サービス・商品旭化成とTISは18日、偽造品問題へのソリューションとなる新しいデジタルプラットフォーム「Akliteia」(アクリティア)を構築し、10月から皮革製品・鞄などアパレル業界に最適化したサービス提供を始めたと発表した。
個社ではなくサプライチェーン(SC)全体で偽造品を減らす継続的な仕組みで、偽造品の発生状況を定量的に可視化できるのが特徴。偽造防止ラベル、真贋判定デバイス、ブロックチェーンにより真正性と原本性の両方を担保する。
偽造防止ラベルは、旭化成独自の材料と技術で製造された透明なラベルを対象の製品に実装する。製造工場や物流倉庫、EC(電子商取引)倉庫などSCの各拠点で、真贋判定デバイスをスキャンすることで、製品が本物か否かを確認できる。
偽造品を排除するとともに、真正品の数量把握が可能。判定結果はクラウド上で情報共有され、SC上で生じる偽造品の混入状況など被害実態を「見える化」できる。
今後、サービスを提供する業界を順次拡大する。2023年度には個別の製品の流通状況を把握できるRFID機能付き偽造防止ラベルによる真正品トレースサービスも開始する予定。24年度からは海外でのサービス展開も見据える。
発表によると、SCでの偽造品による社会的な影響額は、世界で年間4兆6800億ドルに達する可能性が指摘されている。皮革製品・鞄などのアパレル業界での偽造品混入率は年間3.3%(海賊版を含む)。
従来の枠を超越して社会全体を包含する新たなシステムへと進化する、SCの概念
サプライチェーン(SC)は、製品の原材料や部品の調達から販売までの一連の流れだ。商品や製品が消費者の手元に届く道筋というわけだが、その過程を最適化するサプライチェーンマネジメント(SCM)の取り組みが物流業界でも注目を集めている。
モノを運ぶ仕組みの最適化として解釈されてきたSCMだが、近年は「いかに最適な形で供給するか」が重要なポイントになっている。旭化成とTISによる今回のSCにおける偽造品対策に特化した取り組みも、こうしたSCMの最適化を意識した取り組みと言えるだろう。
モノを運ぶ仕事は、実はノウハウの集積だ。「輸送品質」という言葉があるように、運ぶ行為そのものにおける付加価値の創出は、国内の運送事業者が得意とするところだろう。
定時での配送はもちろんのこと、破損させない丁寧な荷扱いにも定評がある。さらに、輸送品目の多様化に応じて、温度管理など輸送過程での最適化が腕の見せどころになってきている。そして、偽造品の排除まで対象となった。SCにおける急速な品質向上の動きは、もはや止まらないように思える。
つい最近までは、それぞれ個別の企業がそれぞれの領域で対応してきた取り組み。それをSC全体でシステム化する動きが当たり前の時代になった。商品・製品を供給する仕事は、もはや「物流」の枠を超越して社会全体を包含する新たなシステムとして受け止めるべきなのだ。
今後も、これまでは供給プロセスとな無縁だったはずのビジネスが、どんどんSC上の文脈で語られるようになっていくだろう。今回の取り組みは、こうした大きなうねりのワンシーンなのだ。(編集部・清水直樹)
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