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日立、産業ロボのシステムインテグレーション集約

2022年1月27日 (木)

M&A日立製作所とグループの日立産機システム(東京都千代田区)は27日、ことし4月1日付で「日立オートメーション」を発足させると発表した。

産業用ロボットを活用したラインビルディング事業(ロボティクス・システム・インテグレーション事業)のグローバル展開の加速を見据えて、国内と東南アジアにおける事業強化に向けてグループ内の事業・リソースを再編・集約する。

▲ロボットを活用した組立ラインのイメージ(出所:日立製作所)

日立産機システムの各種製造業向け組立・搬送ラインのロボティクスSI事業について、会社分割により日立産機の子会社で自動車を中心としたロボティクスSI事業を手掛けるケーイーシー(岐阜県各務原市)に移管するとともに、ケーイーシーの株式を日立産機から日立製作所の産業・流通ビジネスユニットに移管し商号を変更する。

日立製作所のインダストリーセクターはここ数年、日立産機システムがケーイーシーを、日立製作所の産業・流通ビジネスユニットが米国のロボット・システム・インテグレーターであるJRオートメーションとKyoto Robotics(キョウトロボティクス、滋賀県草津市)を買収することで、それぞれロボティクスのシステム・インテグレーション事業を強化してきた。

今回の事業再編により、ロボティクスSI事業を日立製作所の産業・流通ビジネスユニットに集約することで、JRオートメーションと連携して提供能力を拡充するとともに、デジタル技術を融合したソリューションの提案を実現する体制を整える。

日立製作所は、ロボティクス・システム・インテグレーションを核としたOT(制御・運用技術)とITをワンストップで提供できる今回の体制構築により、顧客のさらなる事業価値の向上に貢献する。北米から欧州を中心に事業展開しているJRオートメーションと、国内と東南アジアで事業展開している日立オートメーションとキョウトロボティクスによる積極的な事業展開により、ロボティクス・システム・インテグレーション事業のグローバルリーダーを目指す。

日立製作所の事業再編、産業用ロボティクス・システム・インテグレーション領域で主導権を握る布石だ

日立製作所が進めてきた、産業用ロボットのシステム・インテグレーション事業の再編が大詰めを迎えている。システム・インテグレーション事業を日立製作所に事実上集約することで、他社との圧倒的な差別化をさらに加速するとともに、市場獲得に向けた競争力を高めて業界内における顧客への訴求力を揺るぎないものとする戦略だ。

日立製作所がグループの日立産機システムを巻き込んだ事業再編を推進する背景には、世界市場で躍進する海外勢の産業用ロボットビジネスへの対抗軸を明確化したいとの思惑がある。

(イメージ)

JRオートメーションが北米や欧州の市場開拓を進めるにあたり、今後の成長領域である東南アジアビジネスへの対応を急ぐ必要があった。そこで、韓国や中国、インドで独自ノウハウを持つケーイーシーを日立製作所に取り込むことにより、世界の主要な産業用ロボット市場を単独でカバーできる体制構築に漕ぎ着けたというわけだ。

物流や製造業界は、現場業務の従事者が慢性的に不足しており、打開策としてロボット導入などによる省力化が不可欠な状況にある。それは決して国内だけの事情ではなく、海外でも先進国を中心に顕著となっている。

もはや新興国にもこうした課題が波及するのは時間の問題とされるなかで、日立製作所は東南アジアを含めたグローバルでの産業用ロボティクス・システム・インテグレーション領域で主導権を握ることで、生き残りを図る意思を鮮明にした形だ。(編集部・清水直樹)