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北九州市、「物流拠点都市」の実現に向けた構想策定

2022年1月7日 (金)

▲物流拠点都市構想のイメージ(出所:北九州市)

行政・団体北九州市が、物流拠点化に向けた取り組みを本格化させる。「北九州市物流拠点構想」を策定し、素案に対する意見募集を民間事業者や市民を対象に始めた。かつて四大工業地帯の一角として日本の経済を支える存在として発展した北九州市は、新たな目玉産業として物流に着目。構想の実現に向けた動きに注目が集まりそうだ。

北九州市が物流拠点構想を発案した要因は、「交通の要衝」「産業集積」の2点だ。九州の玄関口として発展した経緯から、北九州市は鉄道や道路、港湾、航空の交通機能の結節点にあり、九州各地だけでなく全国、さらには中国など海外へのアクセス性の高さは、全国の政令指定都市のなかでも屈指と言える。

さらに、こうした交通事情や雇用確保の優位性を背景とした産業立地も進展。大手自動車メーカーが関連工場を置くほか、半導体や素材・部品などを中心とした産業の製造・開発拠点が集積しており、環境・エネルギー関連産業の進出も相次いでいる。

北九州市は、このような地理的・経済的な産業立地の観点から、経済活性化を実現する戦略として物流拠点化を発案。発展を支えた北九州工業地帯の相対的な地位が低下している現状を踏まえて、産業都市としての再興を図る狙いもある。

(イメージ)

北九州市が策定した物流拠点構想は、「陸・海・空の結節点周辺エリアを中心に、物流関連施設の集積を図る」「各種輸送モードを組み合わせ、多種多様な物流ニーズと時代の変化に対応できる街」を物流拠点として目指す姿と位置付ける。

具体的には、北九州港と北九州空港の国際物流拠点化▽九州エリアの物流集約拠点の形成▽九州・西中国エリアへの配送拠点の形成▽物流基盤を活かした成長産業の拠点形成▽産学官連携による物流施策推進体制の構築――の5点をリーディングプロジェクトに設定。物流効率化や生産性向上、強靭で持続可能なグリーン物流ネットワークの構築、次世代物流の実現などの方策について、北九州市の強みを生かしながら拠点化することで、物流産業の集積都市として存在感を高める考えだ。

北九州市は、1月19日まで意見を募集。募集要項はウェブサイト(https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000958227.pdf)を参照。

北九州市の物流拠点構想、地方経済の持続的な成長モデルになれるか

北九州市が、「物流」で経済都市としての地位を再び獲得しようとしている。物流事業の生命線である交通インフラの優位性と親和性の高い産業として、将来の持続的な成長を見込める物流ビジネスに着目した。構想が具現化することになれば、物流が地方拠点都市の経済を支える「原資」となるモデルケースとなりそうだ。

北九州市の物流拠点構想は、国内のみならずアジアにも視野を広げている。北九州市を含む北部九州は、アジアの窓口として経済的な交流が深い土地柄だ。中国や韓国を舞台としたアジア物流ハブとして北九州市が存在感を発揮する――。そんな時代が将来やってくるとしたら、地方経済の活性化策の成功例としては満点回答と言えるだろう。

北九州市は、全国における経済ポテンシャルの相対的な低下に危機感を抱いたところから、物流拠点構想に行き着いた側面が強い。北九州市の他にも、全国には経済活性化を何らかの産業誘致で実現したい自治体が少なくない。物流拠点は、全国に点在しネットワークを構築することで、より高い機能を発揮する産業だ。海外を含めた複数の都市が相互連携で物流ネットワークを構築すれば、東アジアでの物流ハブの誕生にもつなげられないか。地方発の壮大で具体的なデザインが、官民との連動して実現できれば、世界とも十分勝負できる取り組みとして機能するはずだ。(編集部・清水直樹)