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西鉄、国際物流の輸出入取扱が好調で通期上方修正

2022年2月10日 (木)

(イメージ)

財務・人事西日本鉄道は10日、2022年3月期の通期連結業績予想を上方修正すると発表した。21年11月10日公表の前回予想数値について、営業収益を3904億円から4067億円に、営業利益を50億円から70億円に、経常利益を50億円から96億円に、親会社株主に帰属する当期純利益を25億円から71億円にそれぞれ引き上げた。

新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株の感染拡大で鉄道・バス事業の旅客人員などの減少が見込まれる一方で、国際物流事業における輸出入取扱高の増加により営業収益と営業利益は前回予想を通期で上回る見通しとなった。経常利益や親会社株主に帰属する当期純利益についても、営業利益の増加を反映したことなどから想定を上回る水準で推移すると判断。上方修正に踏み切った。

物流業セグメントは、通期の営業収益を1475億円から1664億円に、営業利益を71億円から97億円に上方修正。新型コロナウイルス感染拡大による経済停滞から脱却し景気回復が顕著な米国や中国、さらに経済成長が著しい東南アジアにおける取扱貨物量の増加で好調を維持しており、他のセグメントの低迷を補う構図となっている。

鉄道事業者の将来の「生きる道」を示唆する西日本鉄道の事業戦略

西日本鉄道が、業績が伸び悩む鉄道業界で気を吐いている。とはいえ、その熱源になっているのは主力の都市交通ではなく、国際物流、いわゆるフォワーダー事業だ。西鉄はアジアを中心に、国際物流の有力なプレーヤーだ。鉄道事業者としては珍しいポートフォリオを展開する西日本鉄道ならではの、特異な事業戦略が奏功している形だ。

鉄道やバス、ホテルといった、鉄道会社における主軸事業が軒並み、新型コロナウイルス感染拡大の影響をまともに受けて苦戦を強いられるなかで、国際物流は「一人勝ち」の状況を謳歌している。まさに西日本鉄道グループの事業運営は国際物流ビジネスが担っているわけで、その収益を低迷する主力事業の事業原資に充てている格好だ。

とはいえ、少子高齢化のさらなる加速により、鉄道ビジネスはコロナ禍がなくても収益確保が困難になっていくのは自明だ。それを見据えてと言うわけではないもしれないが、福岡都市圏に路線網を持つ西日本鉄道は、あえて物流ビジネスで戦後間もなく海外に足場を築いた。西日本鉄道では2000年代中盤以降、国際物流が最多の売上高を叩き出す部門になっている。西日本鉄道自体が、貨物利用運送事業法に基づく外資規制の対象になっていることからも、その実態がうかがえると言うものだ。

コロナ禍は、既存の事業者にドラスティックな発想の転換を迫る契機となった。鉄道業界はその象徴と言えるだろう。10年先、あるいは20年先に起きるはずだった業態改革を、速やかに断行せざるを得ない状況に追い込まれているのが、今の姿だ。

こうした環境下で、西日本鉄道のビジネスモデルは、生き残りを図るためのヒントを示していると言えないだろうか。もはや、運輸・輸送ビジネスの枠内で線を引く時代は終焉を迎えようとしている。(編集部・清水直樹)