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首都圏のLMT供給、24年まで高水準も空室率上昇

2022年12月16日 (金)

調査・データシービーアールイー(CBRE、東京都千代田)が15日発表したレポート「不動産マーケットアウトルック2023」によると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設(LMT)の新規供給は2023年に91.3万坪(301万平方メートル)となり、過去最大に達する見通しだ。24年も65.3万坪(215万平方メートル)と伸び、21年から4年連続で高水準の供給が継続する模様。

一方で「需要は底堅いものの供給増大に追いつかない」として、首都圏の空室率は23年末に8.1%に上昇すると予想。ピークだった15年の6.9%を上回り、10年の11.7%以来の高水準になるとの見方を示した。首都圏を含む4大都市圏全てで、23年の空室率は軒並み上昇を見込む。

同レポートによると、需給バランスが変化した背景として、新型コロナウイルス禍で物流特需が追い風となり19〜21年に需給がひっ迫し、デベロッパー各社が物流施設の開発に比重を移した影響があると分析。首都圏だけでなく、全国の都市圏で大型開発が加速した結果、中部圏、福岡圏で23年、近畿圏で24年にともに過去最大の新規供給を見込む。同社は「これまでにないボリュームの新規供給が全国で訪れる」として、空室率の水準にバラつきはあるもののいずれの都市圏も22年に比べて需給は緩む、と予測する。

しかし、実質賃料には、空室率の高低を反映した動きになりそうで、23年の首都圏は16年の-2.2%以来の下落を予想する。中部圏について18〜22年までの5年間は年率0.3%と賃料上昇は抑えられ、今後もほぼ横ばいでの推移を見込む。

近畿圏と福岡圏については、緩やかながらも上昇傾向を維持するとした。その理由として、他の都市圏よりも空室率が低水準であり、それぞれの中心部では空室不足感が強まっていることを挙げた。ただし、いずれの都市圏も新興立地での開発や局地的な供給が集中すれば、物件のリーシングが想定以上に時間を要して、賃料は予想を下回る可能性もあるとしている。

物流施設の稼働が相次ぐ2023年、それは業界における転機となる可能性も

2023年は、大きな変革の年として後世に記憶されるかもしれない――。物流業界でささやかれている話題だ。22年も残すところあと半月。新しい年に何が待ち受けているのだろう。

全国各地で進んでいる物流施設プロジェクト。大都市圏では郊外における大型施設の開発案件が進むと同時に、湾岸部を中心とした都心部で新拠点を設立する動きも顕著になっている。地方でも、高速道路の結節点をはじめとした施設開発が相次いでいる。

こうした施設の建築工事が完了して相次いで稼働し始めるのが、ちょうど23年に当たるというわけだ。新型コロナウイルス感染拡大で停滞していた経済活動の回復に備える意味合いもある。とはいえ、その本質は減退していた活動が復活するという単純な構図ではない。

コロナ禍を契機とした国民の消費動向について考える際に忘れてはならないのが、「量」だけでなく「質」を伴う変化が起きたことだ。あらゆる場面における外出自粛の動きが広がるなかで、店舗から宅配へと購買という行動の「概念」そのものが変質したことは、社会における物流業界の立ち位置に不可逆的な変化をもたらした。物流施設の規模や機能から立地条件まで、いわばゼロベースでの見直しを迫られる局面を迎えることになったのだ。

とりわけ、こうした動きが顕著だったのは物流施設の開発事業者だった。物流施設を主領域とする事業者は事業方針の転換を柔軟に進めたところが勢力を強めた。その一方で、新たに倉庫案件へ参入したデベロッパーも現れるなど、物流施設は参入事業者の相次ぐ「レッドオーシャン」の様相を呈するようになった。

(イメージ)

こうして23年から順次、全国で数多くの物流施設が稼働する事態となる。一気に供給床面積が増加することで施設間の優勝劣敗が顕著になるのは、想像に難くない。同じエリアにおけるデベロッパー間の競争もさることながら、事業者内でも拠点網における機能分担の見直しを求められる事例も出てくる可能性がある。

さらに予想されるのが、供給が増えることによる荷主など入居者の発言力がさらに強くなることだ。いわゆる「買い手市場」の様相が強まることで、施設を開発する側はテナントに対して付加価値の創出を促す戦略が、さらに求められることになるだろう。

もはや、空室率だけで物流施設の市況を判断できない状況になりそうだ。こうした観点で見ると、23年は業界におけるターニングポイントになる予測は、あながち的を射ているかもしれない。(編集部・清水直樹)

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