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白ナンバーのアルコール検知義務化を延期、警察庁

2022年7月15日 (金)

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行政・団体警察庁は15日、白ナンバー車保有企業にもドライバーへのアルコールチェックを義務化する規制強化策について、実施時期を当初予定のことし10月から延期することを明らかにした。世界的な半導体不足などの影響で検知器が供給不足となっているためで、メーカーも延期を要望していた。延期期間は未定という。

警察庁はこの施策に関して広く一般から意見を聞くパブリックコメントの募集を同日開始した。その案内文の中で、施策の根拠となる道路交通法施行規則の一部改正について、「最近のアルコール検知器の供給状況等を踏まえ、当分の間、安全運転管理者に対するアルコール検知器の使用義務化に係る規定を適用しないこととする」と記載した。10月1日からの義務化の延期を表明したものだ。パブリックコメントは8月13日まで、インターネットと郵送で受け付ける。

検知器の製造・販売業社58社でつくるアルコール検知器協議会はことし4月、警察庁に対し、「半導体不足などから10月1日までに市場が求める台数の確保は不可能」という意見書を提出していた。協議会事務局では「しっかりした性能を持つ検知器を普及させるには、延期は妥当だ。白ナンバー事業者やドライバーの飲酒運転撲滅への意識は高まっており、義務化が一定程度延期されても、抑制効果が削がれることはないと考える」と話している。

白ナンバー各社やメーカーは改めて緊張感を

飲酒運転撲滅への機運が高まるなか、検知器が供給不足に陥り、白ナンバー事業者らを心配させていたアルコールチェック義務化問題は、開始時期を遅らせる形で最低限の混乱回避が図られた。事故防止に努めなければならない警察庁としては苦しい判断だったろうが、メーカーの実情と要望を酌んだ現実的な対応だったと言えよう。

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機器の供給不足は半導体不足というメーカーの企業努力の域を超えたグローバルな要因だったことも、警察庁は考慮したとみられる。ただ、この規制強化は、千葉県八街市で昨年6月に白ナンバー事業者の飲酒運転トラックに児童5人がはねられ死傷した事故を教訓にしたものだ。国民の安全・安心の向上のためにも、半導体確保に向けた産業界の取り組みが急務となる。

「検知器がそろわない」「チェックが義務化されてない」からと言って、気を緩めるトラックドライバーや白ナンバー事業者はないと信じたい。検知器を使ったチェックの義務化を前に、ことし4月からは目視などによるドライバーの酒気帯び有無の確認が義務付けられており、また政府・業界による広報や報道を通じて飲酒運転防止意識は相当高まっている。ただ、それでも繰り返し起きた悲劇を思い起こし、今回の警察庁判断を法令順守と安全運転を改めて徹底する機会だと、緊張感を持って受け止めるべきだろう。国の規制や機械に頼らずとも、白ナンバー事業者もドライバーも飲酒運転をしっかり抑制できている、という矜持を見せる場面だ。

一方、アルコール検知器協議会が規制強化の延期を要望した理由には、適切な性能を持つ検知器の普及を図る目的もあったという。飲酒をしているのにそれが検知されなったり、逆に飲んでいないのにアルコール反応が出たりすることが増えれば、制度の信用が損なわれ、ひいては飲酒事故の再発を許してしまう。検知器のメーカーには延期措置で得た時間を、増産だけでなく、機器の精度向上や不良品撤廃へのチャンスととらえ、販売事業者とともに緊張感を持って取り組むことを期待したい。(編集部・東直人)