話題「現場を知らない」「下請けの実情を知らない」といった発言がよく聞かれるのも物流業界の特徴の一つだが、実際に「現場の問題点そのものが見えていないこと」が物流課題解決のボトルネックとなっている。また「物流の2024年問題」でも可視化・見える化が問題克服に向けた重要テーマだといわれる。
フレクト(東京都港区)が提供する車両動態管理システム「Cariot」(キャリオット)は、クルマの状況が見えないという問題をきっかけに、開発された。同社の黒川幸治氏(代表取締役CEO)は「もともとクラウドサービスの受託開発をメイン事業としていたことから、IoT/モビリティサービスの開発実績が多くあり、顧客の車両状況を把握したいという要望に対して、IoTの資産を活用してサービスを開発、提供しようと考えました」と、キャリオットを16年にリリースした経緯を語る。当時は営業車やサービス車など法人車両全般をターゲットとしていた。
キャリオットは、車両情報の管理や、動態管理、さらには安全運転管理や労務管理まで見える化を実現し、幅広い車両運用の現場で活用されているが、「24年問題が顕在化するにつれ、運送事業者の商用車管理としてのニーズ、問い合わせが増え、現在では導入車両のほぼ半数が配送車両となっています。資産としての車両管理やサービス向上のための動態管理から、物流ドライバーの働き方の見える化へと、重視する焦点が変化していることを感じます」(黒川氏)
業界最高速水準の「リアルタイム性」が実現する効率化
24年問題対応では類似の管理システム全般とも比較されるが、「キャリオットの特徴としてまず挙げられるのが、リアルタイム性です。3秒に1回という業界最高速水準でのリアルタイム動態管理が、運送のあらゆる工程での効率化を促進します」(黒川氏)
例えば「いま車がどこにあるのか」「いつごろ着くのか」といった日常的な問い合わせは、これまで顧客から管理者を経由してドライバーへ、または顧客から直接ドライバーへ確認することが、配送状況を把握する手段であった。キャリオットの動態管理であれば、管理者がほぼリアルタイムで全車両の位置情報とステータス(移動や輸送、休憩や荷待ちなど)を確認でき、ドライバーへの確認工程なしで顧客にフィードバックできる。また、位置情報共有機能を使えば、ドライバーと管理者に加えて、第三者である顧客との間でもリアルタイムの情報共有が可能となり、「問い合わせ作業」自体が必要ない。「問い合わせに対応する工程、遅延を連絡する工程、最新状況を共有する工程など、ドライバーのコミュニケーション作業を、90%削減することが可能です」(黒川氏)
業界最高速水準のリアルタイム情報共有機能は、配車計画・ルートの即時変更などの柔軟な対応も可能とし、顧客サービス向上にも寄与する。さらには、グローバル市場でシェア1位の顧客情報管理(CRM)システム「SalesforceCRM」(セールスフォースCRM)基盤を用いてキャリオットは提供されているため、車両データ、運転走行データに加えてドライバー毎の業務活動データを顧客に紐づけて管理することができ、どの顧客にどれくらい時間がかかっているかなど、業務のボトルネックを可視化することができるのも強みの1つ。キャリオットは、車と企業をつなぐだけではなく、人と人のつながりの中での無駄な作業を排除して、よりスムーズで緊密な連携を促すシステムであり、キャリオットを中心に、広くスムーズなつながりを拡張することから、生産性の向上を実現する。
「ドライバー働き方改革クラウド」による物流危機対応
安全運転管理・コンプライアンスの面でも、異常運転をリアルタイムで確認して素早い事故防止対策を実施できる。それ以外にもアルコールチェック機能と連携して、乗車前にチェックをしていないのに車両が走り出すとアラートがでるなど、今現在の運転状況を把握することは、安全指導の精度向上にもつながる。またデータをただ集めるのではなく、効果的にわかりやすくダッシュボード上で管理する機能で、データの有効活用を支援する。
同社ではキャリオットを、車両動態管理システムとしてだけではなく、「ドライバー働き方改革クラウド」と位置付け、まずは紙ベースの管理から脱してデータ管理による効率化のスタートを切ること、さらにその先の、ドライバーにとって働きやすい環境整備へと後押しする。リアルタイムの可視化だけではなく、業務ステータス管理と運転日報のデータ化、アルコールチェックデータの管理・保存対応など、キャリオットの機能によってドライバーと管理者、はたまた後工程の経理や労務に課せられる作業まで大幅に効率化でき、例えば日々の日報作成では90%の作業削減を実現している。動態管理の一歩先、将来的には改善基準告示への労務管理対応を見据えた、まさに「ドライバー働き方改革クラウド」として物流危機の解決を目指す。
眼前の課題対応か、先を見据えた対応か。最適化システムの選択方法
ペーパーレスとデータ化のための効率化システムには、運行・業務ステータス管理に特化した「車両動態管理システム」、安全運転管理に特化した「クラウド型ドライブレコーダー」など多様なサービスがあるが、黒川氏は「何を重視して効率化、見える化したいかが大切です。とりあえず法令順守のための安全運転管理だけ、または業務ステータスの管理ができればなど、企業によって求めるものやコスト感覚はさまざま。キャリオットなら、車両管理から、安全運転・走行管理、計画・業務活動、CRMまで、一気通貫での見える化と改善を促し、その場しのぎではない、計画性のある持続的な事業改善につなげることができます」と語り、まずは現状課題の把握と、進むべき未来像を見定めて、どのソリューションを選択するかを検討すべきだと言う。キャリオットでは、ドライバーに密接したスマートフォンアプリ、設置が簡単なシガータイプのGPSロガー、安全運転管理を強化できるドライブレコーダーと、企業それぞれの運用に適したシステム構成を選ぶこともできる。
「現在、導入いただいているお客様の80%がいわゆる中小の企業。それだけに、デジタル化の最初の一歩を踏み出すお手伝い、その後の伴走についてもしっかりとノウハウを積み上げてきました。安全コンプライアンスを中心に、業務効率化、生産性向上へと取り組みを進め、最終的な目標としてドライバーをはじめとする社員の満足度を上げるソリューションとして、定着率の高い職場作りに貢献することが、キャリオットの目指す物流危機対応です」(黒川氏)