な仕組みとして進められる予定の男性限定制度に対し、5年間の限定措置(21年度で3期目)として実施される。

女性の積極的な雇用を促し「女性ドライバーの人材確保を図る」という社会の動きに合致しているという点で、女性ドライバーを増やすための助成事業は理解されやすいだろうが、男性限定という助成制度はどのような趣旨で行われるのか。

こうした疑問に対し、東ト協は「女性限定の助成制度があるのに、男性限定はないのかという声に対応したもの」と説明する。「なぜ女性向けしかないのか」という声に対して、この措置の趣旨をきちんと説明すればこと足りると思われるが、では男性向けの助成制度も作ります——という対応は、トラック運送業界の姿勢が誤解されかねない危うさを伴う。

しかも、女性限定が5年間の時限措置であるのに対し、男性限定の制度は恒久的に続くことを想定しているという点で、期限が来れば男性限定の制度のみが残る。女性限定制度との「バランスを取る」という趣旨で別途、男性限定のものをつくったというのは、やはり「トラック運送業界の体質の古さ」を示している。

この点について、東ト協は「当初は性差別ではないかという声もあったが、次第にそういう意見は減ってきている」として、今後も男性限定の免許取得助成事業を取りやめる考えはなさそうだ。

(イメージ図)

さまざまな意見はあろうが、業界団体として会員運送事業者を代弁する立場にあるトラック協会が男性限定の助成事業を打ち出すというのは、女性の活躍推進に異を唱えているようにもみえる。さらに話を進めると、「男性限定」の措置を打ち出した一因には「女性の制度利用が進まなかった」という事情があることもわかった。

トラック運送業界は長らく「男社会」であるのは衆目の一致するところであり、ドライバー不足が続くなかで女性ドライバーを増やしたくても思うように増やせないのであれば、「女性に限定しない助成制度」を打ち出すのはわかる。とはいえ、男性に限定しなければならない合理的な理由にはなりえない。対象を男性に限定しなければいいだけである。(赤澤裕介)

東ト協、人材確保支援へ運転免許取得助成事業