行政・団体国土交通省物流・自動車局が公表した2026年度の予算のうち、物流関連の計上額は計97億円となった。内訳は「物流の効率化」が82億7500万円、「商慣行の見直し」が5億2800万円、「荷主・消費者の行動変容等」が8億4500万円。いずれも30年度までを物流革新の「集中改革期間」と位置付け、次期「総合物流施策大綱」の策定も見据えた「実装と執行」を前面に押し出す構成だ。加えて、物流施設・DX(デジタルトランスフォーメーション)・GX(グリーントランスフォーメーション)投資を後押しする財政投融資として、119億円(当初24億円、補正95億円)を別枠で計上している。
ネットワーク再構築と省人化を同時に進める実装フェーズへ
「物流の効率化」では、日本全体の物流ネットワーク再構築に10億6100万円(当初3100万円、補正10億3000万円)を投じ、新モーダルシフトや共同輸配送、中継輸送を支える「基幹的な物流拠点」の配置・整備を促す。補正中心ながら、ラストマイル配送の持続性確保に1億7500万円を充当し、受け取り拠点整備、貨客混載、共同配送、ドローン活用などを支援対象に据えた。
現場の省人化・高度化では、自動運転トラックの社会実装に12億7500万円(補正)を計上する。26年度以降のレベル4実装をにらみつつ、1対多運行の仕組みづくり、セミトレーラーやダブル連結トラックへの対応、拠点側のバース造成・舗装に加え、初年度の運行経費まで補助対象に含める。
中小事業者向けには、労働生産性向上などに15億5000万円(補正)を配分した。予約受け付けや動態管理、求荷求車、原価算定などのシステム導入、標準化・データ連携、庫内の自動化・機械化・デジタル化を後押しするほか、テールゲートリフターや搭載クレーンなど荷役負担を減らす設備、免許・資格取得支援も並べる。人手不足を「採用」だけでなく、「作業時間と負担の圧縮」で緩和する発想だ。一方、災害時の物流拠点機能強化などに6億1500万円(当初1500万円、補正6億円)を充て、非常用電源の導入や物資輸送訓練を支援対象とした。
改正物流法の全面施行をにらみ、執行体制を強化
「商慣行の見直し」は5億2800万円(当初6800万円、補正4億6100万円)。26年4月1日の改正物流法の全面施行を見据え、荷待ち・荷役時間の短縮や積載効率向上に向けた規制の執行体制整備を掲げる。あわせて、トラック適正化2法(許可更新制度導入など)に向けた業務プロセス検討、「適正原価」設定に資する実態調査、多重取引構造の是正に向けた連携・マッチング環境整備、トラック・物流Gメンによる是正指導に関する調査など、規制と取引適正化を一体で進める構えを示した。
CLO主導の可視化と再配達削減で“需要側”に踏み込む
「荷主・消費者の行動変容等」は8億4500万円(当初1000万円、補正8億3500万円)と伸びが大きい。物流統括管理者(CLO)が主体となるデータ可視化・共有を支援し、物流コストに応じた運賃・商品価格設定や物量平準化を促す。また、置き配など多様な受け取り方法の選択を後押しし、再配達削減に向けた事業者間連携も対象に含めた。
税制面では、物流総合効率化法の認定計画に基づき取得した事業用資産の特例措置を拡充・延長し、対象を倉庫に加えて、トラックターミナルや物流不動産なども含む「公共性の高い新たな物流拠点」へ広げる。地方公共団体の関与など公共性を前提に、家屋は取得後5年間、課税標準を2分の1に、償却資産(構築物)は4分の3に軽減し、適用期間を2年間延長する。
補正主導の厚み、継続性と予見可能性が次の論点
今回の予算では、物流の「現場改善」から「制度執行」「行動変容」まで守備範囲を広げた一方、補正依存が目立つ項目も多い。自動運転や中小支援、行動変容は補正で厚く積まれており、継続性と予見可能性をどう担保するかが次の焦点となる。
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