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三菱商事など7社、物流倉庫DX実現へ共同事業参画

2022年7月1日 (金)

(イメージ)

M&A三菱商事と三菱商事ロジスティクス(東京都千代田区)、東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC、同文京区)、プロロジス(同千代田区)、三井不動産、三菱HCキャピタル、三菱地所の7社は1日、物流倉庫におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けた共同事業に参画したと発表した。

サプライチェーンの「要」である物流倉庫では、人手不足やデジタル化の遅れなどの諸問題への対応として先進機器やシステムを導入する動きが加速している。付加価値を荷主企業に訴求したい物流施設開発デベロッパーと、機能の差別化で市場獲得を狙う物流DX関連機器・システムの開発事業者がグループを組成して「系列化」する動きが加速する可能性もある。

三菱商事は1日付で、自社で進めてきた倉庫産業DX事業を新設子会社のGaussy(ガウシー、同千代田区)に譲渡。東大IPCとプロロジス、三井不動産、三菱HCキャピタル、三菱地所の5社はガウシーの第三者割当増資を引き受け、さらに三菱商事ロジスティクスは三菱商事が保有するガウシーの株式の一部を譲り受ける形で資本参画した。7社は、産学連携、業界横断でのパートナーシップを通じて、各社が有するデジタル技術、物流不動産の知見・ネットワーク、金融知見等を持ち寄ることで、単独では実現困難な倉庫産業の課題に対する解決策の共創を目指す。

▲新会社「Gaussy」の企業ロゴ(出所:三菱商事)

ガウシーは、三菱商事が2020年にサービス提供を開始した倉庫ロボットのサブスクリプションサービス「Roboware」(ロボウェア)や、シェアリング倉庫サービス「WareX」(ウェアエックス)を提供。多様な産業の倉庫ユーザーと倉庫事業者をつなぐプラットフォームの構築を目指す。

倉庫現場の人手不足や属人化といった問題に対して、誰でも簡単にロボットを使って倉庫運営ができるサブスクリプション型の倉庫ロボットサービスであるロボウェアと、倉庫キャパシティーの過不足に対応して倉庫空きスペースを利用できるシェアリング倉庫サービスのウェアエックス。ともに三菱商事が手がけてきた物流DX事業について、ガウシーは「物流から新しいチャンスを」をビジョンに、倉庫ニーズや荷量の変化に柔軟で迅速に対応できる仕組みを構築。物流現場における諸問題への対応を支援していく。

物流施設デベロッパーと機器・システム開発事業者のタッグで生まれる「系列化」、排他的にならず健全な競争環境を意識してほしい

三菱商事など7社が業界を横断したパートナーシップを組成して物流倉庫のDXを推進する共同事業に参画することになった。その背景には、サプライチェーンの確保・強靭化に欠かせない物流倉庫の抱える人的と物的の両面における諸問題に対して、単独の企業によるビジネスではなく陣営を組んだ形で訴求することにより、問題解決力の強化と明確な差別化による「囲い込み」を加速する狙いもあるようだ。

2023年以降、首都圏や関西圏を中心に全国各地で物流施設が相次いで稼働する。物流施設の開発事業者は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済停滞からの回復の本格化と、「新しい生活様式」の時代の到来による宅配サービスへの需要のさらなる広がりを見据えているからだ。しかし、まさに群雄割拠の状況にある物流施設開発をめぐる“競争”にあって、物流事業者はスペースの供給だけでなくライバルとの差別化を図るための付加価値として着目したのが、先進機器・システムだった。

先進機器・システムの開発事業者にも思惑がある。ITや電気機器、ソフトウエアといった様々な業界の企業が物流DXにビジネスチャンスを見出し、相次いで参入。業界を超えた競合に巻き込まれる状況で、活路を見出すためには、“納入先”である物流事業者とタッグを組み系列化を進めることで販路を確保するとともに、物流開発事業者や荷主企業との連携を深めることで、より現場ニーズに合致した機器・システム開発につなげられる効果も狙える。

こうした系列化は、グループ間での競争によりサービス開発力を高めるエンジンとして機能するのであれば、歓迎すべき動きと言えるだろう。とはいえ、系列内の利益に固執するあまり排他的な発想が卓越することになれば、顧客の選択肢を狭めるだけでなく、物流DXの「ガラパゴス化」の様相に陥る可能性も排除できない。物流という汎用性の高いビジネスにおける話だからこそ、柔軟な対応を意識する必要がある。(編集部・清水直樹)