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東海電子開発のアルコール・インターロック装置

販売2800台突破、トラック業界から飲酒ゼロ目指せ

2022年1月5日 (水)

環境・CSRアルコール検知システムを手がける東海電子(静岡県富士市)は、検知されるとエンジンがかからない飲酒運転防止システム「呼気吹き込み式アルコール・インターロック装置」が販売開始から13年間で累計2800台を超えたと発表した。同時に、飲酒運転ドライバーは年間2万人と高止まり傾向が続いていることから、同社は国に飲酒運転ゼロ実現に向けて、トラック業界から変革を目指していく提言などを通して、同装置の法制化を求めている。

2009年9月から販売が開始された同装置は「検知したら車が動かない」という強制力があるのが特徴だ。車内に搭載された装置にドライバーが呼気を吹き込み、アルコールが検知されると警告音が鳴り、エンジンが始動しないしくみだ。

エンジン始動前と運転中にチェックが要請され、データが記録されることで、飲酒運転発生のリスクを確実に減らすことができるとしている。

■アルコールインターロック装置紹介動画(出所:東海電子)

飲酒運転ゼロを目指した国の取り組みをめぐっては、11年の道路交通法改正で、運輸事業者のアルコール検知器保持が義務化されている。それに先だち定められた「事業用自動車総合安全プラン2009」では、飲酒運転根絶の項目に「アルコール・インターロックの普及」についても触れられており、運輸事業者の徹底した飲酒運転対策が求められていた。

ところが、義務化から10年がたった現在も、トラックドライバーの酒気帯び運転は下げ止まり状態が続いている。昨年6月には、千葉県八街市で飲酒運転のトラックが小学生の列に突っ込み5人を死傷させる事故が発生。

(イメージ)

トラックが、すでに検査が義務付けられている「緑ナンバー」ではなく、「白ナンバー」だったことに注目が集まった。再発防止のためにも今年10月から白ナンバートラックにも安全運転管理者選任事業所に対し、検知器使用が義務付けられるという強化策へとつながった。

同社によると、千葉県八街市での事故を境に、トラック事業者からの同装置への問い合わせが増え、販売開始から21年までに累計2862台が普及した。

同社は、アルコール・インターロック機能を備えた装置のさらなる普及を求めたほか、すでに欧州を中心に普及が進んでいる事例をかんがみ、警察庁や公安委員会、国交省に対し、装置の法制化を求める提言を行った。

1. 警察庁運転免許局および各都道府県公安委員会は、飲酒運転をした者に対し、運転免許停止後も運転の意思があり、自己車両所有者である場合、アルコールインターロック装着を命ずることができる。また、事業用自動車による飲酒運転の場合、運輸支局長は、事業者に対し、全車両のアルコール・インターロック装着を命ずることができる。

2. 装置装着を命ぜられた個人および事業者は、期間中、全車両のインターロックデータを1か月ごとに運輸局に提出し続けなければならない。2年間装着されたアルコール・インターロックのメモリに、酒気帯び検知の履歴なきことを条件として、アルコール・インターロック装置の装着を解除する。

3. アルコール・インターロックの装着費用は、行政罰とみなし、本人事業者の自己負担とする。

4. すべての飲酒運転違反者に対し、auditを実施し、かつ、アルコールに関する研修受講を義務づける。

同社は法制化にあたり「プロドライバーの飲酒運転ゼロの実現なくして、年間2万件以上もある日本の一般ドライバーによる飲酒運転ゼロ実現は、不可能であると考えている。運輸行政は決して、悪意ある市井の飲酒運転者に『プロドライバーでさえ飲酒運転している』と言わせない政策を実現すべき」と運送業界からの変革を起こしていきたいとしている。

東海電子の提言、これは運輸業界への「最後通告」だと捉えよ

飲酒運転防止システムメーカーが、当局にアルコール・インターロック装着を提言する。製造業としての利潤追求を超えた、社会からの飲酒運転の撲滅を企図した東海電子の取り組みは、こうした機器メーカーだからこそ示せる提言のあり方を示した意味で、非常に意義深い。裏を返せば、運輸業界が自ら飲酒運転を律するに至っていない現状をも浮き彫りにしている。

日本における飲酒運転取り締まりは、ようやく厳罰化の動きがみられるようになってきたものの、依然としてドライバーの自覚に委ねられているのが実情だ。こうした「性善説」では、もはや飲酒運転の撲滅は、もはや期待薄だ。こうした意識が再燃してきた契機が、昨年6月の千葉県での事故だった。

残念ながら、飲酒運転は繰り返す傾向が強いとされる。人間の性と言えばそれまでだが、二度と飲酒運転をしないというケジメを、システムの力を借りてでも実行する。それがドライバーには必要なのだ。ましてやプロドライバーならなおさらだ。東海電子の装置法制化の提言は、飲酒運転撲滅を訴えているだけではない。自律して撲滅を実行できない運輸業界への最後通告でもあるのだ。その点を肝に銘じて、トラック運行管理を徹底してほしい。新年、ちょうどよいタイミングだ。(編集部・清水直樹)