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帆船型ドローンで貨物輸送テスト成功、離島物流想定

2021年4月27日 (火)

調査・データ風力を動力とした帆走の自動化技術を持つエバーブルーテクノロジーズ(東京都調布市)は27日、2メートルクラス帆船型ドローン「タイプAプロトタイプ」を用いて逗子湾を横断する貨物輸送の実証テストに成功した、と発表した。離島や災害で孤立した沿岸部の市町村への物資輸送用途などを想定している。

実証テストは、離島への貨物輸送、大雨や台風、地震などで引き起こされる土砂災害で道路が分断され孤立する沿岸部の市町村に救援物資を届けることを想定し、神奈川県葉山町の小浜海岸から逗子市の逗子海岸までの1000メートルを無人で自動帆走し、成功した。

当日は救援物資、医薬品に見立てたプリンを保冷剤とともにクーラーバッグに収め、タイプAプロトタイプのカーゴエリアに搭載。小浜海岸の海水面上にタイプAプロトタイプを浮かべた後、遠隔で自動モードに切り替えた。その後は自動帆走技術によって帆と舵を自動制御し、あらかじめ設定された航路に沿って風力だけで逗子海岸のヨット利用エリア前に到達、位置を保持したことを確認した。

今回の実証テストで使用したドローンは、同社が2020年に開発した2メートルクラスの無人操船ヨット(帆船型ドローン)の実証機として、これまで機動性テストや滞在型テスト、長時間稼働テストを行い調整してきたもので、21年1月から逗子市の協力で逗子海岸の湾内で船体の動作確認や、あらかじめ設定したウェイポイント(経由地)に沿って移動させる自動航行——などを実施していた。

離島への物流は定期フェリーなどの動力船を利用するのが一般的だが、利用者の減少、燃油代の高騰で収益性が悪化し、労働者の確保も困難になるなど、事業環境がさらに厳しい状況になるとみられている。そこで、同社は無人操船ヨット技術によって、離島への物流が「人件費と燃油代を大幅に削減し、ほぼゼロにすることが可能で収益性を大幅に改善することができる」と着想。

港湾施設がない場所でも砂浜に着岸できるため、輸送の自由度が向上し、陸上で貨物列車のターミナル駅とトラック便による個配が棲み分けているのと同様に「沿岸部の必要な場所へ直接届けることが可能」だと指摘する。また、積載量の面でも飛行型ドローンより大型で多くの飲料水、米穀、食料品といった重量物のほか、トイレットペーパー、おむつなどのかさばる日用品の運搬に適していると説明し、「輸血用血液など急を要するものは飛行型ドローン、重量物や日用品は船舶型といった使い分けをすることで、災害時、効果的に対応可能だ」としている。

同社は今回の実証実験の成功を受け、開発中の5メートルクラスヨットを利用して100キロの貨物輸送実験を今夏にも実施する方針で、飛行型と船舶型ドローンのハイブリッドとなる「タイプP」の研究開発もシンガポール国立大学と共同で進める。

タイプAのドローンは、ヨットレースの最高峰「アメリカズカップ」のレース艇や商船設計を手がけるACT(アクト)創業者の金井亮氏が無人ヨットに最適なトリマランとして基本設計、現役カーデザイナーなど多彩なバックグラウンドを持つ専門家がリファインして3Dプリンタを利用して造形したという。現在は、本格的な導入に向けて量産型の設計を行っている。