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コールドチェーン改革最前線、GLPビジネス交流会に49社110人集う

「変わる、進化する」冷凍・冷蔵物流施設のこれから

2023年11月22日 (水)

話題今、冷凍・冷蔵物流施設がアツい──まるで、流行りのスイーツか何かのキャッチコピーだが、会場で感じた熱は、まさしくこれだった。

これまでの冷凍・冷蔵物流施設マーケットは、村社会の様相を呈していた。そこに風穴を開けつつあるのが、日本GLPである。冷凍・冷蔵マルチテナント型物流施設というありそうでなかったコンセプトを引っさげ、マーケットに対し、「はい、皆さまはどう思いますか?」と問題提起を行っているようにすら感じられる。

「変わる」、そして「進化する」冷凍・冷蔵物流施設のこれからを余すことなく伝えた『GLP CONFERENCE 冷凍・冷蔵』の大阪開催(2023年10月5日 、ハービスプラザ)と東京開催(2023年10月13日、日本GLP本社)の様子をお届けしよう。

▲「GLP CONFERENCE 冷凍・冷蔵」東京会場の様子

今、冷凍・冷蔵物流施設が求められる理由

このビジネス交流会は、日本GLPから個別に招待を受けた事業者が参加できるクローズドイベントとして開催されたが、欠席はなく、大阪・東京合わせて49社110人の冷凍・冷蔵物流関係者が集った。なぜ今、冷凍・冷蔵物流施設に関係者が熱を上げるのか――。理由は大きく3つある。

1つ目は、冷凍食品(冷食)マーケットの拡大である。新型コロナウイルスの流行拡大と緊急事態宣言の発出により、外食産業や冠婚葬祭産業は大きな打撃を受け、冷食マーケットも一時停滞したのだが、それを補って冷食マーケットを拡大させたのが、家庭用冷食だった。コロナ禍を経て、家庭用冷食マーケットが業務用を逆転した背景には、以下の要素が挙げられる。

<巣籠需要>
コロナ禍で外出が制限されたことにより、いわゆる「巣籠需要」が発生し、これまで縁がなかった家庭にも冷食が身近になった
<ライフスタイルの変化>
共働き世帯や単身世帯の増加などで、食事や弁当に冷食を使用することが増えた
<高齢化・未婚化>
高齢世帯や単身世帯の増加により、料理を作る手間をかけられないケースや、手間をかけたくないというニーズが増加した
<冷食の進化>
「不健康でおいしくない」という従来のイメージを覆す冷食の登場により、上記需要を取り込んだ

▲家庭用冷食の国内生産金額は10年で42.4%増加、業務用を上回る

このほか、食品EC(電子商取引)やふるさと納税の拡大も相まって、家庭向け冷食マーケットは2013年から22年までに4割以上拡大した。また、コロナ禍の収束とともに業務用冷食の需要も回復し、新たに介護・医療分野などで冷食の活用が急速に拡大している。

こうした需要の変化・拡大に対し、新たな冷凍・冷蔵物流施設の供給が追いついていないのが、2つ目の理由である。

そもそも今までは冷凍・冷蔵専用のマルチテナント型物流施設が物流不動産市場にほとんど供給されておらず、「これまで供給されたのはごくわずか。手掛けるデベロッパーは数社程度」(日本GLP)という状況にあった。そのため、冷凍・冷蔵物流施設を利用したい事業者は、選択肢が乏しかった。

冷凍・冷蔵物流施設の一般的な利用方法
(1)自社で冷凍・冷蔵物流施設を建てる
(2)他社の冷凍・冷蔵物流施設の一部を間借りする(業務を委託する)
(3)ドライの賃貸物流施設に、冷凍・冷蔵設備を後付けする

上記のほか、自社の冷凍・冷蔵物流施設を持て余した事業者から物件を借り受けるという選択もあるが、これはめぐり合わせに大きく左右される。結果、既存の冷凍・冷蔵物流施設だけでは、拡大する冷食マーケットの需要を補えなくなってきたわけである。

▲大都市の冷蔵倉庫築年数の割合(出所:国土交通省・日本冷蔵倉庫協会、2020年)

3つ目は、社会情勢やマーケットに対する対応力である。例えば、東京都内の冷凍・冷蔵物流施設の4割以上が築30年以上という統計がある。こういった倉庫を、今求められている自然冷媒を使った冷凍・冷蔵設備へ改修しようとすれば、多額の投資が必要となる。

また、土地代や建設費が高騰している今、事業者が自前で最新スペックを備えた冷凍・冷蔵物流施設を新設するには、さらに大きな投資が必要となる。最近では、こうした大規模投資に対する金融機関の目も厳しくなっているという。かと言って、ドライの賃貸物流施設に冷凍・冷蔵設備を増設するとなれば、賃料に加えて、初期投資と退去時の原状復帰コストが重くのしかかる。

このような冷凍・冷蔵物流施設マーケットの課題とニーズを受け、日本GLPは、マルチテナント型を含む、多様な賃貸型冷凍・冷蔵物流施設を積極的に開発していく予定なのだ。

冷凍・冷蔵食品を取り扱う物流事業者が、日本GLPを選んだ理由

では、冷凍・冷蔵物流施設の利用者は、こうした日本GLPの取り組みをどのように受け止めているのか。本イベントの大阪会場では、藤原運輸(大阪市西区)とダイセーエブリー二十四(愛知県一宮市)が、東京会場では、南日本運輸倉庫(東京都中野区)と信濃運輸(同江戸川区)が、それぞれ日本GLPの冷凍・冷蔵物流施設に入居予定のユーザーとしてパネルディスカッションに登壇した。各社が冷凍・冷蔵物流施設を賃借するに至った理由を紹介しよう。

■藤原運輸  藤原輝之社長


▲「GLP 六甲V」完成イメージ

竣工から30年経過した自社倉庫(神戸市六甲アイランド内)が、老朽化し、困っています。例えば、電気代削減のため、夜間電力で蓄冷することを検討しましたが、施設が古いため、対応できませんでした。自社倉庫から5分とかからない場所に竣工される「GLP 六甲Ⅴ」であれば、こういった問題を解消できるうえ、既存メンバーの雇用も継続できることから入居を決定しました。

■ダイセーエブリー二十四 浅野常紀取締役


▲「GLP ALFALINK茨木Ⅰ」完成イメージ

摂津に2か所、倉庫を構えていることから、その周辺で物件を探していたものの、なかなか見つかりません。そうした中で、「GLP ALFALINK(アルファリンク)茨木I」をご紹介いただきました。決め手は、初期投資も原状回復も必要ないこと。冷凍・冷蔵物流施設は、冷媒も含めて設備に大きな費用が掛かりますし、居抜きで適当な物件を見つけ、冷凍・冷蔵設備を増設したとしても、退去時には原状回復費用が必要となります。もうひとつの理由は、摂津市内の現倉庫と、「GLP ALFALINK茨木Ⅰ」が近いこと。現状、摂津の既存倉庫で働いている百数十人のスタッフに、そのまま勤めてもらえることは、人手不足の今、とてもありがたいです。

■南日本運輸倉庫 大園圭一郎社長


▲南日本運輸倉庫の大園圭一郎社長

200坪、400坪といった小スペースの賃貸倉庫は利用していたが、2004年くらいから徐々に自社倉庫を開発するようになっていました。従来の賃貸倉庫における仕様だと、当社のオペレーションにマッチしないところもありましたが、日本GLPに関してはここ何年かで勉強していただき、満足できる施設に仕上げていただきました。社内では、「これだけ(およそ4000坪)の倉庫を借りて、本当にやっていけるのか」という声も上がったが、最終的には、動物検疫も扱える物件ということもあり、入居を決めて良かったと思っています。

■信濃運輸 林俊彦社長


▲「GLP ALFALINK流山8」

都内、神奈川県内、そして埼玉県内2か所にある倉庫の荷物がオーバーフローしてしまい、外部委託したり、あるいは貨物の転送を行ったりして、どうにかやりくりをしていましたが、「物流の2024年問題」を考えると、さらなる最適化が必要でした。「GLP ALFALINK流山8」を借りることによって、荷物のオーバーフローを解消できること、北関東方面への配送におけるドライバー拘束時間の短縮が見込めることに加え、冷凍・冷蔵設備を日本GLP側で施工してもらえて、退去時に原状復帰が不要である点が決め手になりました。

登壇した各事業者の話からは、「冷凍・冷蔵設備を施設オーナーである日本GLPが負担してくれる」という、賃貸型冷凍・冷蔵物流施設の特徴を評価していることが伺える。

また、冷凍・冷蔵物流施設の倉庫内オペレーションは、荷主あるいは運営事業者の特色が強く出る部分であり、そのために設計の自由度が高い自前施設が好まれる傾向にあったが、日本GLPが研究と研鑽を重ねた結果、冷凍・冷蔵物流事業者からも評価される物流施設を用意できるようになった点にも注目すべきだろう。

「情報収集の場として最適」、イベント参加者の声

では、こうしたユーザーの声を聞いた参加者は、本イベントをどう感じたのか。

▲アサヒロジスティクスの阿部龍太郎氏

アサヒロジスティクス(さいたま市大宮区)の阿部龍太郎氏は、「正直、GLPが冷凍・冷蔵マルチテナント型物流施設を手掛けているというのは知らなかったのでとても参考になりました。また、プラスオートメーション社が提供する『t-Sort』(ティーソート)の導入事例も参考になりましたね。過去にロボットや自動仕分けマテハンを検討したこともあるが、当時は実現性や費用対効果の不安を払拭できなかったので」と語る。

▲「t-Sort」を紹介するプラスオートメーションの野中大介氏

本イベントでは、ロボットソーターの「t-Sort」が冷蔵物流施設で稼働する動画が公開された。「t-Sort」は、月額30万円から導入可能な手軽さと、創意工夫次第でさまざまな現場で自動化を実現できる柔軟性が評価され、プラスオートメーション社の創業からわずか4年で常温の現場を中心に100拠点3400台の導入を果たした。現時点では、常温倉庫の導入事例が多いものの、徐々にチルド帯での導入も始まってきている。今回のイベントは、冷凍・冷蔵物流施設における「t-Sort」への期待を多くの人に知らしめるきっかけとなった。

▲(右)SBSフレックの吉田和明氏

また、SBSフレック(東京都新宿区)の吉田和明氏は、「今回のイベントで一番良かったのは懇親会です。これだけのメンバーの方と一度にご挨拶や情報交換ができるのでありがたいですね」と評価した。参加者同士の情報交換やビジネス交流を促す場を積極的に提供するというのは、「ALFALINK」や「GLPコンシェルジュ」のコンセプトにも通じる、日本GLPの得意領域といえるだろう。今回のイベントには、物流会社だけでなく、メーカー、卸、小売、EC事業者など、コールドチェーンを支えるさまざまな企業が参加していたこともあり、懇親会は非常に盛り上がっていた。

一方で、これまで抱いていた冷凍・冷蔵物流施設に対する考え方を再考する機会になったという声や、日本GLPに対する期待の声も聞かれた。

「冷凍・冷蔵マルチテナント型物流施設だと、当社が培ってきたオペレーションノウハウを再現しにくいとか、自動倉庫を導入・運用する上でのキャパシティの制限などが発生するでしょう。ただし、これは自社倉庫とマルチテナント型施設の使い分けの問題であって、賃料をそもそも受託金額に転嫁できる専用センターであれば、マルチテナント型施設は全然ありだと思いました。冷凍・冷蔵設備については、(セミナー内でも指摘されたとおり)リプレイスとかメンテナンスのコストが高いし、管理工数も多くなります。そう考えると、『単純に賃料だけで比較することはできないかな?』と思いましたね」(大手食品物流事業者)

▲(右)サン インテルネットの三田竜平社長

「冷凍・冷蔵マルチテナント型物流施設も含めて、日本GLPが結構なボリュームの物流施設を市場に供給していくというのは、私どもの立場としては選択肢が増えるのでありがたいですね」(サン インテルネット・三田竜平社長)

筆者は、本稿の冒頭で「これまでの冷凍・冷蔵物流施設マーケットは、村社会の様相を呈していた」と表現した。だが、村社会のままでは急拡大する冷食マーケットに対応できないことは、すでに説明したとおりである。こうしたマーケットの変化を捉え、新たなビジネスチャンスを掴むためにはどうしたらよいのか。

SBSフレック吉田氏の言葉が、事業者の立場を的確に指摘している。

「冷食マーケットがこれだけ伸びている今、大切なのはスピード感です。だけど、自分たちで建てていたら、とてもじゃないが間に合わない。その点でも、GLPが冷凍・冷蔵マルチテナント型物流施設を作ってくれるのはありがたい」

日本GLPが、物流不動産マーケットに投げ入れた冷凍・冷蔵マルチテナント型物流施設という問題提起は、確実に波紋を広げつつある。この波紋が、今後どのように広がっていくのか、注目してほしい。(物流ジャーナリスト・坂田良平)

本稿で紹介したイベントは、日本GLPから個別に招待を受けた人のみが参加できるクローズドイベントとして開催された。日本GLPでは、公開イベントに加えて、クローズドイベントも多数開催している。興味のある方は、日本GLPのメールマガジンに登録することをおすすめする。

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冷凍・冷蔵物流施設オンラインセミナー開催

■開催概要
日程:2023年12月13日、14日
時間:10時~/12時~/13時~/16時~

■コンテンツ
1.冷凍・冷蔵物流施設開発実績、経緯について
2.関西冷凍・冷蔵マーケット状況について
3.GLP神戸住吉浜のご紹介

■参加者特典
セミナー説明資料 ※参加者限定
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■対象者
物流関連企業、メーカー、荷主企業
その他、物流施設の賃借希望者

■詳細・申込み
https://go.glp.com/webinar_kobe-sumiyoshihama_202312