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物流DXショールーム、首都圏に続々登場

2022年9月27日 (火)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「21の先端物流技術を体験、相模原にDXデポ開設」(9月6日掲載)、「物流先端技術を紹介、SBロボが千葉にラボ開設(9月12日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

サービス・商品最先端の物流自動化機器やロボットを集めたショールームが、首都圏で相次ぎ開設されている。期間限定の大規模展示会ではなく常設の場として倉庫会社や荷主などに機器をPRし、拡販につなげるのが第一の目的だ。それとともに、急速なDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化に遅れることのないよう、国内外の研究者や技術者、ユーザーの目に技術を常にさらし、彼らの声を吸い上げて次の開発や改良につなげる役割も期待されている。

▲ユーピーアール「DXデポ」内のデモンストレーション風景

9月6日、物流機器や輸送機器のレンタルを手掛けるユーピーアール(東京都千代田区)が準備を進めてきたショールーム「DXデポ」が相模原市中央区に完成し、物流関係者や報道陣に公開された。自社や他のテクノロジー系ベンチャー企業の最新技術を組み込んだ、ロボットを含む21の先端機器とソリューション(解決策)が展示されている。

1週間後の13日には、東京湾を挟んだ千葉県市川市に、ロボット開発企業のソフトバンクロボティクス(東京都港区)の「Logistics Innovation Lab」(ロジスティクス・イノベーション・ラボ)がオープンした。こちらは、ノルウェー企業が開発した高密度自動倉庫システム「オートストア」をはじめ、ピッキングや荷積み・荷降ろし、入荷などの機器が並べられている。海外企業の技術が多いのが特徴だ。

▲ソフトバンクロボティクス「Logistics Innovation Lab」内に展示される自動倉庫システム「オートストア」

2つのショールームとも、稼働中の大型物流施設の一角を借りて開設したもので、インターネット経由で見学予約を受け付け、訪れた見学者に開発担当者が説明したりデモンストレーションを行ったりする点も同じだ。プラスオートメーション(同区)が提供する次世代型ロボットソーター「t-Sort」など共通する展示物もある。ソフトバンクロボティクスの施設には、「オートストア」や中国製の荷積み荷降ろしロボットなど比較的大型の装置が目立つが、展示内容は総じて互角と言えそうだ。

スタンスに違いも

▲ユーピーアールの酒田義矢社長

対照的なのは、両社の開発スタンスにあると言えよう。ユーピーアールのDXデポの展示物は多くが自社開発の技術で、開発途中のものも惜しげなく公開している。DXデポのスペースを提供する日本GLP(同区)の帖佐義之社長が日頃から「物流施設の暗いイメージを打破したい」と発言しているように、ユーピーアールの酒田義矢社長も施設公開時に「同業者の方々にも来場してほしい。物流業界の課題解決のためにライバル同士でも協力するべきだ」と明るく述べていた。先行企業の余裕と解釈することもできようが、来場者にオープンな雰囲気を感じさせる姿勢が見られた。

▲ソフトバンクロボティクスの坂田大常務執行役員

これに対し、ソフトバンクロボティクスの方は、M&Aによって傘下に収めた企業の技術やそれに改良を加えたものが目立つ。陣頭指揮を執る坂田大常務執行役員は「有望技術を持つ企業を世界中で探したい」と、今後も国内外の企業への出資・買収戦略を積極化する方針を示した。物流市場参入までの半年間を「ステルス期間(隠密期間)」と称して水面下の準備を着々と進めてきたことを明かし、後発だからなのかライバル企業への闘志を隠さない。

背後にある危機感

ただ、ソフトバンクロボティクスも、日本の物流自動化・ロボット市場全体の底上げが不可欠との意識を持っている。両社とも、新施設を舞台に常に他者からの多様な視点にさらされることが、イノベーションを生み続け、それがなければ海外勢に席巻されてしまうという危機感で一致している。

もう一つ、都内にも東京流通センター(TRC、東京都大田区)のコワーキングショールーム「TRC LODGE(ロッジ)」が一足早い2020年10月に開設されている。相模原、市川の両施設に比べれば小規模だが、都心や最寄り駅に近いアクセス性が売りだ。大小の課題解決に役立つ9社の技術を、保管、荷役、仕分け、ピッキング、包装、流通加工の各工程に沿ってコンパクトに紹介している。セミナーに使えるスペースや、技術導入前に使える実験用倉庫もある。同社は本年7月にそうした技術のデモイベントを隣接倉庫の広いスペースで行っており、年内の再開催も検討している。(編集部・東直人)

■ショールーム比較表