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ヤマトHD、「正確に着陸できる航空機」研究成果公表

2022年4月13日 (水)

ロジスティクスヤマトホールディングス(HD)は12日、CycloTech(サイクロテック、オーストリア)と2021年3月から共同で進めてきた「強風下でも狭い土地に正確に着陸できる中型eVTOL(イーブイトール、電動垂直離着陸)航空機の成立性に関する共同研究」の成果を白書にまとめて公開したと発表した。

ヤマトHDが開発した貨物ユニット「PUPA(ピューパ)701」と、サイクロテックが実用化した推進システム「サイクロローター」の2つを中核技術と位置付けて、共同研究を進めてきた。

ピューパ701は、ヤマトHDが現在活用を検討する物流イーブイトール機をはじめ、他の先端的な無人航空機にも搭載可能な貨物ユニット「ピューパシリーズ」の一つ。機体から貨物ユニットを簡単に着脱できる設計のため、陸上においても安全で効率的なオペレーションが可能なのが特徴だ。

▲物流eVTOL機のイメージ(出所:ヤマトホールディングス)

イーブイトールの推進力を担うサイクロローターは、コンパクトな設計でありながら瞬時に偏向推力を生む特徴を生かして、垂直離陸から水平飛行への自然な推移や高い機動性を確保。電動サイクロローターを応用することで、運用に合わせて柔軟に機体を設計できるのが強みだ。

今回、物流イーブイトール機におけるサイクロローターの有効性と実用性を理論上で証明したことが最大の成果と言える。ヤマトHDは今回の研究成果を契機として、空の領域を活用したさらなる高付加価値のビジネスモデル構築を計画し実行に向けた取り組みを促進する。サイクロテックは引き続きサイクロローターの要素技術を高めるとともに、広く機体メーカーや運用者に提供していく。

ヤマトHD、「空」を活用した新ビジネス探索に注目したい

「陸」の宅配事業でメインプレーヤーの地位を固めたヤマトHDが、「空」の新たな物流ビジネスへの本格参入に強い意欲を示している。ヤマトHDは今回のサイクロテックとの共同研究を節目として、宅配中心のビジネスモデルから脱却して、空輸を含めた総合物流企業グループとして名実ともに取り組みを強化していく意志を強烈に示した格好だ。

両社の共同研究は、電動で垂直方向の離着陸が可能な航空機の実用化を意識したものだ。サイクロローターの垂直離陸から水平飛行への自然な動作機能を組み合わせることで、より円滑で機動性の高い飛行が実現する。つまり、物流サービス展開における実用化に大きく近づいたと言えるだろう。

技術的な裏付けは、今回の共同研究で大きく進展した。ヤマトHDは今後、こうした技術を活用したビジネスの創出という課題に挑むことになる。

新型コロナウイルス感染拡大を経て「新しい生活様式」の時代を迎えるにあたって、物流サービスの高度化・多様化はさらに加速する。こうした社会の要請に対応するためにも、「空」の活用で可能となる画期的な新ビジネスの探索の行方に注目したい。(編集部・清水直樹)

物流eVTOL機の飛行イメージ(出所:ヤマトホールディングス)