ロジスティクス国土技術政策総合研究所(国総研)は8日、ことし3月23日にスエズ運河内で2万TEUの大型コンテナ船「エバーギブン」が座礁し、1週間にわたり運河を閉塞させた事案を受けた研究資料「国際海上物流のホットスポットの通航貨物量・価値及び閉塞による経済影響の推計」を公式サイト上で公開した。海上物流において貨物船が集中する、国際海峡・運河などの「ホットスポット」への依存度が年々高くなっていることから、運河の閉塞による影響の全容把握には時間がかかると指摘している。
資料では、3月のスエズ運河閉塞による直接損失額が460億米ドル(5.1兆円)、波及効果を含めた損失額は1260億米ドル(13.9兆円)に上る推定などを示したうえで、「ホットスポットが世界貿易・経済のアキレス腱であると指摘してきたが、これが現実のものとなった」と指摘。また「幸い、一週間弱で閉塞が終わったためそれほど大きな影響が出ていないようにも見られるが、輸送途上の貨物が届くまでにタイムラグがあり、影響の全体像の把握にはなお時間を要するだろう」との見解を示している。
今回のスエズ運河の事案では、通行再開時の待機船は422隻に上り、運河が平常の状態に戻るまで10日から2週間程度を要した。影響を受けたコンテナ貨物の、欧州やアジアへの到着は4月中旬以降となり、アフリカ南端の喜望峰迂回ルートを選択した貨物船は、結果的には運河で待機していたより長い日数を要していた。運賃高騰を受けて、一部では航空や鉄道による代替輸送も実施された。