話題LOGISTICS TODAYのスタートアップ・ベンチャー企業を応援する企画「物流スタートアップ・ベンチャー特集」。第2回は、クイックゲット(東京都渋谷区)の平塚登馬社長です。
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ドラえもんの四次元ポケットのように、欲しい物が欲しいと思った瞬間に手に入る世界は間違いなく来ると思ったんです。今の技術なら未来を自分たちで創っていける、そう思って2019年11月、23歳の時に仲間と東京都内で「QuickGet」(クイックゲット)を始めました。スマートフォンアプリで注文する食品や日用品の即時配達、私たちは「次世代コンビニ」と呼んでいます。
ちょうどウーバーイーツと出前館のフードデリバリーが出始めた頃でした。それを見て、オンデマンドのデリバリーサービスが消費者に受け入れられるタイミングは今だなと感じました。そして、これはもっと幅広い方向に広がっていくだろうという確信も。QuickGetはこの業態の国内第一号になりました。
今は東京都の渋谷、港、目黒の3区で営業しています。登録配達員は約300人です。既存のコンビニ店の商品を配達するのではなく、卸やメーカーと取引して自社で商品を揃え、3か所の店舗から配達しています。スタートから3年。おかげさまでお客様から圧倒的な好評をいただいています。アプリストアの評価では、後発の競合他社はみな星3点台ですが、当社は星4点以上で、悪いレビュー(クレーム)もほとんどありません。
速く、かつコンビニと変わらぬ価格、コンビニ以上の品揃えが売り物です。注文の99%には30分以内に配達しており、平均配送時間は11分です。品揃えは感覚に頼らず、あらゆるデータの分析に基づいて行っています。品揃えもサプライチェーンの設計も、全てを徹底してやることが高い顧客評価につながり、半年で売上高3倍増という成長につながっています。
これから拡大に向けて、しっかり投資していきます。ことし4月下旬に複数のベンチャーキャピタルから3億5000万円の資金調達を行いました。この資金で3年以内に都内と全国主要地域に配達網を広げます。現在の3店舗を200店にし、フルタイム従業員を20人から80人に増やします。他社と協力する可能性を否定はしませんが、できれば自社単独で、できるだけ早期にやりたい。黒字化はしばらく先です。
商品を運び、顧客にお会いして価値をお届けするという「顧客体験」を非常に重視しています。私自身、会社を立ち上げたころ、自分自身で配達し、お届けする時にお客様に「どうして当社に注文してもらえたのですか」と聞く「顧客体験」を積み重ねました。会社にとっては何千何万の注文の一つにすぎなくても、お客様にとっては本当に大事な1回かもしれません。例えば体調が悪くて外出できずに注文されたのかもしれません。配達を受けた時の印象がひどいものになったら、悲しむでしょう。競合他社の中には即配が成長市場だから参入した会社もあるかもしれませんが、当社は顧客に価値を届ける体験も重要な目的と位置付けています。
よく新型コロナウイルスの感染拡大で宅配需要が増えたと言われますが、私はそれ以前からオンデマンドデリバリーへのしっかりしたニーズをつかんでいました。動画配信やゲームの普及で外出しなくても楽しめる世の中になっていましたから。コロナ禍よりむしろ、様々なことがより便利になってきているという時代の流れに沿うことが重要だと考えてきました。
私は豊かで便利な世の中で生まれ育ってきた一人です。この「当たり前」の便利さの基準をさらに上げたいのです。かつてセブン-イレブンがコンビニを創造して「当たり前」にしました。今再び、便利さの基準が上がる時期に来ています。注文から10分で商品が届く世界です。おそらく、私たちより後の世代の方々が、それよりもっと便利なことに挑むことになるでしょう。(編集部・東直人)
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