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日本郵船、上野グループの内航タンカー会社に出資

2022年1月27日 (木)

M&A日本郵船は27日、総合物流企業の上野グループホールディングス(HD、横浜市中区)傘下の内航タンカー運航会社、上野トランステック(同)の株式を10%取得すると発表した。

日本郵船と上野グループは、気候変動問題への対応としてカーボンニュートラル社会の実現を目指す機運が高まるなかで、既存のエネルギー供給を輸送面で支えながら脱炭素化の取り組みを推進している。その実現に向けた土台として、船員の労務負担の軽減や運航業務の補完、継続的なサービス品質の確保に向けた自律運航船をはじめとする先進船舶開発に取り組んでいる。

このたび、両社はこうした課題の解決に向けた外航・内航海運分野を横断する協力体制の構築を推進するため、日本郵船が上野トランステックへ出資することで合意した。

▲(左から)日本郵船代表取締役社長長澤仁志氏、上野グループホールディングス代表取締役社長COO上野元氏(出所:日本郵船)

両社は今後、水素・アンモニアといった次世代エネルギーの日本国内におけるバリューチェーン構築や、自律運航船・ゼロエミッション燃料船などの先進船舶の開発にかかる協業を検討していく。

海運業界に求められる「次世代エネルギー供給の担い手」としての役割

カーボンニュートラル実現に向けた脱炭素化への取り組みが産業界全体に広がるなかで、化石燃料に代わる次世代エネルギーのサプライチェーンにビジネス機会を見出す動きが顕在化してきた。今回の日本郵船による上野トランステックへの資本参加も、こうした次世代エネルギー供給にかかる課題解決と新ビジネスの創出を促進する狙いがある。

外航海運と内航海運のリーディングプレーヤーが手を組む目的は、アンモニアや水素など次世代エネルギー分野におけるサプライチェーンの整備を見据えたサービスの開発・提供体制を構築することにある。具体的には、荷主企業へのワンストップサービスを提供する新規ビジネスの創出だ。

(イメージ)

海運業界には、いわゆる「本業」である海上貨物の輸送に加えて、環境対応に不可欠なアンモニアや水素などのサプライチェーンを担う役割が新たに求められるようになっている。持続的なビジネスの種を獲得できる好機である一方で、気候変動という社会課題への対応という使命を担う役割を求められることになる。

経済成長と環境対応の両立を図るためのエネルギー転換を迫られるなかで、既存のエネルギー供給を輸送面で支えながら、次世代エネルギーのサプライチェーン構築を推進する。こうした過渡期をいかに円滑に乗り切るか。両社は重い役割をどうビジネスに結実させていくか、注目したい。(編集部・清水直樹)