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貿易コンソーシアム参加相次ぐ、効率化機運高まる

2021年9月13日 (月)

ロジスティクス貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz」(トレードワルツ)を運営するトレードワルツ(東京都千代田区)は13日、事務局として運営している「貿易情報連携効率化・普及に向けたコンソーシアム」(貿易コンソーシアム)の参加企業が65社になったと発表した。ことし6月23日以降、新たに物流企業や商社、メーカーなど14社が新たに加入。貿易実務効率化への高い関心が見て取れるとともに、いわゆる貿易情報プラットフォームの「業界標準」整備に乗り遅れまいとする企業の思惑も垣間見える。

貿易業務において、企業や業態をまたぐ情報連携には未だ紙書類やファクス、スキャンPDF付メールなどのアナログ手続きが存在し、効率化の支障となっている。こういった課題をブロックチェーン技術で改善するため、貿易コンソージアムを結成。2017年8月30日より、エヌ・ティ・ティ・データが事務局として貿易業務に携わる18社の企業とともに活動してきた。そこで貿易業務の電子化における課題抽出や実証実験を重ねて構築したのが、貿易情報連携プラットフォームのトレードワルツだ。

2021年4月からはトレードワルツが新たな事務局となり、業界を横断する40社とともに、新たな貿易コンソーシアムを発足。トレードワルツを軸に据えつつ、社会へ貿易電子化の普及を推進している。

新興国の経済発展や新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済停滞からの回復により、日本と世界各国との貿易は今後も拡大を続けると予想される。トレードワルツは今後、国内物流会社への普及と新たな物流DX(デジタルトランスフォーメーション)サービスの検討へ着手する。参加する物流企業にとっても、国際貨物輸送ビジネスなどでより効率的なサービスの実現に向けた取り組みを推進できる利点がある。今後も、物流企業と物流DX関連企業との連携も広がりそうだ。

貿易情報の「業界標準」策定につながるか

貿易コンソーシアムを取り巻く動きが、にわかに慌ただしくなっている。物流や商社、メーカー企業で参加を表明する動きが加速しているほか、貿易情報連携プラットフォームのトレードワルツを運営するトレードワルツへ資本参加する企業も出てきた。背景には、貿易コンソーシアムが取り組む各種貿易手続きの完全電子化が、将来の業界における「業界標準」になると予測して、先手を打っておく思惑が浮かぶ。

貿易手続き業務は、意外なほどにデジタル化が遅れている領域だ。業種を超えた情報連携については特に顕著で、ここ数十年でほとんど業務スタイルが変わっていないと言われている。裏を返せば、貿易ビジネスで国際競争力を確保するために、何としても改善しなければならない部分である。貿易ビジネスを強化したい企業としては、ここで貿易コンソーシアムの動きに足並みを揃えることで、将来の「業界標準」化に乗り遅れまいとする狙いがあるのは間違いないだろう。

そこには、貿易業務の自動化推進という大きな仕事があるわけで、当然ながらビジネスチャンスも転がっている。さらに長い視点で見れば、貿易業務の効率化が及ぼすプラス要因は、貿易ビジネスを超えて産業界全体にも波及するはずだ。ここは、物流や商社が主導的な役割を果たしながら、産業界全体で「業界標準」の整備を進めていくべきではないだろうか。世界における貿易領域の「ガラパゴス化」を避けるためにも、コロナ禍による経済停滞から回復してきている今こそ、絶好の機会ではないか。(編集部・清水直樹)