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大学生の物流業界への無関心、脱却に必要なのは

2022年12月9日 (金)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「Z世代は物流に無関心、大学生の就職先志望度調査」(12月5日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

調査・データ現在の大学1〜4年生(主に19〜22歳)を対象に実施された就職の志望業界に関する民間調査で、物流という仕事に対する若者の無関心ぶりが際立つ結果となった。これは就職候補先の選択肢にすら入っていない可能性を示唆しているともいえ、人手不足に苦しむ運輸・倉庫業界にとって看過できないものといえる。少子高齢化や「物流の2024年問題」を背景に、物流人材の確保は重要な経営課題と位置付けられている中で、いかに業界を認知してもらい就職先の一つとして興味を持ってもらうのか。同調査のレポートや業界の動向を踏まえながら、彼らの心をつかむためのポイントについて考えてみる。

今回取り上げる調査とは、新卒採用支援を展開するインタツアー(東京都港区)が、2023〜26年に卒業する大学生1万4723人(有効回答数941人)を対象に、インターネット上でことし9月に実施したもの。物流をはじめ、ITやマスコミ、食品メーカーなど全19業界について「志望度」や「非志望度」、「関心度」を尋ねた。物流は志望度が16位、非志望度が9位で、志望・非志望のいずれでもないことを示す「無関心度」は、「その他メーカー」「インフラ」に続く“ワースト3”に入った。

(イメージ)

調査レポートでは、業界自体への関心度が低い業界に対して、「関心を持ってもらうための施策が必要」と指摘する一方で、業界によって学生の温度感が異なる点を理由に「やみくもなコンテンツ施策や広告施策では成果につながらない」と分析。まず業界に目を向けてもらい、業界や会社としてアピールするポイントを整理した上でPRする大切さを説いている。現代の仕事に対する価値観やライフスタイルは多様化している。そうした若者たちに刺さるポイントを丁寧に抑え、物流の業界や仕事を訴求していくことが興味をもってもらうためには欠かせない。

実は、関心を喚起するという意味では物流業界にとっては近年は図らずも「追い風」が吹いている。ことし10月の日本物流団体連合会(物流連)の人材育成・広報委員会で、委員長を務めるNIPPON EXPRESSホールディングス副社長の堀切智氏は「コロナ禍で物流業界は国民生活に不可欠な事業であると認知されてきている」と言及し、インターンシップなどを通じて業界の認知度向上に努める姿勢を強調した。

ことしは、NHKで8〜9月には女性宅配ドライバーが主人公の連続ドラマ「あなたのブツが、ここに」が放映された。コロナ禍のリアルな物流の世界が描かれ、業界内外で話題を呼んだのは記憶に新しい。また、別の民間企業が12月に発表した、16〜22歳の学生対象の「2022年の年末年始の短期アルバイト調査」によれば、イベントやリゾートのスタッフを抑えて「倉庫・物流スタッフ」が全8職種の中で1位になった。昨年までコロナ禍で大規模なイベントや旅行の自粛ムードが長引いた影響で、堅実に仕事ができて時間効率が良い倉庫・物流の仕事が人気を集めている。

(イメージ)

運送トラック事業者の中には、従業員にトラック系ユーチューバーとしての活動を推奨する動きも広がっており、彼らの動画をきっかけに、新規ドライバーの採用に至るというケースも出始めている。バイト経験や動画視聴など若者と物流の世界をつなぐ「接点」は日常にあふれている。志望業界としての物流業への無関心を減らすためには、就職活動シーズンや会社説明会といったオフィシャルな場面だけでなく、日頃から業界のイメージ向上や職業理解を繰り広げていく貪欲な意識が求められる。(編集部・安本渉)

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LOGISTICS TODAY編集部
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