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変貌する東北物流を支える岩沼ロジスティクスセンター

陸海空の結節点、宮城・岩沼LCからの物流網構築

2023年10月30日 (月)

話題大きく変貌しつつある東北物流の中心地・仙台市。その中心部から南へ15キロメートルほどの場所にことし3月に竣工した先進型物流施設が、岩沼ロジスティクスセンター(LC)である。

▲岩沼LC近隣のマップ(クリックで拡大)

同施設が立地する岩沼臨空工業地帯は、仙台空港の南側2キロメートルに近接する。仙台港からも18キロ、道路網、市内鉄道貨物ターミナルとの接続でも利便性が高いため、震災前から食品工場や機械メーカーなどの多くの企業と、その物流を担う施設が集積する有数の産業エリアであった。地元の製造・物流拠点であった岩沼は、震災による大きな被害を受けたが、急速な復興を経て改めて物流施設誘致を中心とした再開発を進め、岩沼LCをはじめとした物流施設の稼働により、また地域産業の心臓となってエリア物流の脈動を促していく。

陸・海・空をつなぐ東北の物流要衝・岩沼

岩沼市は、東日本震災によって被災自治体では最大となる市域の48%が津波による浸水被害を受けた。それでも、同様の被害を受けた東北沿岸自治体の中でもいち早く復興に取り組み、その進捗の早さから「東北のトップランナー」として、周辺の復興事業を牽引する役割を果たしてきた。

▲かさ上げ道路(出所:仙台市)

同市の復興事業は、沿岸部集落の内陸部への移転、津波への防御の役割とともに南北をつなぐ新しい沿岸道路の機能も果たす「かさ上げ道路」、さらに沿岸から内陸部へ誘導する「避難路」を中心に整備され、平成30年11月末には、他地区に先駆けて復興事業が完了。津波対策では、かさ上げ道路の他にも、防潮堤、河川防堤、防災公園など多重の防御策が用意され、震災当時のデータに基づいたシュミレーションなどで市内の安全確保についても確認されている。

復興にともなう再開発で整備された岩沼臨空工業団地は、23ヘクタールの産業用地を用意して企業を誘致。特に、これまで仙台エリアには供給が少なかった大型物流施設の建設用地として、大手デベロッパー・物流不動産事業者にとっても魅力的なポテンシャルを備え、すでに用意された区画はほぼ埋まってしまったという注目の物流要衝である。岩沼LCも、大手商社系アセットマネジメントと世界的な金融企業の共同開発プロジェクトであることからも、同地の価値の高さを推し量ることができよう。

▲岩沼ロジスティクスセンター外観

周辺エリアでは自社倉庫を運用し、必要に応じて小規模な増床を進めるという施設の使い方が主流だったことから、絶対的な倉庫供給量が少なく、急激な物流シーンの変化に対応できる賃貸型物流施設の進出が期待されていた地域でもあった。東北経済の再拡大、さらにはEC(電子取引)需要の増加など、新たな物流ニーズの高まりも、先進型物流施設の必要性を後押しする。岩沼エリアは高速道での陸送に加えて、鉄道貨物ターミナル、仙台空港、仙台港とも至近であることから、陸・海・空の結節点としての立地からも注目され、東北物流の中心、物流危機に対応する新しい拠点としても競争力がある。

立地、仕様、価格など、物流施設の本質おさえる岩沼LC

ここで改めて、施設の立地、スペック面から、岩沼LCの機能を検証してみる。

同施設が立地するのは、エリア消費圏を南北に貫く仙台東部道路の「仙台空港IC」と「岩沼IC」から、どちらも車で数分という距離。東北全域の物流を見据えた拠点として格好のロケーションから地域の消費配送ニーズに対応する。

▲岩沼LCのアクセスマップ

また、復興事業による整備によって大幅に改善した湾岸部の交通網も、施設にとって大きなセールスポイントとなっている。「かさ上げ道路」は、仙台港へのアクセスで利便性を高めるとともに、さらに北部沿岸部へ伸びる三陸沿岸道路との接続で北東北との距離を縮め、南へは常磐自動車道経由での首都圏方面への移動をスムーズにする。仙台市内、鉄道貨物ターミナルを含めた周辺エリアへの配送スピードでも、さらにスピードを生かしたサービスの向上が期待できる。

さらに、これまで山間部の横断が大きなハードルであった内陸部への移動でも、19年に志賀姥ヶ懐トンネルが開通したことにより、東北自動車道への接続も格段に早くなった。南北への幹線道路での移動、内陸と沿岸の東西移動が整備されたことで、サプライチェーン構築のバリエーションも拡張できる。

建物は、地上4階建てで延床面積3万6020平方メートル。1階と2階に、トラックバースに直接接車できるスロープを備え、1階と4階、2階と3階をそれぞれ組み合わせ、最小区画としては各フロアを2分割(1階と4階を東西半分ずつ、2階と3階を東西半分ずつ)した2000坪程度の小区画からの運用も可能となっている。自社倉庫の床面積を少しずつ追加していくという地域特性に合わせた小区画を用意することで、実現性の高い物流網再編をスタートできる地元企業も多いのではないだろうか。

▲岩沼LC北面の車路

実際に、周辺の物流倉庫では老朽化が進むなど建て替えの必要性も高まっており、倉庫事業自体の経営の代替わりなども進む状況。賃貸型での施設運用への切り替えや、オーバーフローする保管商材を受け止める集約拠点としても、岩沼ロジスティクスセンターのポテンシャルは大きい。現在使用している平屋の倉庫から、もう1ステップだけランクを上げた事業拡大を目指すといった地元企業にとって、賃料面でも導入しやすい設定で、企業にとっての次の一歩を促す。岩沼同様に新規物流施設の開発が進む仙台北部の利府町や、内陸の東北自動車道「泉インターチェンジ(IC)」周辺の物件と比べてもリーズナブルで、新施設の導入と運用にあたっては大きなメリットとなるだろう。

▲2階の倉庫部分。荷物用エレベータ2基と垂直搬送機2基を備えている

4層のフロアをどう運用するかは、入居テナントごとの物流プランで判断されるところ。1階バースには23台、2階のバースには21台が接車可能。1階と4階のフロア利用では、保管効率を重視した運用、2階と3階の利用では、機動性を重視した配送網が想定できる。例えば、垂直搬送の機能においては、2階と3階間では、荷物用エレベータ2基と垂直搬送機2基(区画2分割利用で各1基ずつ)で小回りや取り回しの良さを重視、1階と4階では荷物用エレベータ4基(区画2分割利用で各2基ずつ)で1作業あたりの搬送量が重視されており、バリエーションのある施設の仕様をテナントそれぞれの運用に生かせる部分となる。

物流危機に対応する東北物流の中心地としての役割

2024年問題が直前に迫り、施設運用においても物流危機対応は最重要項目として位置付けられる。トラック陸送からの転換として注目される海上輸送、空路輸送、鉄道輸送の結節機能を持つ同施設は、政府が積極的に関与を進める物流革新の視点からも、今後ますます注目を浴びることは間違いない。復興事業によって陸送交通網が便利になったとはいえ、東北エリアから首都圏、さらに中部、関西圏への配送を考える時、鉄道・海路・空路での貨物総量を拡大することが、コスト削減も含めた効率化にも大きく貢献するはず。

▲清潔感ある共用スペース

また、広大な面積の東北全域でのサプライチェーンをどう組み立てていくか、拠点施設の再編成も喫緊の課題。来年4月には、改正された法令に則ったトラック陸送プランを運用しておかなければならないため、新たに供給された施設をまずは先押さえするという戦略も必要になるだろう。陸海空の輸送モード再編の拠点として、また、東北エリアの分散拠点としての岩沼LCを活用して、サプライチェーン全体を見直す動きでも、今後ますます進展することが予想される。

東北の産業は、すでに復興需要に頼る時期を過ぎ、地域特性を付加価値として競争力を高めていく局面。その中で、変貌する地域消費の配送ニーズ、周辺産業の多様な業態ごとのニーズ、運送物流事業者のニーズなど、あらゆる変化に対応できる立地とスペックを備えた岩沼LCが果たすべき役割は大きい。新造の物流施設として快適な就労環境を提供するとともに、物流施設の本質を見極めた施設提供でエリア物流を堅実に支え、さらにその先への進化を促す拠点となるだろう。

岩沼ロジスティクスセンターの概要
所在地:宮城県岩沼市空港南4-1-3、1-9
敷地面積:1万6535.72平方メートル(5002.05坪)
延床面積:3万6020.71平方メートル(1万896.26坪)
構造:地上4階建、鉄骨造/一部鉄筋コンクリート造
交通:仙台東部道路「仙台空港IC」4.2キロ、仙台空港線「仙台空港駅」2.2キロ
竣工:2023年3月
物件詳細:https://www.cbre-propertysearch.jp/industrial/property-104211016001/
物件問い合わせ先
シービーアールイー株式会社
インダストリアル&ロジスティクス首都圏営業部
電話:03-5288-9830